チラ裏日記「『昔と比べて最近のライトノベルが酷い』という指摘に対して思うこと」 追記 [チラ裏日記]
この記事は、前々回に書いた「『昔と比べて最近のライトノベルが酷い』という指摘に対して思うこと」の記事で書き忘れていたことの追記になります。申し訳ありませんが、未読の方はその記事もご覧下さい。
こちらから(クリックするとこの記事に飛びます)→チラ裏日記「『昔と比べて最近のライトノベルが酷い』という指摘に対して思うこと」
書き忘れていたことがあったので、少々付け足しを。
ライトノベル作品のワンパターン化と言う事に関して、もう一つ思うことがあります。それは、「作者の絶対的な経験の不足」です。
実際の所は統計としてまとめていませんので、詳しいことはわかりませんが、そもそもライトノベル作者になろう、と言う人は、圧倒的に「文化系」が多いように感じます。さらに言うなら、読書が好き、という人が。
そのような人は、たくさんの小説(ライトノベル以外も)を読んで、たくさんマンガを読んできたことだと思います。しかし、その分、例えばスポーツと言った運動経験が不足しているのではないか、と思います。
も ちろん、自分が経験をしたことがないジャンルでも、取材をすることで書くことができます。2011年は、作者が1年間実際に体験取材をして書き上げた、と 言う『のうりん』が話題になりました。しかし、大衆小説の作家と違って、ライトノベル作家は速いサイクルが求められます。体感としては、新人さんはデ ビューして1年に3冊はシリーズを書くことを求められるように感じます。これは、電撃文庫のイメージが強いかも知れません。実際、スニーカー文庫なんか は、ここ最近デビューして3巻以上出せた人が圧倒的に少ないですし。
また、異 世界ファンタジーの世界を構築する、と言う手もあります。しかし、それもなかなか難しいように思います。異世界ファンタジーを作る、と言う事はそれこそ世 界の理を丸ごと一つ作ることであると思います。言語から生活習慣、民族、地理、国、勢力図、歴史などなど。それこそハイファンタジーを作ろうものなら、取 材以上の労力が必要になる可能性があると思います。また、現実世界を参考にしたファンタジーを作るにしても、そもそもこの世界のことを知っていなくてはな りません。しかし、世界を一つ作れるほど、世界を作ることのは大変だと思います。川上稔さんみたいに、設定資料だけで鈍器を作れる人もいますが、果たして それがどのくらいの人にできるか。
また、異世界ファンタジーをジャンルとすると、物語の展開としてダイナミクスさが求められます。王道展開はあるものの、どれだけ読書を魅了する物語を構築するか。大変な作業だと思います。
そ して、最大の問題は「異世界ファンタジーを好む読者がどれくらいいるか」と言うことだと思います。最近の傾向を考えるにしても、それは少ないのではない か、と言う気がします。さらに、異世界ファンタジー、と言うジャンルになると、「海外に人気ファンタジー作品」という強力なライバルが現れます。海外作品 と競い合いつつ、どれだけの読者を確保できるか。私はライトノベルのファンタジー作品は大好きですが(そもそも、ライトノベルに入ったときが『スレイヤー ズ』に代表される、ファンタジー全盛時代だったので)。しかし、下世話な話かと思いますが、労力とヒットする確率を考えたときに、ファンタジーというジャ ンルはかなり割に合わないような気がします。
そこで、結局現実世界をモチーフ にするとします。しかし、取材をする時間が取れない。すぐに次の巻の締め切りがやって来る、となると一体何を書くか。それは、「自分が実際に体験したこと を元にしたお話」となると思います。すると、自然と学園もの、というジャンルが出てくると思います。さらに、元々がマンガやライトノベルが好き、という人 となると、そこに「異能系」というキーワードが浮かんでくるのではないか、と思います。最近人気の「日常系」なんかも、結局は経験の少なさ故にそのジャン ルが増えているのではないか、と思う次第です。
何巻か忘れましたが、俺の妹が
こんなに可愛いわけがない』の中で、某編集者が「作家になる前に、たくさん人生経験をして欲しい。何なら、定年を迎えてから作家を目指してもいい」みたい
な台詞を言っていたと思いますが(すみません、かなりうろ覚えです)、このことからも、作者の経験が不足している、と思われます。マンガにおいても「最近
のマンガ家志望の人は、マンガばっかり読んで育ってきていて、それ以外のことが描けない」と言われていたと覚えています。
作者の側の都合ではありますが、元々ライトノベルというジャンル自体、中高生をターゲットとした作品です。そのターゲットにとって学園という舞台は非常になじみ深い場所である故、親近感が生まれ、人気が高まるのではないでしょうか。
余 談ですが、 はてブで「キャラクターの類似性」を嘆く方がいらっしゃいました。その点も結局作者の問題になるのではないか、と言う気がします。キャラク ターは作者のパーソナリティから生み出すものだ、と聴いたことがあります(かなりうろ覚えですが)。しかし、ライトノベル作者を志望する人の個性がそこま で多種多様となるか。結構似たような個性の人間が集まる可能性があると思います。
ま た、ライトノベルというジャンルは、極端な個性を求められます。大げさに言えば、「普通の人には興味がありません」ということです。また、物語の性質か ら、性格に類型化が求められます。たとえば、ハーレムものであるならば、主人公はヒロインの機微にとことん鈍感でなくてはいけない。ハーレムものでは、女 性キャラに差別化をつけるために個性を求められますが、結局そこに当てはめるのは従来ある記号の集合体。正統派、ツンデレ、クール、変態、幼い、バカ、天 才、理事長の娘、理事長などなど。
異能バトルものならば、主人公は最強でなく てはならない(個人的には、ある程度能力は低いけども、それを知恵で補って戦う、と言うものが好きですが、それを考えるのは大変でしょうから、自然と主人 公は俺TUEEEになる のでしょう)。さらに、かっこよく描くために、普段はやる気がなさそうに見えて、いざとなったらばしっと決める主人公。バトルもの故に、始めは敵として出 会いつつも、戦いの中でお互いの力を認め仲閒になるのがいい。
結局、「ライト ノベル」というジャンルの特性ゆえ、また読者にとって好感度をもたれるキャラを追求する結果、キャラクターがテンプレート化していくのではないだろうか、 と予想します。もちろん、テンプレートから外れたキャラもいるにはいるように思いますが。結局、それもすぐにテンプレート化してしまう、と言うライトノベ ルの現状があるように思います。ここまで言ってしまうと、ライトノベルを生み出す問題、と言えるような気がしますねw
あと、今までにないようなキャラを追求した結果、読者からもどん引きされるキャラが生まれることもあったように思います(とりあえず、思い浮かぶ作品がありますw)
という感じで、忘れていたことの追記でした。
コメント 0