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『百億の魔女語り 4』/竹岡葉月 [エンターブレイン]

(あらすじ)
遂に目覚めた妹、アディリシアとともに姿を消したエーマ。彼女達を取り戻すため、騎士候補生の誇りを捨てたアルトは、かつての敵ルゼーの力を借り、ついに『禁域』と呼ばれる幻の島に辿り着く。しかし、そこで目にしたものは、太古の昔に滅びたとされる聖獣『竜(リシュ)』だった。一方エーマはアディの協力の下、魔女とは、自分とは何者なのかを究明しようと試みる……。アルトとエーマ、揺れる二人の気持ちの行方は--!?ファンタジーラブコメ、感動の最終巻。(裏表紙より)

(感想)
『百億の魔女語り』シリーズもいよいよ完結。本編4冊、外伝1冊と、ライトノベルのシリーズとしては短い感じですね。とはいえ、これくらいがちょうど読みやすい長さのような気がします。4冊あれば、世界を巻き込んだ事件を一つ起こせます。壮大な世界観を描く上で、一番適した長さなのかも知れませんね。『イリヤの空、UFOの夏』も4巻ですし。

さて、最終巻となったこの巻では、物語の芯となる部分が二つありました。一つは、世界の謎の究明。もう一つが、アルトとエーマの恋の行方でした。

世界の謎については、非常に興味深かったです。アディリシアパートと呼ぶべきでしょうか?これぞライトノベル、と言う設定を十分に堪能することができました。甲種魔術は、「大地(ザフト)」のエーテルを消費して使用される。そのため、エーテルが少ない土地では効果が十分に見込めない。しかし、そんな土地でも「魔女」は奇跡を起こすことができる。それはなぜなのか。アディリシアがその謎に迫るパート。ラストで明かされる答えは、なるほど、そういうことだったのか、と。タイトルにはそういう意味があったのか、と言う感じで、本巻の終章であり、物語の終章ともなったもののサブタイトルが『百億の魔女語り(マグス・コード)だったのは素晴らしいとしか言いようがありませんでした。

世界の謎、と言う点では、「盟約」もその一つでしたが。これは、内容はともかくその過程がいかにもあほらしかったのは、なんだか笑ってしまいました。

そして、読者が一番注目していたであろう、アルトとエーマの恋の行方。こちらは、とにかく素晴らしい、という感じで、心がくすぐられるような、幸せがあふれ出すような結末を迎えてくれました。見所としては、2カ所。アルトとエーマの再会場面2カ所につきると思います。

1回目の再会。これはとにかくアルトがかっこよかったです。好きな人のピンチに颯爽と現れる、と言うのはまさしくヒーローでありますね。そして、ある意味諦めてしまっていたエーマへの言葉。「好きだ」という言葉は使われていないですが、その言葉から雄弁にエーマを「好きだ」という気持ちが伝わってきました。実に素晴らしい告白だな、と。エーマに投げかけた、そして盟約ともなったあの言葉。掛詞、ダブルミーニングになっているのが素晴らしかったです。

そして、本作の最後に訪れる、2度目の再開。わずかなページ数しか描かれていないのに、ここからあふれ出している二人の幸福感の圧倒的なこと!とにかく、胸が震え、涙腺が刺激され、心が揺さぶられると共に、暖かいもので包まれました。本当に、この物語が素晴らしかったこと、好きだったことを強く印象づけるラストであったと思います。この再開が、1巻の出会いのような場面でもあったことがまた印象的で良かったですね。ここから、また新しく二人の物語は始まるのだ。そして、ここから二人の物語は永遠に続いていくのだ、と言う事を強く感じることができました。

私は外伝は未読。本編を駆け抜けた所ですが。短いながらも、非常にうまくまとめられた、上質の物語でありました。1巻の出会い。2巻の再会。世界の謎に迫る3巻。そして、解決に到る4巻。こうして見ると、それぞれの巻に無駄がなかったことが感じられました。アルトとエーマに対する愛着も、4巻という物語の効用だと思います。確かに、引き延ばそうと思えば、もう少し引き延ばすこともできたと思います。しかし、この物語は4巻だからこそ美しい。そう感じます。4巻で中だるみすることなく、惜しまれつつ終わることができるのは、何とも幸せなことではないでしょうか。

4巻完結、というのは、そこそこの長さがあるので、一定の満足度が得られるます。それでありながら、手に取り出しやすい長さだと思います。ある意味ライトノベルの理想的な巻数ではないか、と思う事がありますが、まさにその良さが出たシリーズであったと思います。ファンタジックでラブコメで優しい物語。素晴らしいシリーズでした。




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