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『導紋のリーリ』/蕪木統文 [一迅社]

今時珍しい?異世界召喚もののファンタジー。

導紋のリーリ (一迅社文庫 ふ 2-1)

導紋のリーリ (一迅社文庫 ふ 2-1)

  • 作者: 蕪木 統文
  • イラスト:松下まかこ
  • 出版社/メーカー: 一迅社
  • 発売日: 2010/11/20
  • メディア: 文庫

高校生の薙長隆司は,幼なじみで好意を持つ女の子に誕生日プレゼントを贈ろうとしていた。しかし,その勇気が持てず,失敗。家と違う方のバスに乗る言い訳として,参考書を買いに行く,と言ってしまったために,それを実行するため本屋に入る。しかし,運悪くそこでは893の抗争が行われており,その盾とされてしまった隆司は危機に陥る。
隆司もろとも撃ち殺すために弾丸が撃たれたその瞬間,隆司と隆司を盾にしていた893の英(はなぶさ)カオルは,異世界に召喚される。召喚されたヴェルデーラ国は,謎の敵に襲われていて,国家の危機の状態。伝説の「鎧竜閃士(シェラーズ)として,2人は召喚した主であるベイローレル・リーリ・ライトニーに従い,ヴェルデーラ国の危機を救うために,2人は戦う。

 

この世界の人間が,異世界に召喚されて勇者として戦う,と言う物語,最近あまり見ない気がしますね。私の狭い見識だと,『ゼロの使い魔』しか思い浮かばないのですが,他にあるのかな?あ,あと『H+P ひめぱら』がありましたねwそれ以外は,ちょっと思い浮かびません。それで,異世界召喚ものが好きな私としては,かなり興味津々だったのですが。ちょっと残念な内容でした。最近,残念な作品にばかり当たっている気がします。

出だしはかなりよかったです。隆司とカオルが住む現実世界と,リーリの住むヴェルデーラ国の二つの世界が交互に描かれる,と言う展開。現実世界では,隆司が好きな人にプレゼントを贈ろうとして贈れないで,あげく893の抗争に巻き込まれて死にそうになる。ヴェルデーラ国では,謎の黒い騎士が現れ,次々と護衛の騎士が死んでいく。二つの危機が相まって,緊迫感を演出。一体いつ召喚されるのだろう,と思いながら読み進めていきました。そして,いよいよ2人を召喚。普通の高校生が召喚される。その高校生は,謎の異世界では特殊な力が目覚めて大活躍,という感じの物語はあるのですが,893も一緒に召喚される物語って初めてじゃないか?どんな展開になるの?とちょっと期待に胸を膨らませて読むことができました。

ところが,ここからが残念でした。

二つあるのかな,と思うのですがまず一つ。読みにくいこと。何より読みにくい原因だったのが,893のカオルの話し言葉。いろいろな地方を回って,方言が混ざっている,とかあるのですが,その乱暴な口調が何とも読みにくさを引き立てていたように思います。インテリ893じゃなくて,特攻副隊長,と言う設定がよくなかったですね。描写自体,思わず何度も読み返してしまったほど,わかりにくい部分があったりしました。その二つの相乗効果で,読みにくいなぁ,と言う思いが生まれてしまいました。そのため,何度も休み休みしながら読んでいきました。

二つ目。主人公がイマイチ好きになれない,と言う事。カオルは893ですが,仁義とか気にするし,何より自分を召喚したリーリには絶対服従ですし,敵と対すれば無双ですし。その点はまだいいと思います。ダメだったのが隆司の方です。召喚されてから,最後の最後の場面になるまで,もうひたすら後ろ向きでネガティブで。いやなことは避けよう。何とか自分には危険が及ばないようにしよう,とするばかり。それでも,巻き込まれて行くのですが。ある意味リアルなような気がしますが,あまりに後ろ向きのその姿勢は読んでいてイライラする感じでした。最後の最後,自分がしなくてはいけない,と言う場面にいたってようやくがんばることができるのですが,それがもう少し早くてもよかった気がしました。おかげで,本当に途中までいてもいなくても良いような存在だなぁ,と。これで最後の成長がなかったら救いようがなかったです。

内容としては,普通のファンタジーという感じでした。が,あまり魅せる部分が少なかったかな,とも思います。展開として,

王国の危機→師博(シーフ)に聞けば何か知っているかも→危険な砂漠を踏破して会う→昔の伝承にその事が書かれていた→その伝承が書かれた記録を探すために,相互に立ち入らない,と言う条約を結んだ隣国に侵入→なんだかんだで記録をゲット→最後の戦い

という感じなのですが。師博に会うまでにページ数を裂きすぎているように感じました。もう少し,早くてもなぁ,と言う思いがありました。あと,オチが。果たしてこれで良いのか,と言う思いが。

物語としては,これで完結。2人は現実世界に帰る事はできていませんので,続けようと思えば続けることができるような気もします。ただ,続けるのは厳しい気がします。主人公たち,特定のものでしか傷つけることができない,としてしまったためにある意味最強。と言う事で,続けても面白みがない気がするんですよね。何かの要員で,主人公たちの無敵の力が弱まってしまう,と言う事があればあるいは,という感じがしますが。

「導紋」の設定はおもしろいと思いましたし,893が召喚されて活躍する,など,所々この作品ならではの良さも見られたのですが。いかんせん設定をうまく使いこなせていない,という感じがしました。

主人公って大事だなぁ,と思わされる作品でした。


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コメント 6

プラチナ

知らないうちに、本のカテゴリーで1位になってますね。
by プラチナ (2010-11-22 22:32) 

chokusin

導入部は確かに面白そうですね。ところで主人公たち(普通の高校生と893)が二人で召喚される理由というか、物語の展開に絡んでくるんでしょうか。単に目新しさだけなんですかね。そこが気になってしまいました。
by chokusin (2010-11-22 23:03) 

takao

プラチナさん,コメントありがとうございます。

いやぁ,たまたまですw
先週に1位になって。そのうち落ちるだろうと思っていたのですが,何とか1週間は1位を保てました。
とはいえ,もうそろそろ下がりそうだなぁ,と思っているのですがw
by takao (2010-11-23 00:41) 

ロック

takaoさんのラノベレーダーは、
どこから情報を仕入れているのでしょう?
毎回毎回、初耳の作品が・・・(^^;

by ロック (2010-11-23 00:47) 

takao

chokusinさん,コメントありがとうございます。

Twitterでお答えしましたが,改めてw
物語の展開として,893は勇者的扱い。そして,高校生は,その小姓の扱いを受けます。
物語としても,後半までは893が姫を守ってという感じです。
その間,高校生は「痛いのはいや。戦えるわけがない。自分は隠れていて,やり過ごそう」という感じでして。
巻き込まれて,結局姫たちの後を追うことになるのですが,そこでもぴりっとせずに。

ただ,最後の最後,893がとある理由から暴走。
それを止められるのが,同じ異世界から来て無敵の体を持つ高校生だけ,となって活躍する,という感じでした。
ただ,この高校生がそこまでうじうじしていてどうにも,という感じでした。
by takao (2010-11-23 00:55) 

takao

ロックさん,コメントありがとうございます。

私のレーダーですか?
にゅーあきばどっとこむとアキバBlogとかですかねw
ラノベ感想サイトはあまり見てないのですが,まいじゃーさんとか,あと読書メーターで仲良くさせて貰っている方のブログから,なんかですかね。

でも,一番はbk1ですw
bk1は,その日に入荷した本が全部表示されるので,それで面白そうな表紙とタイトルを見つけてぽちりまくっていますw
まぁ,失敗もありますけどねw
bk1の本日の入荷は,どんな本が入っているのか一目でわかりますし,かなりおススメですよw
by takao (2010-11-23 01:00) 

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