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『テンプテーション・クラウン 5』/雪野静 [集英社]

(あらすじ)

アキトの死によって発現したルヴィの真の力が世界を滅ぼす!?
荘厳なる恋と戦い物語、最終幕!!
選定者。それはこの世界に墜ちた神や悪魔をその身に宿し、力を行使する者。
『王冠』の少女たちを虜にしてきた“魅惑”の力を手放したアキトは、ルヴィに真実を告げた。
自らの感情を否定され、絶望するルヴィに本当の想いを伝えようとしたアキトだったが、それが果たされることはなかった。
彼はルヴィをかばい、命を落としてしまう。
アキトの死によって、全てを憎悪したルヴィは“天敵”の真の力を発現し、世界は滅びを迎えようとしていた。
彩姫の“叡智”すら及ばぬ事態は“破滅”の『王冠』ラースが望むように、全てを終わらせてしまうのか!?
荘厳なる恋と戦いの物語はここに最終幕を迎える。
愛よ、君のもとへと届け。(スーパーダッシュ文庫 ウェブページより)

テンプテーション・クラウン 5 (集英社スーパーダッシュ文庫)

テンプテーション・クラウン 5 (集英社スーパーダッシュ文庫)

  • 作者: 雪野 静
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/08/24
  • メディア: 文庫

感想は追記にて

(感想)

テンプテーションから始まる恋の物語、ここに完結。

この5巻は最終巻だけあって、今までと違った壮絶な戦いが繰り広げられていました。アキトを失ったことで暴走するルヴィの力。そこに現れた、世界を滅ぼすほどの力の流れ。それぞれの目的と信念のもと、戦う王冠達。これまで登場した王冠総出演の、怒濤の展開でした。

この戦いの中で感じたのは、ルクツァー、イフのかっこよさでした。いや、二人とも己の信念をかけて、自分の大切なものを守ろうとするところが、とてもよかったです。イラストのゆーげんさんがあとがきで、「No.1キャラはルクツァーさんでした」と語っていますが、それも納得でしたね。特に、因縁の相手を追い詰めるシーンを想像すると。そして、イフさん。この5巻を読んでいて、物語の支配者はラースだったか、と思ったのですが。どっこい最後の最後、ジョーカーの役割を果たしてのは彼でしたね。他の全てを犠牲にしても、誰かのために、と思える二人の姿は、輝いて見えました。

世界の存亡をかけた戦いとなった5巻。でも、世界を救ったのは、何の力もない、かつて誘惑の力を持っていただけの少年が中心となっていた、と言うのがおもしろかったと思います。確かに、彼には何の力もありません。ただ、彼と出会ったことで心を持たなかった少女に心が生まれ、一人の少女がお節介焼きに生まれ変わり、自分の所有する力によって本心を破滅させていた少女の心が救われた。はじめは誘惑の力で引き寄せたかもしれませんが、その後の変化を促したものこそ、彼の力だったように感じました。確かに、主人公としては地味だったかもしれませんが、間違いなく物語の中心は彼でした。

世界の破滅の危機を経て迎えた物語の結末。この作品の一読者として、これ以上感慨深いラストはなかったように思います。それは、4人のうちの2人の関係が変わっただけ、と言うようにも見えます。でも、4人はここから本当の意味で始まっていくことが感じられました。「わたしと、友達になってください」(P.264)と言う彼女の言葉が、何よりそれを象徴していたように思います。実に光に満ちた結末でした。

(あぁ、それと、私は観客だ。観客の望むものはいつだって決まっている。絶望なんてものを吹き飛ばすだけの演出を、私は期待しているよ)(P.162)

のゼファの言葉に象徴されるように、絶望を吹き飛ばすだけの演出と、エンディングが待っていました。まさに大団円と呼ぶにふさわしい展開で、ここまで読んできてよかった、と思わせてくれました。今度こそ心から楽しいと思える未来が、4人に待っていることを確信できるエンディング。大満足です。

作者の次回作に期待しつつ、今はその余韻に浸りたいと思います。

 

<既刊感想>

『テンプテーション・クラウン』/雪野静

『テンプテーション・クラウン 4』/雪野静


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