『吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる 1』/野村美月 [エンターブレイン]
(あらすじ)
演劇×吸血鬼! ドラマティック青春ノベル、開幕!!
バスケの強豪校で練習に打ち込んでいた詩也。けれどある日、彼は"人ではないもの"になってしまった……。人を遥かに超える身体能力を得たため、バスケも
続けられず転校したその先で、詩也はマリア様を思わせる綺麗な先輩に出会い、告げられる。「わたしと、おつきあいしてください」――つれていかれた先は演
劇部。そこで詩也は、何と先輩のパートナーとしてドラキュラを演じることになってしまい……!? ドラマティック青春ノベル、ここに開幕!!
文庫版はこちら。
吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる(1) (ファミ通文庫)
- 作者: 野村美月
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン
- 発売日: 2014/05/30
- メディア: 文庫
Kindle版はこちら。
(感想)が
多くの人間は、死というものを恐れるものでしょう。漫画の悪役が求めるものでも、死を恐れるからこそ、不老不死を求めるものものがあります。しかし、本当に不老不死が実現したとして、果たしてそれは幸せなことなのだろうか。中二病の私はそんなことを考えたりします。そして、この作品はまさにそこにスポットライトが当たった作品でした。そして、主人公の立ち向かい方があくまで人間的で、それを支えようとするヒロインが魅力的で、シリーズの出だしとしては最高と言っていいくらいのないようで、おもしろかったです。だからこそ、これまでの野村美月×竹岡美穂の文学少女シリーズ、ヒカルが地球にいたころ……シリーズ以上に、私がこのシリーズに対しての期待度が上がりました。
吸血鬼、というテーマは、割と扱われやすいテーマであると思います。同じレーベルだと、やはり傑作の『ヴァンパイア・サマータイム』がありますし、2013年にアニメ化された作品に『ストライク・ザ・ブラッド』があります。『ヴァンパイア・サマータイム』は、人間の主人公と、吸血鬼のヒロインの恋愛を描いた作品であり、『ストライク・ザ・ブラッド』は、吸血鬼の真祖の力を手に入れた主人公のライトノベル的ハーレムライフを描いた作品であります。
吸血鬼というテーマは、扱われやすいからこそ、違いを出すのが難しいように思います。それに対して、野村美月さんが出したのが、『永遠を手に入れてしまった主人公の苦悩と、それを乗り越えるための恋愛』だったのは、非常に興味深く感じました。
--永遠の恋を、はじめてみればいい。
--それは永遠に生き続ける者にしかできないことだ。(P.289)
この言葉が、まさにこのシリーズを表した言葉であると思いますが、非常におもしろい着想だなぁ、なんて思いました。
ふとしたきっかけから、永遠と人間離れした力を手に入れてしまい、大好きだったバスケットを捨てざるを得なかった主人公。ふとしたきっかけからその主人公と出会い、彼の苦悩に触れ、自分のできることで答えようとするヒロイン。この二人が、果たしてどんな答えを出していくのか。非常に難しいテーマでありますが、だからこそいったいどんな結末を準備するのか楽しみであります。
これまで、すばらしいシリーズを発表してきたコンビの新作だけに、楽しみで仕方ありません。 今年は、ライトノベルはさほど読めていないのですが、間違いなく今年出された作品でトップクラスにおもしろい作品です。
コメント 0