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『KAGEROU』/齋藤智裕 [ポプラ社]

あすぱいさんのご希望にお応えしてwそこまで酷くはなかったですよw

KAGEROU

KAGEROU

  • 作者: 齋藤 智裕
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2010/12/15
  • メディア: 単行本

人生に絶望し,自殺しようとしている40代の男・ヤスオ。彼がビルの屋上から飛び下りようとしたとき,それを謎の黒服の男が止める。全日本ドナー・レシピエント協会のエージェントを名乗るその男は,ヤスオがこの世から去る手助けをする,と告げる。それを受け入れたヤスオは,命について考えることになる。

 

って,帯の宣伝文句,あおりすぎですねw肉体と魂を分かつものに関しては書かれていないし,人を人たらしめるもの,って作中から考えると,あれになりますし。そもそも,「命」の物語,と言うのが誇大広告のような。

個人的には,ネットでたたかれているほど,酷評するないようではなかったとは思います。読みやすいですし,サラされ読むことができますし。ただ,気になる点が多いのも確か。と言う事で,気になった点を挙げていきます。

まず,テーマについて。完全に,作者の力がこれを描くために必要なところまで達していません。命についての考えが述べられている部分がありますが,どこか借りてきた言葉,どこかで見た言葉という印象を抱きました。「齋藤智裕」の言葉,と言うものが見つからなかったのが残念でした。「命」を描いている作品なのに,作者の命に対する考えが欠けているのはいただけません。もしかして,と思う部分に

「いまごろになってようやく気づいたんだけど,『死にたい』って,裏を返せば『生きたい』ってことなんだよね。死にたい気持ちが強いからこそ生きたい気持ちも強くなる。(後略)」(P.151)

と言う部分がありましたが。これに関しては,全く同意ができない,と言うか。何でこんなトンデモ理論になっちゃうの?としか思えませでした。ただ,この部分は人によって解釈が変わってくると思います。

もう一つ。この作品,黒服の男が「全日本ドナー・レシピエント協会」のエージェント,と言う部分で察しがつくかも知れませんが,移植が絡んで来ます。で,この協会は,表の世界で公表されているより進んだ技術を所持している,と言う事でしたが。これが説得力がないんですよね。理論の部分を強く求めるわけではないのですが,そんな技術を持っているんだ!と言う感じで描かれると,こっちは逆に覚めてしまう,と言うか。これでは,フィクションではなくファンタジーだよなぁ,と。まぁ,某「熱膨張って知ってるか」みたいに書いて突っ込まれるよりはマシ,とも言えるかも知れませんが。人工心臓に関しては,もうなんと言うか「スゲーw」としか言いようのないご都合主義でした。

オチに関しては,何だかなぁ,と。と言うか,その部分移植して人を生かすことに何の意味があるのだろうか,と言う感じもします。それこそ,人間の尊厳なんて,どこにもないような。

文の書きぶりは悪くなかったと思います。読みにくいこともないですし。文章が軽すぎて物足りなさを感じる人がいるかも知れませんが。もっとも, 読み応えのある文章を作品に求める人が,この作品を読むとも思えませんが。文が軽すぎて,作品の扱う重厚なテーマにあっていない,と言う事があるかも知れないなぁ,と思いました。どちらかというと,普通に恋愛のようなテーマを扱った方が良かったような気はしました。

まぁ,ネットに関して可哀想だなぁ,と思うのは,ギャグについて。ネタで「イギリスならジンだな。イギリスジン,なんちゃって」(P.22)が取り上げられているのを見たことがありますが。見ての通り,会話文なんですよね。つまり,この寒いギャグに関しては,そのキャラクターの色づけなんですよ。主人公なんですけども。営業としてたいした実績もなく,リストラされそうになって,それにカッとなって自分から退職した,と言う主人公のキャラ付けとして,この寒いギャグ,というのは良いと私は感じた次第でして。ラストに関しても,それがうまく生かされていたなぁ,と思いました。

と言う訳で,「何だ,やっぱり面白くないんじゃないか?」と思うかも知れませんが,私は一気に読んでしまいましたし,決してつまらないわけではないと思います。ライトノベル的,と言われるとその通りなんですけども。と言うか,本当に,「一迅社文庫からデビュー!」とかだったら,ここまでたたかれなかったようなw2000万円の大賞受賞作か,と言われると,私も「違うだろう」とは思います。次は背伸びせずに,自分の力にあったテーマの作品を描くと良いのではないかなぁ?なんて偉そうなことを思ってしまいました。正直,命を描くのだったら,もう少し見識を深めないと厳しいでしょうね。

まぁ,勝負は次の作品でどんなものを提供できるか,でしょうね。

 

おまけ

CIMG9279.jpg

最後の最後,このシールに激しく萎えた(´・ω・`)


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コメント 6

あすぱい

呼びましたか?早速のレビューありがとうございます。

ブック○フあたりで安かったら買って見ます(ぉ
by あすぱい (2010-12-26 01:38) 

アリア・ポコテン

これが社員総出で修正したという誤植部分のシールですか。
クリスマス(一日送れですが)にいいものを見せていただきました(笑)
by アリア・ポコテン (2010-12-26 03:14) 

takao

あすぱいさん,コメントありがとうございます。

少しでも参考になればいいのですがw
お近くにいたら,プレゼントできたのですけどねw
たぶん,1ヶ月もしないうちにブック◎フに大量に並ぶと思いますよw
by takao (2010-12-26 03:50) 

takao

アリア・ポコテン社長,コメントありがとうございます。

そうです。これが噂の誤植部分ですw
某巨大掲示板だと,6000枚のシール,とあったのですが,これは純粋に6000枚なのか,それとも,このシールがいっぱいあるシートが6000枚なのか,悩むところですw
これは,運が良いのか,運が悪いのか非常に悩ましいところですw
by takao (2010-12-26 03:53) 

bapio

この本に対する興味は『本の内容』もありますが、やっぱりポプラ社が水嶋ヒロと知ってて受賞させたかどうかですよねw
まぁ全く知らなかったって言うのはほぼウソでしょう。と、私は考えてますw
もしこの内容を他の人が応募したら受賞したのか?
それが一番気になりますw

そして次回作がどのような物になるかでしょうね。

これがウワサの誤植修正シールww
いいものを見せていただきましたw
by bapio (2010-12-27 17:27) 

takao

bapioさん,ごきげんよう。コメントありがとうございます。

まぁ,これ読む限り,知らないで受賞させた,というのは嘘でしょうね。
内容的に言ったら,ライトノベルの賞で奨励賞取れるか取れないか,と言う位じゃないかなぁ,と。
最後の部分,突貫工事が入っている,と言う話も聞きますし。
正直,命を扱うには若すぎる,という感じがします。
主人公,40代じゃなくても,とか。

次回作,あるんですかねw

まさか自分に来るとは思いませんでしたよw
本当に,本編最後のページなので,orzって感じです。
by takao (2010-12-29 06:58) 

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