『ドラゴンブラッド』/伊上円 [メディアファクトリー]
第6回MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞作。うん,久しぶりに「新人だなぁ」という作品でした。最近の新人さん,そもそもデビュー作が素晴らしすぎですよw
2年前の事故で瀕死の重傷を負った天音櫛秋良(あまねぐし・あきら)は,悪魔と契約し,人間を捨てることで死の淵から助かる。そして,現在高校2年生。同級生・凰楼院藍(おうろういん・あい)と一緒に授業をサボったり,近所のお姉さんで担任の悠錐在歌(ゆうきり・あるか)に心配されたりしながら暮らしていた。
そんな彼の町には一つの怪奇事件が起こっていた。「超能力事件(ケースP)」と呼ばれるその事件。その解決を依頼された秋良は,情報収集を始める。そんな彼が出会ったのは,自称殺人鬼の全無壊世(うつなし・かいぜ)と出会う。二人は協力しながら,事件を解決するために奔走する。果たして,二人は事件を解決することができるのか?
と,いかにもネーミングセンスからして極度の厨二病ですが,設定もキャラクターも見事なまでの厨二病小説でした。うーん,あまり悪いことは書きたくないですが,正直イマイチでした。確かに,最近の新人賞受賞作のレベルが総じて高い,という事で,見る目が厳しくなっている,と言う事をさしひいても,イマイチという評価を免れ得ないかな,と。
いや,厨二病ライトノベルをやるんなら,それでもいいと思うんですよ。その分,それこそ『under』みたいに突き抜けてくれたら。ただ,この作品の残念なところは,そこまで突き抜けていないところです。主人公のキャラが特によくなかったでしょうか?もう少し痛々しいキャラだとよかったんですけどね。使う能力的にも,目新しさが無かったですし。ここに+αのなにかがあるとよかったと思います。
まぁ,言い出せば残念なところはたくさんあるのですが。一番を上げると,展開でしょうか。もう少し整理するとよくなると思います。というのも,半分くらいでラスボスが出てくるのはまぁ良いのですが。3人目の仲間が出てくるのはもう少し早かった方が良かったかなぁ,と。そのためか,最後の戦いがあっさりしたものとなってしまって,イマイチ緊迫感に欠けるものになってしまったという感じがします。自分の手の内を見せて,能力がより優れた方が勝ち,というのは面白味に欠けてしまいます。
あと,これは個人的な思いですが,ラストのあの展開は止めて欲しいですね。『灼眼のシャナ』アラストール顕現というか,『under』の反翼の魔女の登場というか。これやられると,主人公の存在がかすんでしまうと思うんですよね。より強大な力を持つ存在を表したいのかも知れませんが。異能バトルってのは,自分の異能をより巧みに操って,その良さを引き出して戦うところに見所があると思います。だからこそ,「より強い能力を持つものが弱いものをたたきつぶす」という構図は,物語の幅を狭めてしまうのではないかと。
ただ,それが乱発できないように『灼眼のシャナ』では,自らを宿したフレイムヘイズを殺してしまう,という制約を貸しているのですが。この作品ではその制約がないっぽい,というのが残念です。むしろ,傷が完全に回復したりと良いことづくめ,というのは。
新人さんですし,まだまだこれからかな,という感じがします。デビュー作が「うーん」というできであったものの,次の作品で一気に化けた作者もいらっしゃいますし,今後がんばって欲しいなぁ,と思います。
そろそろtakaoさんの小説家デビューも近いですかね。
by ロック (2010-11-07 21:36)
ロックさん,コメントありがとうございます。
そんな,書いてもいないのに,デビューなんてできませんよw
私は,物語を愛でられたらそれで良いのです。
by takao (2010-11-07 21:39)
ついに小説家デビューですか~、ぜひデビュー作にはサインを。
by あすぱい (2010-11-08 00:10)
あすぱいさん,コメントありがとうございます。
書いてませんから,デビューできませんよw
そりゃ,本当にデビューできたら,サインくらいはしますけどもw
残念ながら,自分にはその能力がないことは痛いほどよく分かっています故w
というか,なんでそんな話にw
私,良いものは褒めますし,駄目なものは(柔らかく)駄目と言いますよw
by takao (2010-11-08 00:14)