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『カナクのキセキ 1』/上総朋大 [富士見]

第22回ファンタジア大賞金賞受賞作。大変素敵な作品なんだけども,弱点が目立っているのが少し気になるところ。いや,個人的には長所が短所を上回っていたと思うのですが。

カナクのキセキ1 (富士見ファンタジア文庫)

カナクのキセキ1 (富士見ファンタジア文庫)

  • 作者: 上総 朋大
  • 出版社/メーカー: 富士見書房
  • 発売日: 2011/01/20
  • メディア: 文庫

 

敬虔なマール教信徒である主人公・カナクは,セレンディア魔法学校を卒業。それを機に,マールの残した石碑を巡る旅を決意する。
「暁の賢者」マール。1000年前に存在した深紅の髪の魔女。彼女が長く滞在した地や彼女と親しくした人が,例外なく災害に巻き込まれ,当時「紅の魔女」としてさげすみ,ののしり,恐れられていた彼女は,しかし放浪しながら人々に魔法を授けた彼女の偉業が認められ,現在では神としてあがめられるようになっていた。
その彼女が残した石碑。現在は危険が大きいため,それをするものが少なくなった巡礼を1人でしようとするカナクだが。学校一の魔法の天災であり,美少女であるユーリエがなぜか同行することに。かくして,2人で旅を始めたのだが。最後の石碑に辿り着いた2人は,意外な真実を知ることになるのだった……。

 

とにかく,良いところもあるけれども,弱いところもまたハッキリしているなぁ,と感じる作品でした。まずは,弱いところから。ひとえにこれは,「ストーリーがあっさりしすぎている」という点。苦難の連続であるはずの旅なのですが,幸運にも恵まれて,と言うべきかひたすらあっさり進むんですよね。男女二人が旅をする,ってそれこそ信頼が深まって,恋が生まれる,と言うパターンに最適なんですけども。その過程での困難が全然描かれなかったのが物足りなく感じました。旅の途中,モンスターに襲われる場面3回。しかし,1回は少しだけ危なかったものの他の2回はあっけなく危機を脱すると言う具合で,危機感も全然ない,という感じでした。危険なはずの地域に辿り着いても,モンスターに襲われたのが,1回だけ,というのが。

もう一点。オチが割と単純に読めること。と言うのも,何か秘密っぽいものが出てきた,と思ったら,その後すぐにその謎が判明する,と言う具合で伏線なのかも知れないけども,隠れてないんですよね。よく言えば親切な展開,ともいえるのですが。一つの謎を追って,わくわくする,と言う面で弱かったなぁ,という感じでした。

とはいえ,それを補ってあまりある長所もありました。最大の長所は,とにかくヒロインのユーリエが可愛いこと。帯では賀東招二さんと鏡貴也さんが二人とも褒めているところで,賀東招二さんはこの点で金賞に推すことを決めた,というほどですが。いや,確かに可愛かったですよ。爆弾みたいなお嬢さんだなぁ,とも思いましたが。学園ではねこをかぶっていたものの,大好きなカナクについていくために,彼に無理矢理ついていく行動力。お嬢様故のわがままさ。意外な弱点。イヤミに感じるところが全然なく,ただひたすらに純粋なんだろうなぁ,と感じて,非常に愛らしかったです。物語の大半を彼女の魅力で引っ張って行ったような感じがしました。

そして,やはりストーリーが良かった。ネタバレになるため,詳しいことは書きませんが。確かに,この結末は序盤で予想できました。ただね,やっぱり泣いちゃうよね。最後の石碑に書かれた真実を目にした時,分かっていたにもかかわらず涙があふれてしまいました。あまりに切ない。辛い。苦しい。でも,こういうのキライじゃないなぁ。苦手でいや,って人も多そうですが。ただ,あふれるその思いがあるから,決して暗いだけではない気がします。

個人的には,この物語だけで3~4冊くらいに分けても良かったのかなぁ,と言う気がしました。元々この作品,全数冊構成で考えている途中みたいですが。ただ,これを1冊にまとめるのはもったいない,と言うか。ストーリーがあっさりしてしまうのは仕方がないことかなぁ,と感じました。そして,タイトルに1がついているように,シリーズで続くようです。そして,2巻は書き上がっている,と言う事ですが。一体どんな展開にしていくのか気になるところです。ただ,「一人の男性を愛し抜く,そんな女性の強さと美しさを描きたい」という思いからすると,ある程度は想像できそうな。楽しみにしたいところです。

ただなぁ。同じファンタジー作品,ってことで,『黄昏色の詠使い』を思いながら読んだ私ですが。こっちが金賞で,『黄昏色の詠使い』が佳作,と言うのも何か納得ができないような。受賞年が違いますし,比べても益のないことですが,1巻だけの完成度,美しさは『黄昏色の詠使い』に軍配が上がるような。どっちもいい話ですけどね。

ヒロインの魅力と,一人の男性を愛し抜く思いに感動する作品かなぁ,と感じます。期待しすぎると少し肩すかしを食らうかも知れないなぁ,と感じました。

 

以下,ネタバレを含みつつ余談。

『レイヤード・サマー』読んだ時に,個人的に思い出したのが,『DESIRE』だったんですよw私がプレイしたのは,セガサターン版でしたが。何となく,って感じで。で,『DESIRE』,久しぶりにやってみたいなぁ,というかマルチナ視点の,最後のエピソードプレイしたいなぁ,何て思っていたのですが。またもや,それを思い出すような話で個人的に何がなにやらwいや,全然悠久の螺旋,ってテーマじゃないんですけども。たぶん,時間ものを知らないから,と言う理由が大きいと思います。ただ,こういうのって,悲しいけども何で好きなんだろう,と思ってしまいました。

そして,『レイヤード・サマー』,『うちの魔女しりませんか?』,そして『カナクのキセキ』。今年の1月のテーマは「永遠の別れ」なのか?wどの話も泣きましたし,好きなんですけども,これが連発してくると結構精神に来ますよw間に『とある飛空士への恋歌』を挟んでいなかったら,どうなっていたかw


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つるぎうお

時間ものでしたら、SFなら「夏への扉」「未来からのホットライン」。一般小説なら「リプレイ」をおすすめします。
3つともロマンスたっぷりです。なんか猫が出るものばかりですが。
by つるぎうお (2011-01-21 23:37) 

takao

つるぎうおさん,コメントありがとうございます。

『夏への扉』は,おススメで聞いたことがあるようなw
少しはラノベ以外の分野にも挑戦しようか,と思っている時期なので,チャレンジしてみます。
ご紹介,ありがとうございます。
by takao (2011-01-21 23:48) 

ask

やっぱりそう思いましたか。欠点までハッキリしているというのはマイナスでありながらも、やっぱり涙ぐみますよねw 涙腺集中放火を浴び続けた私なら尚更です。

私は遅れて結末に気づきましたが、まさかあのまま幕切れ、とは想像しきれませんでした。金賞ということもあって編集部も本腰だってことですね。続編考えての構成なので2巻、大いに期待です!
あと、ユーリエはここ数年のファンタジア新人賞の中で最強の可愛さを誇るかとw
by ask (2011-01-22 20:54) 

カルディア

CMでこの作品のタイトルを聞いたけれど、
金賞ならファンタジアも推しの一本なのでしょうね。
そこまでガツっとストーリーが良いと言われる作品ならば、
かなり良作の部類だと思えます。
ラストがわかりつつもそこへ素直に持っていき、
かつ泣かせるなんてなかなかできるものではないなと。

by カルディア (2011-01-23 02:54) 

ロック

>第22回ファンタジア大賞金賞受賞作
お、読んでみたい気になりました。

私はなかなか感性がtakaoさんのように
優れていないので、どう感じるか気になりますね。
ただ「良かった」だけになるのかもしれませんが・・・


by ロック (2011-01-23 15:24) 

takao

askさん,コメントありがとうございます。

まぁ,そうなりますよね。
物語の展開の早さが気になってしまって。
この冒険だけで,数冊にできそうだったので,それが惜しいというか。
私も,結構涙腺を刺激されていましたのでw
来ちゃいますよねw

私としては,ある程度予想できる結末でしたね。
もちろん,彼女が帰ってくるエンドも期待する気持ちもあるのですが。
こればっかりは仕方がないかも知れません。
とりあえず,次の主役はカナクになるのか,ユーリエになるのか気になりますw

確かに,ここ最近でもトップレベルのヒロインでした。
by takao (2011-01-23 18:01) 

takao

カルディアさん,コメントありがとうございます。

CMやっているんですね∑(゜∀゜)/
私は観たことないですorz
審査員が押している,と言う印象を受けました,帯の推薦文読んでw
ストーリーは,実は時々見るパターンの気もします。
ただ,やっぱりこの展開は泣いちゃうよねぇ,という感じです。
ユーリエが良い子なだけになおさらそう思ってしまいます。

数冊構成のシリーズ,と言う事で,今後どうなっていくのか気になるところです。
by takao (2011-01-23 18:06) 

takao

ロックさん,コメントありがとうございます。

なかなか面白いですよ。

私の感性,結構腐っている気もするんですが。
もう少し,うまく感じたことを表現したいなぁ,と思う毎日ですよ。

良かった,ってだけでもいいのではないかと思います。
そこから,どの部分が良かったのか。
どうして良かったのか。
そう考えていくことで,自分が何を感じたのか見えるようになってくるのではないか,と思います。
さぁ,Let'sトライですw
by takao (2011-01-23 18:10) 

まこたま

DESIRE懐かしすぎですw
PC版をプレイしていた記憶が…もう遠い日の思ひ出ですんw
あの頃のぼくちゃんは若かったッスww
by まこたま (2011-01-24 23:23) 

takao

まこたまさん,コメントありがとうございます。

私はセガサターン版ですが。
さすがはまこたまさん,エロゲなんて何ともないぜw
あのとき,私はまだよい子の年だったのですよw

あのエンディング,衝撃的で今でもよく覚えていますw
by takao (2011-01-25 20:57) 

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