SSブログ

恋文の技術/森見登美彦 [ポプラ社]


恋文の技術

恋文の技術

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2009/03
  • メディア: 単行本



森見登美彦氏の新作は、書簡体小説(帯では「新・書簡体小説」と書かれていますが)。昨年は『美女と竹林』で随筆(らしきもの)に挑戦しており、作者の意欲的な姿勢が感じられました。bk1で販売開始してすぐに注文していて読み進めていたのですが、本日読み終えることが出来ました。

毎回書いているような気がしますが、森見氏の文章の特徴と言えば、軽い語り口とそこに交える堅いことばによって生まれる、独特の軽妙(決して軽佻浮薄ではない)な文体であると思いますが、書簡体をとった本作でもそれは健在。軽すぎず重すぎず、絶妙なバランスをもった非常に読みやすい文章が展開されていました。また、相変わらずの変態節がまじっていたり(第5話が「女性のおっぱいに目のない友へ」だったり)、既刊の作品を読んでいるとにやりと出来る部分が合ったりと、森見ファンとしては安心の内容でした。

今回の小説で上手いな、と感じたのは構成。全12話あり、1話毎に、主人公・守田一郎が様々な友(大学の先輩や友、妹、家庭教師の教え子、果てには森見登美彦まで)へと書いた手紙と言う形で構成されています。そして、話を読み進めることで、一つの出来事が様々な視点から浮かび上がってきます。例えば、第1話で大学の友が恋愛成就の願掛けに吉田神社で「成就するまでパンツを脱がない」と誓った、とありますが、第2話を読むと、それは大学の先輩がけしかけたことだと分かる、と言った具合です。また、前述のように、『夜は短し歩け世乙女』を読んでいる人にはこの「(恋愛が)成就するまでパンツを脱がない」というのは、パンツ総大将を思い出して、にやりとできると思います。このような展開で進んでいき、最後にあこがれの相手への恋文で終了します。

個人的に一番好きだった話は、第9話の「伊吹夏子さんへ 失敗書簡集」。これが最終話に繋がる、あこがれの相手への恋文の失敗例を、反省を交えて綴られたモノです。一つの失敗に対して、冷静な反省が出来ているのですが、反省を極端に実行するため、結局失敗してしまうといった調子が、かなりユカイでした。折り目正しい文章を書こうとして、えせ文語調で失敗し、その反省を生かしてくだけた文章を書こうとして、それで絞め殺したくなるような文章を書いてしまうあたりは、予想できたのですがかなりツボでした。

書簡体小説に読み慣れていないため、読むのに普段の2倍ほどの時間を要したと思いますが、それに見合っただけのおもしろさをもっていました。結果、非常に大満足です。森見氏の作品はいつも外れがないのが素晴らしい。このままの勢いをこのまま持続させて貰いたいと思います。今後も期待です。
ブログパーツ
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。