SSブログ

『”菜々子さん"の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕』/高木敦史 [角川]

第13回学園小説大賞優秀賞受賞作品。

“菜々子さん”の戯曲  Nの悲劇と縛られた僕 (角川スニーカー文庫)

“菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕 (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 高木 敦史
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/08/31
  • メディア: 文庫

そんなことよりも、発売日前にwebで全文、無料で公開されたことの方が話題かも知れませんね。「乗るっきゃない、この時代のビッグウェーブに!」と言うことで読んでみました。まぁ、ビッグウェーブでもないですがw

ジャンル的にはミステリになるのかな?まぁ、非常に難儀な小説だったなぁ、と思いました。読み終わると、「面白かったなぁ?」という感じになるのですが、途中まではあまりおもしろみも感じませんでした。と言うか、序盤が一番の試練という感じがしました。推理に入ってきたら、後は一気なんですけどね。

あと、これはあくまでも個人的に感じたことなんですが、序盤は言い回しがくどいというか、もって回りすぎた言い方で読みにくかったなぁ、と感じました。適切な例ではないと思うのですが、谷川流さんの文章を思い起こすような言い回しだったと思います。ただし、劣化コピー、みたいな感じで。あと、これも言いがかりレベルですけど、主人公の造形と言うか、性格が十文字青さんの作品に出てきそうだなぁ、という感じもしました。だからって、もちろんパクリって意味じゃないのであしからず。私がそう感じただけです。

ただ、気になったのはそこだけで途中からは目の離せない感じになって読むことができました。構成としては、全4章からなっていて、4章以外は、現在と過去のパートに分かれています。現在のパートで菜々子さん(仮名)がどうして本名で呼ばれると発作を起こすようになったのか、その原因となった事件の推理(事件がどうして起こったか、など)を菜々子さんが語り、過去のパートでは、その推理を聞いた主人公が、それに関連した出来事を思い出す、と言う風になっています。で、菜々子さんの独白は結構延々と続くので、人によっては『告白』を思い出すかもなぁ、そんな感じがしました。まぁ、私も実際そんな風に思いましたしw

まぁ、例によってココまで良くないと感じた点ばかりあげてきていますが。ただ、ミステリとして良くできていたと思いますし、かなり面白かったです。菜々子さんの語る推理を、主人公が思い出す過去の菜々子さんの姿や他の状況を当てはめて確認していく、と言うのが楽しかったです。結局は、私は主人公と同じようなところに推理がむいたのですが、それが見事に菜々子さんにはめられていた、と言うのも心地よかったです。

結末についてですが。私のツイ友さん(そんな言葉あるのか?」は「後味が悪い作品だなぁ」とおっしゃっていましたが、私は「まぁ、悪くないんじゃないの?」と思いました。と言うか、これ読む人によって完全に意見が分かれそうかな?と思いました。そう思う私が異常、と言う可能性が高いような気がしてきましたがw

ネタバレになりそうなので、あまり詳しくは書けませんが、こんな関係も悪くないんじゃない?とは思いました。いや、当事者になったら、相当いやだなぁ、とは思いますよwそれでも、あくまでも物語に限れば、個人的には嫌いではないです。なんというか、菜々子さんって、重度のヤンデレだよねw

文字数多くて、いわゆるライトノベルっぽくなかったりもしますが(丸々1ページ、改行がなかったところもあったような気がしますし。うろ覚えですが)、おすすめです。こういう作品が出てくるってところに、スニーカー文庫もまだまだやれるかな、と感じました。それと、『サクラダリセット』と言いこの作品と言い、角川っていわゆるライトノベルっぽくないのが好きなのかなぁ、と言う感じもしました。

 

ただ、最後に素直な疑問。これ、ライトノベルで出すよりも、一般文芸として、ハードカバーで出版していても良かった、と言うか、そっちの方が良かったのではないか、と言う気がしました。内容にしても、文体にしても、ライトノベルで出す必然を感じないんですよね。『氷菓』『愚者のエンドロール』(古典部シリーズ)が、スニーカー文庫で出版されたものの売り上げがふるわなかった、と言うことがあったらしいですが、そうなりかねない、という気がしました(ちなみに、『氷菓』は「第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」らしいです。Wikipediaによると)。
米澤穂信さんは、他の作品のヒットもあって、注目の作家となっていますし。売り上げ少なかった『氷菓』『愚者のエンドロール』も角川文庫から出して好評みたいですし。ついでに言うと、古典部シリーズの最新刊『ふたりの距離の概算』は、「角川の書籍」の中では売り上げも良いみたいですし。この作者のこのデビュー作を考えると、そっちの方が良かった、と思ってしまいました。と言うか、一般部門で出しても、十分それに耐えうる力を持った作品だと思いました。ライトノベル特有の物自体、文章の言い回し以外にないような気がしますし(それが一番重要なのかな?)

と言うことで、この作品の評価が一体どういうものになるのか、非常に興味深いなぁ、何て思っています。それはさておいても、興味のある方は読んでいただきたいなぁ、と思います。ミステリが好きな方は良いのではないか、と思います。


ブログパーツ
nice!(23)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 23

コメント 6

chokusin

>ライトノベルで出すよりも、一般文芸として、ハードカバーで
これは同意見です。ご指摘のようにいわゆるライトノベル的文体を何とかできれば、道尾秀介っぽい路線で行けるかな?と。余計なお世話ですねw

ネタばらしになっても不味いので細かくは書きませんが、3年間は長いですよね、ヒロインや主人公それぞれの境遇や心境を考えると。それを想像して「後味が悪い」と受け取っちゃいました。
まあ歪な純愛と受け止めればいいんですが。長文失礼しました。
by chokusin (2010-08-02 20:28) 

takao

chokusinさん、コメントありがとうございます。

やはり、ネックは文体でしょうね。
ただ、この辺は矯正可能な範囲だと思うんですが、どうなんでしょう?
ストーリー展開とかは、明らかに一般文芸寄りですので、できるなら早いところ一般文芸に移った方が作者のため、と言う気がします。
最近、越境作家、と呼ばれる人も多いですしね。

なるほど。
3年間は考慮に入れていませんでした。
確かに、それを考えると後味が悪い気がしますが。
まぁ、なんか解決しなくてもあの2人は離れられない気もしたのですが。
そこに、暗く重いものが2人のつながりを強くした、と言うことで駄目でしょうか?駄目ですねw
と言うか、本当にいやな関係ですよねw

歪な純愛、ですか。なるほど、そういえば良かったのですねw
ちょっと、歪過ぎる気もしますが。
ただ、ハッピーエンドではないことだけは確かですよねw

いえいえ、ご期待に添える感想になったのか、とどきどきです。
ありがとうございました。
by takao (2010-08-02 20:42) 

bapio

フフフ、唐突で申し訳ないでござる(’-’*) フフ
実は試しにラノベを一冊買ってみようかと思いまして。

理想としては、続編物でも構わないんですが、基本1冊で完結して読めるようなもの。
例えば化物語の様に『ひたぎクラブ』、『まよいマイマイ』みたいな感じで話が分かれてて読みやすいもの。

あと全てが全てラブコメではないもの。
まぁ気分なんですが、乃木坂の様なのは今はいいかなと。

そしてtakaoさんが読んでみて『これ面白かったぜ!』って言うのをいくつかチョイスしてもらえたらと^^A
一応今読んでみようかな~って言うのは文学少女なんですが、それ以外にも教えていただけると幸いです。

まぁ面白ければラブコメでも構わないんですが、アニメ化されてないものがいいですね。
もちろん参考にさせていただくだけで、購入は私の自己責任ですので、何も気になさらないでください。

ちょっとラノベくらいなら読んでみようかなと言う気分ですので(’-’*) フフ

by bapio (2010-08-03 18:10) 

takao

bapioさん、ごきげんよう。コメントありがとうございます。

おお、遂にbapioさんもラノベを読まれる、と。

ラブコメでないもの、と言う条件が一番難しい気がしますね。
ラブストーリーはOKですか?

と言うことで、早速いくつかリストアップしてみましたので、次の記事にします。
まぁ、ご参考にでもなれば。
by takao (2010-08-03 20:55) 

でぃー太

おぉ!ブログが一新されとる!

私もです。

ソネブロのMy中継基地においで下さい。
そこには真実の扉が、二日間だけ開けてあります。
by でぃー太 (2010-08-04 07:04) 

takao

でぃー太さん、コメントありがとうございます。

中継基地、読ませていただきました。
ちょっと今色々あってコメントできませんが、そのうちお邪魔します。

私も、ばれないようにしないとw
by takao (2010-08-04 18:24) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。