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『ココロコネクト ヒトランダム』/庵田定夏 [エンターブレイン]

本日2回目の更新です。今回読んだのはこれ。

 

ココロコネクト ヒトランダム (ファミ通文庫)

ココロコネクト ヒトランダム (ファミ通文庫)

  • 作者: 庵田 定夏
    イラスト:白身魚
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2010/01/30
  • メディア: 文庫

 

 

今年のファミ通新人組が凄い,って事で,当初はスルーしていたのですが,今回読了。しかし,人気なのかなかなか手に入れることができずにw結局1巻のこれはアニメイト(3冊あって初版,4刷,5刷があったw)で,2巻の『ココロコネクト 傷ランダム』を紀伊國屋で購入しました。3巻はbk1で買ったので安心w

文化研究部,略して文研部に所属する高校1年生の八重樫太一,永瀬伊織,稲葉姫子,桐山唯,青木義文。彼らは,ある日不思議な現象に巻き込まれる。それは,人格の入れ替わり。はじめは青木義文と桐山唯の人格入れ替わりから始まったその現象は,やがて部員全員を巻き込んでいく。
そこに現れた「ふうせんかずら」を名乗る謎の存在。彼は「入れ替わりを観察して,面白かったなぁ,となればこの現象は終わり」とのこと。
5人は結局それを受け入れるしかなく。はじめは不便を感じる程度だった入れ替わりだったが,やがて彼らの心をえぐっていくことに。

 

文庫本の紹介だと,「五角形(ペンタゴン)コメディ」となっていますね。帯には,「五角形ラブコメ」とありますがw五角形ラブストーリというと,『七夕ペンタゴンは恋にむかない』を思い出すwそして,自分の該当記事のタイトルを見て,恥ずかしくて穴に埋まりたくなるw

閑話休題。「第11回えんため大賞特別賞受賞作」の本作。評判に違わず,なかなか面白かったです。ただ,やはり「優秀賞受賞」の『空色パンデミック』からは一つ落ちるかな?という感じでした。

まず驚いたのは,応募作に古典的で使い古された感があり,これがマンガで出ると「ネタ切れなんだなぁ」と言われる入れ替わりネタを持ってきたこと。と言う事で,序盤はあんまり面白みを感じなかったんですよね。ただ,5人でのランダムな入れ替わり。そのことで,だんだんと彼ら彼女らの心の中に秘められた秘密を描いたところがよかったと感じました。

個人的には,「ふうせんかずら」の登場で,この入れ替わりが謎の存在(人間の力では立ち向かえない存在)によって意図的に仕組まれたものである,と言うことが判明してから,おもしろくなってきたように思います。ここら辺から,キャラクターの心情が深く描かれるようになってきたなぁ,と感じたのが理由でしょうか。男性恐怖症,アイデンティティ,そして人間不信と他人と仲良くしたいという思いのアンビバレンツ。これもありきたりと言えばありきたりでしょうけども,高校生,と言う年齢を考えれば,重要な悩み事と思えるかも知れないですね。

入れ替わりによって,心に秘めたものを明かしていき,それの解決によって5人の仲間の関係を強くしてきたところで提示された,最後の選択。これがかなり引き込まれました。この究極の選択。自分だったらどうするだろう,と思うものの難しいですね。ただ,やはりあの選択になるのかなぁ?と。ただ,最後,もう少しみっともないあがきがあったら,もっと人間的だったかな?と思いました。『D4プリンセス』(原作)のなあすみたいに。って,これ書いたらどんな場面か分かっちゃうかw

一つだけ欠点をあげると,入れ替わりが始まった場面でいきなり「太一[青木]」みたいな表記が始まるのですが,これがどっちがどっちを表しているのかわかりにくくて。今読み返してみたら,分かるようにしてあったみたいですが,全然気づきませんでしたし。一応,これから読む人のために書いておくと,前が精神で,[]で囲まれた方が肉体を表します。まぁ,注意して読んでいけばすぐ分かるのですが,もう少しわかりやすくしてもよかったかな?と思います。はじめに説明を入れておく,溶かしておくと嬉しかったかもです。

と言う事で,はじめを乗り越えれば面白くなってくると思います。ただ,確かにこれがデビュー作とは思えないできでしたね。昔,北村薫さんとか加納朋子さんのデビュー作を読んで,面白い小説を書く人は,デビュー作から面白い,と感じたことがありましたが,そんな感じですね。ネタの定番化,が言われるようになったライトノベルですが,『空色パンデミック』と言い,この『ココロコネクト』と言い,ネタの組み合わせによって新しいものを作ることができる,と言うことを示してくれたのではないか,と思います。まだ『B.A.D.』は読んでいませんが,ファミ通文庫はいい新人に巡り会えたなぁ,と言う印象ですね。

そして,この作品は漫画化決定!!と言う事。このネタならマンガはむいているような気がします。問題は,精神が誰が入っているか,をどうやってわかりやすくするか,ですが。これはちょっと楽しみです。

さて,このシリーズは,現在3冊出ている模様。2冊目が『キズランダム』で,3冊目が『カコランダム』となっていますので,いったいどんな入れ替わりを見せてくれるのか,非常に楽しみです。


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コメント 2

プラチナ

私は逆に漫画感覚で読めて気に入っているのですが、takaoさんは、もっと深い文章を求められるのでしょうね。

最終兵器彼女も読みましたが、少女漫画みたいな軽いタッチの作画にも関わらず、エヴァやイリヤ、フルメタ、まぶらほ長編同様、話が重くて読むのが辛かったです。

by プラチナ (2010-10-03 09:24) 

takao

プラチナさん,コメントありがとうございます。

純文学ほど硬い文章になると駄目なのですが,文章がしっかりした方が好き,と言う傾向はあるかも知れません。
どうも,軽すぎるものと女性口調の文章は苦手なようですw
漫画的に読めるものは好きなんですけどねw

『最終兵器彼女』は,割と大丈夫,というか,わりと好きでしたね。
最後に,「なんじゃそりゃw」と思った記憶がありますが。
と言う事は,深い,と言うか重い話が好きなのかも知れませんw
by takao (2010-10-03 11:48) 

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