『うちの魔女しりませんか? 3』/山川進 [小学館]
(あらすじ)
魔女はそこにいた。世界すべてを敵に回して。魔女が、絶滅危惧種として保護されている世界。地上最後の魔女・ミラとの 出会い、そして別れを経験した少年・文哉は、魔女を探して遠く異国の地で行方不明になった父親を捜すことにする。旅先で偶然出会った少女・マーヤになぜか 惹かれる文哉。しかし、マーヤは人と出会おうとせず家に引きこもり、「人間も、魔女も、どっちも大嫌い!」と文哉に言うのだった……。 マーヤの過去に秘 められた秘密、そして父親の探していた「魔女の楽園」とは? ――その日、魔女は地上からいなくなり、僕らの旅も終わる。少年と魔女の物語、第三弾。(ガガガ文庫ウェブページより)
(感想)
つい最近、某ライトノベル出身今は大衆向け小説作家のTwitter上での発言が話題になりました。で、この作品を読んでいると、確かになぁ、と感じる次第だったりします。こういう「ライトノベル的お約束とかエロとかあんまりないけども、ちょっと心が温まるいい話」という作品が、もう少し売れて欲しいなぁ、と思いました。
さて、このシリーズもついに3巻。ハートウォーミングないい話と、CUTEGさんの描く素晴らしいイラストがマッチした、素敵な作品なだけに、嬉しい限りです。
この作品のいいところは、やはり心暖まるような、人と魔女の心の交流にあると思います。そして、この巻でもそれは健在。この巻のヒロイン?であるマーヤは魔女と人間のハーフ。しかし、ヒマラヤでは魔女は災いを引き起こす存在として恐れられ、また、過去の出来事から人との交流を極力しないようにして生きています。そこで出会ったのが、文哉。ミラとの出会いによって魔女と人間は仲良くできる、と言う事を確信している文哉との出会いによって、マーヤが少しずつ変わっていく様子は、これまで以上に素晴らしいものでした。
だんだん心を開いてきたマーヤが知る、母の真実。これがこの巻のクライマックスではなかったでしょうか。マーヤの母の最後の言葉には、目頭がじんわりと熱くなるようでした。
難点は、ツッコミどころがたくさんあるところ。ヒマラヤへの登山、と言う割に主人公の備えがおかしい、とか、村のこととか気になる人には駄目かも知れません。私は笑ってスルーしました。それと、相変わらず最初のカラーページにラストのラストの部分があるのは、気になるかも知れません。
ラストに関しても、相変わらず余韻がないというか、あっけない感じがするのも少し残念に思います。しかし、これまでのシリーズもそうであったので、これが作者の物語の描き方なのでしょうね。ただ、それまでがラストのあっけなさを補ってあまりあるほど、素晴らしい流れだったと思います。マーヤの過去が分かってきて、内面が想像できるようになって。だからこそ、文哉の行動には共感するものがあり、マーヤの変化が良かったです。
ラストの展開からして、この物語はまだまだ続きそうで嬉しい限り。そろそろ、人間と魔女のふれあいの物語、と言う展開だけではなくなりそうな気配です。一体どんな展開になっていくか、楽しみです。
(関連リンク)
ラノベのご指摘はごもっともでちょっとドキっとしますです。(⊃д⊂)
by 大林 森 (2012-04-19 04:30)
大林 森さん、コメントありがとうございます。
確かに、今のライトノベルはエロが多いですからね。
大賞としている年齢層と、そこにアピールする、と言う事を考えたら、しょうがないのかも知れないですが。
ただ、それが売りではない作品も売れて欲しいなぁ、と思うばかりです。
by takao (2012-04-19 20:34)