『ウルトラマン妹』/小林雄次 [PHP]
(あらすじ)
円谷プロ監修で送る、美少女ウルトラ戦士の物語。
兄想いだった妹・月島あかりが、怪獣に襲われて瀕死の重傷!?……と思ったら、ウルトラマンと一心同体になって大復活!中学2年でいきなりウルトラ戦士となったあかりは、地球侵略を企む凶悪な宇宙人の魔の手から、みんなの地球を守るために奮闘する。しかし、一体化したウルトラマン・ジャンヌの能力にも問題があり、絶体絶命の大ピンチに!そんなとき、救いの手を差しのべてくれたのは、あの宇宙警備隊の隊長の……。
(感想)
発売前から一部話題になっていた作品が、ついに発売です。
まず、この作品のタイトルを見たとき、「ウルトラマン」の方を期待してしまうと思います。わたしはそうでした。しかし、この作品を読み終わってみると、この作品のメインは「ウルトラマン」ではなく、「妹」。兄妹愛がメインテーマで、そこにウルトラマンというスパイスを加えたライトノベル、と言う印象を受けました。
まず、タイトルから見ると、「ウルトラマンの妹」が出てきそうな感じもします。しかし、実際は兄妹の妹の方に、女性型のウルトラマン・ウルトラマンジャンヌが合体した、と言う設定。そして、「ウルトラマン」、と聞いて怪獣とのバトルを期待してしまうところですが、この作品のメインであるウルトラマンジャンヌは、見習い。初期は光線技に代表されるような必殺技も持っていないウルトラマンです。
よって、「ウルトラマン」という所に強く反応して購入された場合、激しく肩すかしを食らう可能性があると思います。出版社としては、うまく釣れた、とほくそ笑むところかも知れません(大ヒット作、未だにないレーベルですし)。これが、ウルトラマンからプリキュアまでこなす脚本家が書いて、円谷プロが監修した作品なんだから、世の中わからないものです。
そして、この作品を読んでいると、やたらコミカルなシーンが目立っていると感じました。この辺、「ライトノベル」と言う事を意識したのかなぁ?と思いました。ジャンヌが見習いでドジっ子と言う設定のため、はじめ地球に訪れたとき、兄の方と合体しようとしたり、必殺技の特訓でジャンヌ・スラッシュ(アイスラッガーみたいな技)が宅配ピザのバイクのケースに突き刺さり、二人でそれを追う羽目になったり。中盤まではこんな感じが続きました。ここを乗り切れるか乗り切れないかが、作品の評価を分けそうな予感がします。
ラストは強大な力を持つ敵が現れて、激しい戦いが繰り広げられる、と言う展開で、なかなかシリアスになってくるのですが。想像してみると、やたらシュールにしか思えない絵面になっているように思いました。それがこの作品の味付けだと思えば、納得するしかないのですが。決着まであれですし。と言うか、ゾフィーのイメージが崩れていくよ……。
かつて、ウルトラマンが戦って守ってきた世界という設定は良かったと思います。また、ウルトラマンの設定が色々出てきて、時折にやり、とできる場面もあるのですが、ウルトラマン好きとして楽しめるのはそれくらいかな、という感じがします。兄妹もののコメディとして楽しむのが正解だと思います。そう見ると、そこそこ楽しめる作品であったと思います。それでも、前半の展開がどうも細切れでつながりがないように感じたり、一つのネタの引っ張りがしつこく感じられたり、気になる点はあるのですが。
あと、挿絵の数が他のレーベルよりも多い事がスマッシュ文庫の売りの一つであったのに、挿絵の数が少なかったこと(ざっと数えたら8枚)も残念な点でした。大体同じペース数の『デート・ア・ライブ 4』の方が挿絵が多いなんて(しかもこっちは見開きの迫力のある挿絵もありますし)。
ウルトラマン好きの人が、飛びついて読む作品ではないかな、と思います。まったりとした脱力系コメディが好きな方に向いている作品です。
なるほど、一応は公認企画だったんですね。ウルトラマンたちも「男兄弟だけじゃなく一人くらい可愛い妹が欲しいよなー」と考えてもいいわけで(笑)
劇場用作品にゲストとして登場する予定もあるんですかね。
by chokusin (2012-03-20 19:54)
chokusinさん、コメントありがとうございます。
なんか、編集が企画する→作者ダメだろうな、と思いつつ引き受ける→円谷プロからOK出る→ダメだろうな、と思いつつ冒頭部分書く→OK出る→ダメだろうな、と思いつつ全部書く→OK出る、みたいな感じみたいです。
女性なのは、M78星雲も女性の社会進出が進んでて、らしいですよw
ジャンヌ以外にも、ゾフィーの信頼厚い妹分のアムール、ってウルトラマンも出ますしw
時代ですねw
で、アムールは実力あるので出そうですが、ジャンヌの方はダメダメなので、劇場版には出られなさそうです。
by takao (2012-03-20 20:37)
そうかー、そんな話なんだ。
買わない方がいいかな。ちょっと気になってた。
by つるぎうお (2012-03-20 23:10)
本来、ウルトラシリーズはミステリアスかつ神秘的な事件があって、そこに巻き込まれた主人公たちが解決を試みて、それでも駄目だから最終手段として変身して解決してこそだけども、この作品は今までの型枠にとらわれない作風も良かった。
いつしかの映画、ウルトラマンゼアスの時みたいに新しいウルトラマン像として見ることができた。
by NO NAME (2012-03-21 00:49)
つるぎうおさん、コメントありがとうございます。
ウルトラマン、ってのを期待して読むと期待外れ、と言う気がしないでもないのです。
ラノベとしてみると、標準的という感じがしました。
by takao (2012-03-24 20:13)
NO NAMEさん、コメントありがとうございます。
私の私見を改めて。
確かに、今までの型枠にとらわれない作風であったと思います。
その部分に関しては、私もありだとは思います。
しかし、往々にして歴史ある作品には原理主義、というか。
型枠から外れることに対して強く批判する方がいます。
ネクサスに対する批判でも見られたような。
そして、そんな方がウルトラマンを期待してこの作品を読むとどう思うか?
なので、最後のような書き方をした次第です。
なお、確かに新しいウルトラマン像ではあるとは思うのですが、あくまでもライトノベルの定番のフォーマットにしか過ぎないと感じました。
言い方は悪いですが、ライトノベルのフォーマットにウルトラマンを載っけてみただけ、という感じが。
結果、ライトノベルでやる意義があったのかな?と思ってしまった次第でした。
私が期待しすぎただけかも知れませんが。
ライトノベルとして見ても、標準的レベル、あるいはそれより、と言う内容も、若干引っかかってしまったところであります。
話題性はあると思いますが、果たしてその話題性に答えられる内容か、と言われると、私は疑問符をつけざるを得ません。
by takao (2012-03-24 20:21)