『彼女を言い負かすのはたぶん無理 3』/うれま庄司 [PHP]
(あらすじ)
平凡だった桜井祐也の高校生活は、ディベートの天才・九重崎愛良との出会いによって激変した。しかし、再三の警告を無視して暴れ続けたアイラは、ついに一週間の停学処分となる。アイラのいない学校生活は平和そのもの。そう思っていたのだが、桜井と橘詩織には、とある事情から生徒総会でディベートをしなければならなくなってしまう。人見知りの詩織には、全校生徒を前にしたディベートはまだ難しい。気弱な性格を治すため、一緒にディベートをしたり、デートをしたりするうちに、二人の中は親密なものへと発展していく。そのころ、自宅でひとり待機していたアイラは……。(裏表紙より)
(感想)
たぶんスマッシュ文庫で一番売れていると思われる作品、第3巻です。ちなみに、この感想を書いている時点(2012.2.28)で、三巻まで出ているのがこの作品しかなかったり。
帯の裏に「『僕は友達が少ない』なんて言うのはリア充のたわごとである。是か非か!?」なんて挑発的なものが書かれていて、相変わらずだなぁ、という印象です。どうせなら、表に載せれば良いのに、と思ったりもしますが。そして、ちゃんと本編でこの内容でディベートされているのが好印象。うん、ディベートの内容も納得です。
さて、3巻まできたこの作品ですが、私は2巻で不満を感じていたことがありました。記事にも書いたのですが、ディベートの分量が少なくなりラブコメパートが増えたことで、この作品のよさが大幅に失われているように感じたことです。そして3巻。一体どうくるかなぁ、と思っていたのですが、私の心配は杞憂に終わったようでした。
3巻は行われているディベートは2つです。しかし、そこでしっかりと肯定側、否定側の立論、反論、総括が描かれており、内容も納得できる内容となっていました。分量も十分。そのため、ディベート部分で得られる満足度が高かったように思います。細かいところを見ていったら、ツッコミどころはあるでしょうし、最後のものに関しては、「それ、どうなのよ?」と思う部分もありました。しかし、それを補ってあまりある楽しさがあったように思います。最後のものは、ちゃんとそれなりの結論が出たことで満足です。
ラブコメに関しても、アイラとは全く違うタイプの恋のライバルの登場によって3角関係が完成。ようやくラブコメできる舞台ができたように感じました。今までは、一方的に主人公を振り回す側であったアイラが、ライバルの登場で不安に駆られ、弱い部分を見せたことも良かったです。やはり、ラブコメの三角関係は微妙なバランスでこそ生きる、と言うものでしょう。唯一残念だったのは、主人公の「好き」という感情が、意外と弱かったことでしょうか。真っ直ぐにアイラのことが好きなのか、と思っていたら、そうでもなかったかな?と言う印象でした。
ディベートで十分な満足が得られ、ラブコメをするための関係が完成した。このことにより、この作品は大きな二つの柱を得たように思います。そして、それが作品のおもしろさに繋がっている、と感じました。
題材が題材であるためか、2巻の発売から一年以上経っての3巻発売、とのことですが、その分内容が充実していたので、大満足です。ディベートを取り扱った唯一無二のライトノベルとして、次の巻がとても楽しみです。
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