SSブログ

『変態王子と笑わない猫。』/さがら総 [メディアファクトリー]

第6回MF文庫Jライトノベル新人賞・最優秀賞受賞作品です。タイトルに釣られましたwでも,良い意味で裏切られましたねw

変態王子と笑わない猫。 (MF文庫J)

変態王子と笑わない猫。 (MF文庫J)

  • 作者: さがら総
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2010/10/21
  • メディア: 文庫

横寺陽人(よこでら・ようと)は女子水泳部の部活動風景を覗くことができるポイントがあるから陸上部に入った,と言うほど頭の中は煩悩まみれの高校2年生。しかし,部活動熱心だと勘違いした(実際は,のぞきのためにがんばっていた)前部長により,部長に指名されてしまう。そして,彼は人並み以上の建前のために,それを受けてしまう。
建前のせいで,自由に生きられない陽人は,「願い事をすると,お供え物と引き替えに,いらないものを他人に押しつけてくれる」という笑わない猫像に,自分の建前がなくなりますように,とお願いをしようと決心。猫像の前で,「本音をもう少し表に出なくなるようにしたい」と願う少女,筒隠月子(つつかくし・つきこ)と出会う。
それぞれお願いをしたら,願いは叶ったのだけれども,建前のなくなった陽人は,本音をしゃべってしまうために,頭の中の煩悩をそのまま離してしまい,「変態王子」の二つ名を得ることに。そして,月子も表情を失ってしまう。
困った二人は,何とかして,失ってしまった建前と本音を取り返そうと,協力することに。二人は,求めるものを取り戻すことができるのか?

 

 

いやぁ,てっきり変態王子と呼ばれる変態が,その字をほしいままに活躍する話かと思ったら,心が温かくなるような,素敵なラブストーリーでしたね。本当に,良い意味で裏切られました。

まず,個人的によかったと思うのが文章。適度にひねられた文章は軽すぎることがなく,しかし重すぎることもなく,すらすらと楽しんで読むことができました。ある意味,『涼宮ハルヒ』的な印象を持ちました。 何となく,ですが。

そして,特筆すべきは,多くの方が述べておられますし,審査員の方も言及されていますが,キャラクターの魅力でしょうね。メインになるキャラクターは4人。主人公の変態王子。その相手役の筒隠月子。陸上部の部長の鋼鉄の王(女性)。同級生のお嬢様・小豆梓です。

主人公の変態王子ですが,まずこれがよかったですね。建前を失ったことで,自分の煩悩を素直にぶちまける姿がとにかく面白かったです。確かに,自分の思っていることをすぐに口にしてしまうのは,生きにくいだろうなぁ,という感じがしました。でも,端から見ていると面白いですよねwところが,この主人公,ただの変態じゃなくて,意外と良い奴で。建前がないから,すぐに本心をぶちまけちゃうのも,良い方に影響していましたね。自分の思っていることを真っ直ぐにぶつけるからこそ,その変態差に引きながらも,惹かれるものが現れる,と言ったところでしょうか。

ヒロインの月子は,無表情なのに,なんであんなに可愛いのか,とwその大部分が,隠していない陽人に対する好意(ただし,陽人は気づいてないっぽい)なのでしょうが。陽人がどうして自分に力を貸すのか,という疑問が浮かんで
「わたしのーーーいえ,わたしの本音のためですか」(P.242)
と言っちゃったりするのがもう,可愛いというかw最後の決断もよかったなぁ,と思いましたね。

小豆梓も可愛かったですし。そして,鋼鉄の王。これがもう意表を思いっきり突く形のものを秘めていました。これには大爆笑させて貰いました。ここは,ちょっと変化球的な使い方をしていて,非常にうまいなぁ,と思いました。

それと,キャラクターの魅力で隠れがちな気もしますが,ストーリー自体がおもしろかったと思います。主人公が変態,と言う要素がなくても,ラブコメとしても十分に楽しめるないようだったと思います。キャラが立っているからストーリーが引き立っている,と言う面もあるとは思いますけども。ただ,時折出てくる言葉が,笑いも切なさも含めて結構印象に残りました。

これ,タイトルに釣られる人もいると思いますが,タイトルで敬遠しちゃう人が多いような気がします。プラスマイナスで考えると,どっちが大きいのか,という感じです。作者は「ハートフルロマンチックピュアラブ青春もの的なストーリーと思っている(言い過ぎだけど)みたいに後書きに書いていますが,私も同意ですね。優しくて,暖かくて。ラブが満ちた素敵な作品だと思います。本当に,最近出てくる新人さんは凄いなぁ,と感心してしまいました。

終わり方としては,続けられそうな感じもしました。ただ2巻以降,笑わない猫の設定をどう物語に生かしていくのかなぁ,と言う事を考えると,ここでキレイにおわってしまった方が良いのかなぁ,と言う気がします。いや,純粋に続きが読みたい,と言う気持ちは結構ありますけどねw

おススメです。


ブログパーツ
nice!(14)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 14

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。