『CtG −ゼロから育てる電脳少女−／玩具堂

（あらすじ）

VRMMOゲーム「CtG（＝クレイドル・トゥー・ザ・グレイヴ）」で、春日井遊は初めてであった女の子ミーファと気楽に〈結婚〉する。でも娘のハルハが生まれて、まさかの子育てスタート!?　しかも「きたよ、おとーさん！」「く、釘宮です」　なんと現実世界にも、実物のハルハとミーファの中の人・釘宮美遥が登場！　実はハルハは極秘に創られた〈新人類（ハダリーズ）〉だったのだ!!

一つ屋根の下で暮らすことになった遊と美遥は、リアルとゲームの両方で、人類の未来を左右する（？）壮大なハルハ育成計画に巻き込まれて!?  

文庫版 

CtG ─ゼロから育てる電脳少女─ (角川スニーカー文庫)

• 作者: 玩具堂
• 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
• 発売日: 2014/09/30
• メディア: 文庫

 

 

 

 

 

Kindle版 

ＣｔＧ　─ゼロから育てる電脳少女─ (角川スニーカー文庫)

• 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
• 発売日: 2014/10/01
• メディア: Kindle版

 

（感想は追記にて） 

（感想）

第15回スニーカー大賞《大賞》受賞の玩具堂さん、実に2年ぶりの新作です。前作『子ひつじは迷わない』の良さは、読みやすい文章にの中で見せるラノベでなかなか見ないような語彙が心地よさ。それは本作も健在でした。

VRMMOで結婚したら娘が出来て、と設定自体見たら『ソードアート・オンライン』をイメージしました。表紙めくって最初のイラストがまた、キリトさんとアスナさんっぽいのがその印象を強くしているような気がします。また、ゲーム自体のイメージは、『.hack』シリーズを思い出しました。その後の話もゲーム内で生まれた人間「ハダリーズ」の暴走。ゲームプレイ中に意識不明に陥る人間の出現。明かされるCtG（クレイドル・トゥー・ザ・グレイヴ）の真実、とやはりこれまでたくさんあったオンラインゲームをテーマにした作品を想起させます。

私としては、「オンラインゲームを取り扱った作品は、どうしても未帰還者とか、ゲーム内の死＝現実の死のデスゲームという話になってしまうのかな」と考えてしまいました。新しい可能性はあるのかもしれませんが、現在はそれをどうアレンジしていけるかが腕の見せ所となりそうです。

本作独特な味付けは、CｔGというゲームシステムの設定と、主人公の強さの由来の部分。ゲームシステムの部分自体は目新しいものはない部分かも知れませんが、舞台の説得力を増すにはよい舞台装置だったと思います。それがなにげに倫理観さえぶん投げてしまいそうな大きな目的に繋がっているのも面白いと思います。

そして、何より興味深いと思ったのは主人公の強さの由来。考えてみれば、小狡いというか卑怯というか、印象は良くないかも知れません。キリトさんを正統派のハーレム主人公だとすれば、こちらは色物系の主人公といったところ。でも、こう言う主人公がいてもいいんじゃないかな？

ラノベのお約束、ラブコメパートを見ると、たまたまゲームで出会い結婚→同居することになった美遙と主人公の幼馴染みの冬風との三角関係になりそうです。この辺は、前作『子ひつじは迷わない』のような感じになるのではないか、と予想されます。ハーレム展開を期待すると、肩すかしになりそうです。ただ、元々作者の作品ってヒロインが「俺の嫁」と言われるようなタイプではないので（可愛いとは思うのですが、マニアックな面があるような感じ）、ハーレム展開は向かないかも知れませんね。

今回は美遙との関係が描かれたために、次の巻では冬風がCtGに乗り込んで、という展開になりそうです。いっそ、こっちも主人公と結婚してハダリーズが生まれたら面白くなりそうです。

売れているラノベと比べて飛び抜けている部分があるわけではないので、大ヒットは望めないかも知れませんが、出来れば末永く続いて欲しいな、と思う作品です。1巻打ち切りをやって来るスニーカー文庫のために油断はできないのですが。

結局は、自分が作者の書く作品が大好きなんです。