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『おおかみこどもの雨と雪』を見てきました [アニメ]

『サマーウォーズ』から3年。細田守監督の最新作『おおかみこどもの雨と雪』。事前情報を全く仕入れていませんでしたが、後日『サマーウォーズ』を見て、その作品に見せられて、「劇場で見たかった」と後悔した私としては、見に行かざるを得ない!というわけで、公開二日目に見てきました。

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ということで、今回はその感想をば。

基本的に、私の性格がひねくれていますので、この作品が好きな方は気分を害されるかもしれませんので、一応記事をたたんでおきます。あくまでも、(性格がねじ曲がった)一視聴者の感想、として見られる方のみご覧下さい。

私は、12時の回で見たのですが、お客の入りは上々。中段真ん中の席を指定できた、と言う幸運にも見舞われました。視聴条件としては最高の状態。右隣が女性3人のお友達集団。左隣が若いカップル、という精神攻撃を気にしなければ、ですが。

まず、始まって驚いたのが、その圧倒的なクオリティ。一瞬、実写が始まったのかと思うような、花の画面からお話はスタートしました。この作画のクオリティがこの作品の長所の一つだったように思います。

その後見た『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's』との比較の印象もあると思いますが、この作品からは「どこまで実写に近づけられるか」という挑戦のようなものを感じるようでした。とくに見応えがあったのは、事前番組でやっていた背景の揺れている花と、雨の表現でしょう。

風の強い場面で花が揺れている、と言う部分は、かなり興味深い挑戦だったように思います。注目しすぎると、それぞれのパーツ訳された3D CGの花が、一定のパターンで揺れている、と言うのが分かってしまうのですが、それでも意図しないで見るとそれは実写のように、自然なものとして映りました。私はそこだけに注目してしまったので、若干の違和感を感じてしまいましたが、これはCGの技術が進歩すれば克服できることであると思います。むしろ、CGでここまでできるようになっている、ということに、技術の進歩とこれからの可能性を感じさせてくれました。

また、雨の表現。監督自身がこだわった、と番組で発言していたように記憶していますが、実際、蜘蛛の巣に集まった水滴、ハスの上で踊る雨粒、といった表現からは執念すら感じてしまうほどのクオリティでした。ただ、これもあまりにこだわりすぎたためか、作品全体としてみたときに、その場面だけ気合いが入りすぎていて、若干浮いているように感じてしまいましたが。ただ、それでも非常に見応えのあるものでした。

演出で特に目を引いたのは、初めての大雪の日。親子3人が雪山を駆け回るシーンでしょうか。雪と雨の視点のローアングルから山を走り抜けるシーンは、気持ち悪くなりそうでしたが、雪の質感、美しさ。それが印象的でした。3人が走った後に雪が舞い散る場面は素晴らしかったです。

また、時間の経過の演出も面白かったです。例えば、おおかみおとこと花の出会いの時間。花がバイト先のクリーニング店から出てきて、おおかみおとこに逢いに良く場面が数度あります。その時、構図自体は同じなのですが、花の格好があるときはワンピースで、あるときはコートで。これで時間の流れを表現していたり。雨と雪の成長を表す場面では、学校の校舎の中で、描く教室をスライドさせながら二人が成長していく様子が見られて(うまく言葉にできなくてすみません)、興味深かったです。

ストーリーについて。これは正直賛否が分かれそうかな、と言う印象があります。見ていて感じたのは、とにかく丁寧な話の運び。2時間弱の時間で、13年間の親子の歩みを描いているために、物足りなさを感じる場面は多々ありますが、尺が足りない、と感じる場面はなかったと思います。最初の30分で、両親の出会い。子供の出産。そしておおかみおとことの別れ。二人が惹かれ合った理由については、もう少し確かな理由が欲しかったかな、と思う面もありますが。まぁ、恋愛なんてそんなものと思って納得しましたが、話自体自然と見られるようになっていたと思います。

やがて訪れてしまう、速すぎる別れ。そこから親子の成長の様子が描かれるのですが。ここからが、作品のテーマとしてたびたび語られる「親子」という場面だったと思います。

ただ、個人的にこのシーンで特に素晴らしいと思ったのが、小学校に入る前の雪の無邪気な可愛らしさではないか、と思います。この時期の子供特有のものであると思いますが、とにかくわがまま。自分がやりたいことを主張して、親もだめだなぁ、と思いつつ、それに「やれやれ」と付き合ってしまう。それに対して、子供は無邪気に喜ぶ。自分の見たことのないものに興味を示し、自分の周りにあるものに興味を示し、世界にあるもの全てを宝物と思える子供の可愛らしさ。その表現があまりにも見事であったように思います。私自身は子供が居ませんが、子供がいる親なら、その場面に共感し、ほくそ笑んでしまうのではないか、と思うほどでした。このあたりが、この作品の一番の見所、というのは過言でしょうか?過言でしょうねw

さて、この作品についてマスメディアが語るときにしばしば登場するのが「家族」ですが。私自身は、その言葉では足りないのではないかなぁ、と感じました。それで、自分なりにこの作品のテーマを考えてみたのですが。そこで思いついたのが、表のテーマが「つながる」。裏のテーマが「えらぶ」ということでした。某ラノベ作家のあとがきに書いてあることみたいですし、何かしっくりきませんがw

「つながる」と言う事に関しては、親と子のつながりはもちろんのこと。その親であるおおかみおとこと花の出会い。引っ越した先、困っている花と地域が繋がっていくことで、困難を乗り越えていく場面。そして、学校で、自然で雪と雨が出会って、繋がって、成長していくと言う過程。核としてあるのは、確かに「親子」なのでしょうけども、それ以外にも、周りとの関係があってはじめて、親子三人が存在できる、と言うのを感じられました。

裏のテーマについては、作品の根幹にかかわることなので多くは語れません。しかし、こここそ、この作品を素晴らしいものに引き上げている要因ではないかと思います。そして、こここそ、この作品に賛否を生む要因であるとも思います。

と言うのも、劇場で見ているとき終盤で後ろの席からすすり泣くような声が聞こえていました。しかし、映画が終わった後、「どこに泣く場面があった」という声も聞くことができました。正直、この二つの反応はしごく納得できる。ラストについて、思い入れることができるのならば、この上のない感動を得られますし、それがまだ理解できないならば、感動を得ることができない、と。たぶん、多くの子供を持つ親ならば、胸を揺さぶられると思いますが、それ以外、特に若い人となると難しいように思います。ネットで富野由悠季さんがこの作品を絶賛した、と言う話題を見ました。記事や発言自体確認していませんが、おそらくこの場面を指してのことなのではないかなぁ、何て思う次第です。

個人的には、雨と雪。二人の成長がそれぞれ思っていない方向に転がっていったのは興味深いと思います。

とはいえ、気になる場面もちらほらと。大きな面で行くと、サウンド面と話のつじつま、という場面です。

サウンド面ですが。音楽自体は悪くないと思いました。ただ、一つだけ。穏やかな時間を過ごしている場面があったのですが、音が大きすぎるw音ははじめもう少し絞って、だんだん大きくしていくのが場面に合っていたのではないかなぁ、と思いました。

また話のつじつま。サマーウォーズでも、ラストの人工衛星が落ちてあの程度の被害ですむわけがない、と言うのを筆頭に、ツッコミどころがあります。ただ、あれはまだ現実から若干乖離した面があるので、「フィクションだから」と感じる事ができました。

しかし、本作は「より現実に即した」お話であったように思います。だからこそ、些細なことでも引っかかってしまって、物語にのめり込むのを阻害していたように思います。児童相談所があれだけ強引に働いていたら、世の中の児童虐待はもう少しヘルのではないか、とか。一番のツッコミどころは、あの世界では児童相談所はむりやり家に乗り込もうとするくらい熱心なはずなのに、ラストでは何もなかったの?ということですね。あれだけが大きく引っかかってしまって、ちょっと冷めてしまった私が居ました。

あと、あの転校生の男の子もね。正直、あれだけ嫌がる同級生の女の子を追い回していたら、被害の大きさはともかくとして、やり替えされても仕方ないんじゃない?と。その点が不問の上、誰からも語られることがないのが何か……。

 

という訳で、個人的な評価ですが。面白い作品ではあると思います。派手さは全くなく、シナリオで見せる作品で、それが成功しています。ただ、始めの期待値が高すぎたためか、見終わった後に「あれ?」と思ってしまうところもありました。確かにストーリー自体は、よさをたくさん秘めているのですが。それでも、絶賛できるか、と言われると、ためらってしまう、というか。もう少し、私の心が綺麗ならば純粋に絶賛することができたのだと思うのですが。

正直、BD買うか、と言われると「うーん」という感じでした。


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コメント 4

chokusin

観客動員も好調のようですね。自分も近々観に行く予定です。
by chokusin (2012-07-23 20:55) 

takao

chokusinさん、コメントありがとうございます。

観客動員上々のようですね。
先日、王様のブランチ見ていたら、興行収入ランキング初登場2位を記録していましたし。
職場でも、見に行ったというと「どうだった?」と聞かれ、細田監督の注目度が上がっていることを感じられました。
by takao (2012-07-29 21:26) 

る〜

こんにちは~。
自分も観てきました。

ほんと、雪が可愛かったですよね~。
あの無邪気さが良いと思いましたよ!!
あれじゃ、なんでも許してしまうかもしれません(笑)

確かに、細部の所では若干引っかかる所がありましたね。
その辺りは目をつぶっても面白かったと思いますよ~。

by る〜 (2012-08-14 17:11) 

takao

る~さん、コメントありがとうございます。

とにかく、雪の無邪気な可愛さが、この作品の一番の見所なんじゃないか、と思ってしまうほど、雪が可愛かったと思います。
子供の純粋さ、無邪気さを見事に切り取った、という印象です。

確かに、目をつぶってもいいかなぁ、と思うのですが。
ただ、他の方と意見交換したのですが、あまりに制作側に都合のいいところばかりにご都合主義というか、放り投げを使っていて、そこが気になってしまいました。
面白いんですけどねw
by takao (2012-08-14 20:12) 

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