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『カナクのキセキ 3』/上総朋大 [富士見]

(あらすじ)
「か、カナクさんはリーゼに騙されているだけです。だったら、何とかカナクさんを救う方法が、あ、あるんじゃないでしょうか」
 あたしの震える声に、オリヴィア女王さまは厳しい目を向けた。
「カナクは既に魔王としてこのアレンシアに君臨している。黒に染まってしまったものを白に戻すことが出来るとは思えないわ」
 うう、女王様の確信に満ちた指摘に、涙が零れそうになる。
 でも、あたしは黒でも白になれるって信じたい……!
 ユーリエを救うため、”黒夢の魔王”となったカナク。そのカナクを元の姿に戻すため、ダー九重ルルの聖神官・ネウは単身村を出るが!?純真な恋が世界を動かすファンタジック・ラブストーリー。

(感想)
このシリーズも、いよいよ3巻。あとがきによると、ここまでが「序破急」で言う、「序」という事です。愛する人のために犠牲となることを選んだ1巻。愛する人を求める余り堕ちてしまった2巻。ここまで、形は違えど「愛」が描かれてきた作品ですが、3巻でも描かれたのは「愛」でした。そして、その「愛」は悲しく……。

文章の構成は今までと同じ形式です。表と裏を交互に繰り返して、物語が進んでいきました。これもこの作品の特徴として定着しているように思います。二つの物語が同時進行になるため、それぞれの描写が薄くなる、という欠点はあるものの、それ以上に二つの物語が絡まり一つの結末を迎える妙味が見事だと感じます。

今回もそれは健在。表はカナクを救うことを願うダークエルフの少女・ネウの物語。そして、裏は白夢の世界「イストリアル・セントラル」の姫の物語。この二つの物語が重なりを見せ始めたとき、今回は驚きが強かったです。まさか、1巻で綴られた物語の裏に秘められていた秘密。これが明かされたとき、「全ては仕組まれていたのか」という思いに打ちのめされました。そして、作者の紡いでいた物語の奥深さに、圧倒されるようでした。

今回紡がれた愛についてですが。今回も、相手を強く思う気持ちが伝わってきました。そして、思いの強さ、深さ故に、愛は時として狂気に変わる、と感じました。

この気持ちの変化が急すぎる、という意見も見られました。確かに、私も変化の急激さは多少気になりました。しかし、それも愛深さ故、と考えれば、納得できるような気がしました。私が同じ立場に置かれたとしたら。私はその思いを、そしてそこからの行動を否定できません。むしろ、私もそうなってしまう恐れがある、とすら思ってしまいました。

「序」の終わり、という事で、今置かれた状況全てが明かされたと感じました。愛するユーリエを思い、黒夢の魔王と変わってしまったカナク。愛するカナクを助けたという一心から旅に出るネウ。「破」では、この二人の行方が描かれるのだと思います。ネウはカナクを助けることが出来るかも知れない、と言う手がかりを見つけることは出来ました。しかし、それをカナクに届く形で見つけることが出来るのか。魔王となったカナクは、何を思い、どのような行動を取るのか。非常に期待したいところです。

最後に、余計なお節介を一つ。この巻で、「序」が終わった、という事ですが、読んでいてそんな感じを受けなかったのは残念でした。その時思いだしたのが、細音啓さんの『黄昏色の詠使い』『氷結境界のエデン』シリーズ。両シリーズの特徴として、それぞれの物語の転換点が印象的に描かれている、というのが上げられると思います。非常に凝ったデザインとなっていて、多少厨二病的かな、とも思うのですが、そのページを捲ったときの高揚感、そして、次の展開への期待感の高まりは素晴らしいものがあります。同じレーベルでもありますし、あれをまねすることが出来たら、物語の盛り上がりの一助になるのになぁ、と思いました。

ユーリエのキャラがあまりに魅力的すぎたために、若干の物足りなさを感じるのは残念なところ。しかし、物語の展開はどうなっていくのだろう、と楽しみであります。ユーリエとカナクの「キセキ」を信じて、今後もおっていきたいと思います。

カナクのキセキ3 (富士見ファンタジア文庫)

カナクのキセキ3 (富士見ファンタジア文庫)

  • 作者: 上総 朋大
  • 出版社/メーカー: 富士見書房
  • 発売日: 2011/10/20
  • メディア: 文庫

 


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