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『武士道エイティーン』/誉田哲也 [文藝春秋]

と言う訳で、ちゃんと?週末に長崎に帰ったときに紀伊國屋で買ってきました。

武士道エイティーン

武士道エイティーン

  • 作者: 誉田 哲也
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/07
  • メディア: 単行本

 

香織と早苗もいよいよ高校3年生。最後の夏。そしてふたりは約束の全国大会の舞台で向き合って。

本当に素晴らしい物語でした!今思い出しただけで泣けてきます。私の涙もろさが異常、と言う説は否定しませんが。ふたりが、迷い、決めて、また迷い、それでも進んできた結末が描かれる時が来た、と考えると、感慨無量です。

ただ、香織と早苗。ふたりの結着、ということだけに期待すると、かなり期待はずれになるかも知れません。香織対黒岩の勝負、と見た上でも。それくらいにこの二つはあっさり描かれています。それは、期待していた私が、拍子抜けするくらいに。

では、この『武士道エイティーン』の見所は何か、と考えると、それは「ふたりの成長」という点につきると思います。ただただ力を追い求めていた香織が、勝つことに頓着せず、楽しい剣道ができたらいいと考えていた早苗が、ふたりが出会ったことで開かれた武士道という道。その道を歩み続けてきたふたりのなんとまぶしいことでしょうか。いつの間にか、部の中心として、後輩を厳しく指導しつつ、部を引っ張っていく香織。思わぬ事態に見舞われ、重大な選択を迫られることになる早苗。しかし、今まで迷ってきたから、迷いのなかから自分たちの道を決めてきたから、彼女たちは迷うことはない。本文に書かれた「わたしたちは、もう迷わない」という言葉のなんと強く響くことでしょうか。3年間という短い間に、ココまで成長することができる。青春って、本当に羨ましい。おっさんになってしまった私は、それが素直にうらやましく、まぶしく、あこがれてしまいます。

さて、さらに今回はいつもと違った趣向があります。今までは、香織の視点と早苗の視点、交互にふたりの視点から物語が描かれてきたのですが、今回は、早苗の姉・緑子、香織の師匠・桐谷玄明、早苗の部活の顧問・吉野、そして香織と早苗の後輩である美緒の物語が描かれます。これがまたおもしろかった。実は、それぞれが微妙にリンクしていて、その縁ににやりとしたり、緑子の決意に涙したり、美緒の気持ちを応援したくなったり。確かに、本編とは大きく関係があるわけではない、と言われたらそれまでです。しかし、この4編を入れることで、物語の理解度が、思い入れがぐっと強くなった気がします。

とにかく、本当におもしろい話でした。これ、高校生は絶対に読んだ方が良い!と思えるくらいに。少なくとも、剣道をしている中高生は絶対に読むべきでしょう!私も、この話と高校生の時に出会っていたら、少しは変わっていたかもなぁ、と思いました。それがまた少し口惜しいw

物語はこれで終わりですが、ふたりの人生はこれからも続いていきます。しかし、「わたしたちは、もう迷わない」という言葉の通り、武士道という大きな、長い、険しい道を歩んでいくんだと思います。そんなふたりに負けないように、自分ももっと歩んでいかないとならない、そう思わせてくれたお話でした。


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コメント 4

bapio

バンブーブレードで大泣きした私は泣く事間違いなし。

>おっさんになってしまった私は、それが素直にうらやましく、まぶしく、あこがれてしまいます

高校生の頃この話と出会ってたらと書かれてますが、学生時代を終えて読んでみて伝わってくるものもありますよね。
高校生の頃読むのとまた違ったりして、本ってすごいなぁと感じる部分の一つです。

これも面白そうですね、takaoさんが紹介された本でも結構読んでみたいものがあるのですけど、もう少し余暇に使う時間が欲しいものですね(´д`)
by bapio (2010-07-23 01:08) 

takao

bapioさん、ごきげんよう。コメントありがとうございます。

そうなんですよね。高校時代には分からないものが、今になって分かる、と言うこともあると思うのですが。
本は、人生で3回楽しめる。
子どもの時に読んで、若いときに読んで、年を取ってから読んで、それぞれ感じ方が違う、みたいに言われます。
それが読書の魅力なんだろうなぁ、と思います。

武士道シックスティーンから、武士道エイティーンまでのシリーズ、かなり面白かったです。
時間があるなら、是非、という感じです。
今なら、武士道シックスティーンなら文庫で出ていますし。

あと、マンガ版もありますので、忙しくて小説読む時間がない、と言うならどうでしょうか?
原作と少し変わっていますが、基本は同じですし、おもしろいですよw

それではbapioさん、ごきげんよう。
by takao (2010-07-24 22:10) 

藍色

こんにちは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
by 藍色 (2013-05-17 17:22) 

takao

藍色さん、コメント&トラックバックありがとうございます。
早速、そちらの方の記事にトラックバックさせて頂きました。

武士道エイティーン含むこのシリーズ、本当に良いですよね。
青春の一ページのなかで成長していく少女たちの姿を見事に切り抜いた、という感じで、私も大好きなシリーズです。
by takao (2013-05-17 20:10) 

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