鼓笛隊の襲来/三崎亜記 [光文社]
正直に白状しますが、直木賞ノミネートと言うことで本作品を買ってみましたが、あまり期待はしていませんでした。というのは、三崎さんのデビュー作『となり町戦争』を読んで、「アイディアはとても面白いけど、作品を通して描きたいことにうまく反映できていないな」と感じたからでした。もう一つ、『となり町戦争』の主人公が、あまりに傍観者だったのが気になったのも、影響しています。
1つめの「鼓笛隊の襲来」は、アイディアはとても面白いものの、やはりアイディア先行で、それが描きたいこととうまく絡んでいない感じを受けました。しかし、2つめからが違いました。その作品中のアイディアを描きたいこと、言いたいことにうまく生かされていました。特に、「覆面社員」「象さんすべり台のある街」は、アイディアと描きたいことをうまく絡ませて描けていて、非常に面白かったです。
とはいえ、一番好きなのは、「遠距離・恋愛」や「同じ夜空を見上げて」のようなベタ(?)な恋愛ものなのですが。特に書き下ろしの「同じ夜空を見上げて」が一番のお気に入り。短いながらも、アイディアあり、ベタな展開ありと大満足。
この作品を読んで、三崎亜紀さんの評価がかなり上がりました。私のように、『となり町戦争』がイマイチだったと言う人にこそ読んで欲しい作品です。今回は、残念ながら直木賞を逃しましたが、そんなに遠くない時期にとれそうですね。
2008-08-14 18:02
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