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『雑魚神様』/鳥村居子 [学研]

本日紹介する作品はこちらです。

 

雑魚神様 (メガミ文庫)

雑魚神様 (メガミ文庫)

  • 作者: 鳥村 居子
    イラスト:月神るな
  • 出版社/メーカー: 学研パブリッシング
  • 発売日: 2010/09
  • メディア: 文庫

 

 

第2回メガミノベル大賞金賞受賞作品。私自身,2冊目のメガミ文庫です。1冊目は,『魔法少女リリカルなのは』ですw

神との戦いに敗れた八咫烏は,天照大神からの力の供給を止められ,消え去ろうとしていた。その時,現れた謎の神。自分のことを「おまがり様」と呼ぶ,あまりに弱々しい力を持つ,少女の姿の神は自分の力を八咫烏に分け与えることで,八咫烏の消滅を止める。八咫烏はこのことから,自分の主を天照大神から,「おまがり様」へと変える決意をした。
それからどれくらいの時が流れたか。八咫烏は,神力を失ったことで,人間に認知されるようになったために,おまがり様を守りながら人間の中で暮らすようになっていた。そして,おまがり様は,段ボールの中で過ごすようになっていた。そんなある日,おまがり様に届いた1通の手紙。
「四月の古守八幡神社のお祭りが成功しますように」
そう書かれた手紙を見たおまがり様は,その願いを叶えるために,八咫烏と共に福岡に向かうのだった。

 

という感じのお話。

まず,物語としては日本神話をベースにした話,と言うのがおもしろいと思いました。ギリシャ神話とかあそこらへんは多い気がしますが,日本神話だけ,となると意外と少ないような気がします。それをベースに,お祭りを成功させるために,敵の妨害を受けつつ行動するうちに,「おまがり様」の正体に近づく,という感じでした。いろいろな神が出てきて,少しずつ真相に迫っていく,と言うのがよかったです。

で,この話で個人的に面白いなぁ,と思ったのが3点あります。まず1つ目ですが,「おまがり様と八咫烏の組み合わせ」が面白い,と言う事。

一見ょぅι゛ょのおまがり様と,30代の修験者風の八咫烏。犯罪の香りすらするようなこのコンビですが,いいコンビだったなぁ,と思います。おまがり様は,人間も神も大嫌い,八咫烏だけいればいい,と言う状態で,依存しすぎの感じもしますが,お祭りの成功のために一人で働く八咫烏を見て,自分も働こうかなぁ,と言う気になる姿が可愛いなぁ,と思いました。一方の八咫烏は,おまがり様に命を救って貰った恩からか,自分に何があってもおまがり様を助ける,と言わんばかりの様子。いつもおまがり様を気にかけている様子が何かよかったです。おまがり様を運ぶために,段ボールを背中に背負う修験者風の男って,妖しすぎないか,と思ったりもしますがw

2つ目。八咫烏の能力として「同種好転原理(ホメオパシー)』を持ってきたところです。

八咫烏は,天照大神から離れたことで,多くの神力を失っています。その彼が得た力が,おまがり様を助けたい一心で得た「同種好転原理(ホメオパシー)」です。ですが,ホメオパシーって,今では何か妖しい感じのする民間療法の一つですよね。妖しいというか,非科学的,と言うか。それを,意図的か意図的ではないかは分かりませんが,能力に持ってくるところが凄いなぁ,という感じがしました。実際問題,使っているシーンも何かあやしげでしたがw

3つ目。これが一番この作品でお気に入りの点なのですが,八咫烏と依深のやりとりが面白かった,と言うところです。

物語のウェイトとしては,断然おまけ程度の扱いなので,ちょっとしかないのですが,これが個人的に大変ツボにはまりました。依深は,腐女子属性のある声優オタ,と言う設定です。で,八咫烏に色々なんかいろいろな知識を吹き込んでいるところと,依深のバイタリティが面白かったですw八咫烏にお土産としてアニメイトととらのあなとメッセサンオーの予約特典と初回限定版と通常版に付いてくる全部で6種類のドラマCDを買ってこさせたりとか,チケットぴあにもイープラスにもローソンチケットにも会員登録させる人間ってどうよ,ってところですよw そして,依深の「通販特典と店舗特典とメーカー特典は異なるので全て入手する必要がある」と教えられ,それをメモして,また一つ賢くなったように思えた,と思うような八咫烏の生真面目さと,ばかばかしさ。これが凄くツボでした。

残念なところを挙げるとすれば,デビュー作であるからか,まだまだ文章がこなれておらず,ちょっと固いように感じるところでしょうか。ただ,作品自体が伝記っぽい感じなので,これはこれで正解なのかも知れませんが。何か,特に会話文ですが,上滑りしているような,イマイチキャッチボールできていないような感じを受けてしまいました。

あと,少し冗長だったかなあ,と。もう少し内容絞って,短くしたらもっとすっきり読めて良い作品になったのではないかなぁ,と思ってしまったところもあります。

とはいえ,この辺は少し気になる,程度なので問題ないです。最後,おまがり様が真の姿を現し,自分の正体について語るシーンはなかなか素敵でした。

 

メガミ文庫自体,取り扱いが小さいようですし,なかなか手に入らないかも知れませんが,もう少し多くの人に読んで貰いたい作品だなぁ,と思いました。読書メーターだと,私で読んだ人が11人だったのですorzでも,非常に良質な,いいお話だったなぁ,と思います。


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