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『ココロ・ファインダ』/相沢沙呼 [光文社]

(あらすじ)

覗いたファインダーが写し出すのは、
少女たちのココロの揺らぎとミステリー

高校の写真部を舞台に、女子高生たちが構えるカメラに写るのは
ともだち、コンプレックス、未来、そしてミステリー。

自分の容姿に自信がもてないミラ、クラスの人気者カオリ、

「わたし」というしがらみに悩む秋穂、そして誰とも交わろうとしないシズ。

同じ高校の写真部に所属する4人は、性格も、好きなカメラも違うけれど、

それぞれのコンプレックスと戦っていた。

カメラを構えると忘れられる悩み。

しかし、ファインダーを覗く先に不可解な謎が広がっていて……。

少女たちは等身大の自分を受け入れ、その謎に立ち向かう!(光文社ウェブページより)

 

(感想)

こうやって、大好きな作家さまの本が短いインターバルで届けられるのは、非常に嬉しい限りです。前作、『マツリカ・マジョルカ』から2ヶ月で届けられた作品は、青春のほろ苦さと輝きが感じられる、素敵な青春の物語でした。

この物語、まず読み始めて気づくことは、文の印象が非常にさばさばしているかな、ということ。そう、この物語は、作者の作品で初めて?、女性の視点から描かれる物語なのです。「コンプレックス・フィルタ」「ピンホール・キャッチ」「ツインレンズ・パララックス」「ペンタプリズム・コントラスト」の全4編から構成されたこの物語は、それぞれが写真部の別の女性の視点で語られた物語です。

そこで描かれるのは、彼女たちの内面に抱えた苦悩。外見、輝き、過去、期待。それぞれが目というファインダを通して見たとき、相手がいかにも素晴らしいものに思える事がある。しかし、その内面、ココロをファインダ越しに覗いてみると、実は誰でも何か苦悩を抱えている。揺らいでいる。そんな物語かな?と感じました。その苦悩も、ある意味青春時代だからこそなのかな、と感じました。

また、周りの無遠慮かつ無遠慮な視線が、物語の登場人物を苦しめる一つの要因となります。これは、人生経験の少ない、また「集団」という意識が強くそこから外れる者を排除しようとする、中高生独特な雰囲気から生まれるような感じがしました。

ただ、周りの友だちと比べて落ち込むこともあるけれども、周りの友だちがいるからこそ救われる。これも青春の一ページかな、と感じられました。自分一人で抱えきれない悩み、乗り越えられない苦しみがあるけれども、でもそんなときこそ、友だちの助けを借りればいい。そんなことを感じました。それこそが、青春の一ページとして輝くのかな、と。

相沢沙呼さんと言うと、鮎川哲也賞受賞作家ですし、帯にも「ミステリー」と描かれています。しかし、あくまでもこの物語のメインは、帯前面に書かれた「青春“写真部”物語」であると思います。ミステリはあくまでも物語の一要素。その謎がそれぞれの登場人物の内面を描き出す効果を生んでいると思いますが、あくまでもそれは「青春」を描き出すためのもの、という風に感じました。また、4つの章が、それぞれ4人の女子高生の視点で描かれているので、今回の物語は最後に一つの大きな衝撃が隠されている、と言う事はありませんでした。

しかし、それぞれの苦悩を抱えた少女たちが、その苦悩を乗り越えて自分の道を進んでいく姿こそ、この物語のメインであると感じました。そして、そのラストの美しさ。非常に素晴らしい物語でした。前作『マツリカ・マジョルカ』もそうでしたが、ミステリ、というよりも、青春時代の苦悩と、そこからの立ち直りと、そこから生まれる輝きを描くのが巧みな作家さまだ、と感じました。これからも、青春時代をメインに描くのかな?と感じますが、非常に楽しみに感じました。

最後に、おっさんから一言言わせて貰うとすれば。自分が本当に好きで、本当にやりたいと思うのならば、それに思いっきり挑戦すればいいよ、と感じました。それこそ周りの人が何を言おうと。周りの人の視線が気になってやめるのならば、その程度の思いだった、といえるかも知れませんが、それで諦めてしまっては後々後悔してしまうよ、と。自分が好きなことだからこそ、苦しいことにも耐えられるはずだから、頑張ればいい。そんな事を作中で感じました。

ココロ・ファインダ

ココロ・ファインダ

  • 作者: 相沢 沙呼
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/04/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

(関連リンク)

『午前零時のサンドリヨン』/相沢沙呼

『ロートケプシェン、こっちにおいで』/相沢沙呼

『マツリカ・マジョルカ』/相沢沙呼

 


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コメント 4

大林 森

最近、カメラ女子も増えてますね。( =・ω・)つカメラってどこか第3者的になれる道具なのでアプローチが素直になれるのかしらん?
by 大林 森 (2012-04-22 02:03) 

takao

大林 森さん、コメントありがとうございます。

そういえば、デジイチ持つ女性が増えた、というのは少し前から見ますね。
デジイチで取り扱いが簡単になったこともあるし、女性は基本的に美しいものとか可愛いものが好き、と言うのもあるような気がしますが。
たしかに、第3者的な視点からの素直なアプローチ、と言うところはあるのかも知れませんね。
by takao (2012-04-22 12:20) 

ロック

物理的なカメラのファインダと、
内面を捉えるファインダを
かけ合わせたラノベなんですかね?

>思いっきり挑戦すればいいよ
takaoさんがニコ生やると聞いて
by ロック (2012-04-22 21:34) 

takao

ロックさん、コメントありがとうございます。

写真部がメインの話なんですけども、ファインダで内面を除く、って部分も含めてのタイトルなんでしょうね。
ちなみに、ラノベじゃないw
一般書籍です。
ほら、光文社の単行本ですし。
……まぁ、光文社は三雲岳斗さんの『少女ノイズ』みたいな本も出してますしねw
ちなみに、三雲岳斗さんは『ダンタリアンの書架』とか『アスラクライン』の作者です。念のためw

ニコ生は、そのうちですねw来週か再来週かその後か。
いつになるやらw
by takao (2012-04-22 21:42) 

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