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『親友の彼女を好きになった向井弘凪の、罪と罰。』/野村美月 [集英社]

(あらすじ)

「弘凪!オレ、彼女ができた」親友の相羽遙平から打ち明けられた、高校一年生の向井弘凪。女の子にモテまくっても、特定の彼女を作らなかった遥平が誰かとつきあうのは、あまりに意外だった。遥平が彼女を作らないのは、中学生二年生のときのあの事件のせいではないかと、弘凪は責任を感じていた。そして、弘凪自身も女の子に好意を持つのを避けてきた。ちょうど弘凪には気になる女の子がいた。通学電車でよく出会うスケッチブックを抱えた名前も知らない女の子。遥平に彼女ができたらなと、弘凪はその子に勇気を出して話しかけてみようとするがーー。


親友の彼女を好きになった向井弘凪の、罪と罰。 (ダッシュエックス文庫)

親友の彼女を好きになった向井弘凪の、罪と罰。 (ダッシュエックス文庫)

  • 作者: 野村 美月
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 文庫

 

感想は追記にて。 

(感想)

個人的には、一時のライトノベルの盛り上がりが落ち着いてきて、私の住む田舎の方なんかはライトノベルの棚が縮小しているように感じていますが(本屋自体に元気がないせいかも知れませんが)、レーベルは相変わらず増えているような。そして、集英社が繰り出してきたのがダッシュエックス文庫というレーベル。その第1回配本の一冊をご紹介したいと思います。

この作品のポイント。それはまず、“文学少女”シリーズやヒカルシリーズの野村美月さんが、初めてファミ通文庫以外からリリースした作品、という所につきると思います。そんな本作。長いタイトルがまず目を引きます。ライトノベルですっかり定着した感がある、文をそのままタイトルにしちゃった感じでしょうか。『罪と罰』なんてのをタイトルにいれちゃうのが、いかにも作者らしいような気もしますが。

本作は、タイトルから分かるように主人公・向井弘凪とその親友・相羽遥平とその彼女・冬川古都の三角関係の行方が見所です。友情と愛情の二律背反がテーマ、という感じでしょうか。そのテーマ上、作品自体コメディ分はほぼなしの、シリアスな作品になります。全くない、という訳ではないですが、昨今のライトノベルの中にあって、珍しい作品かも知れません。

やっぱり譲れないものと譲れないものの間の葛藤、と言うのは面白いです。通学電車で一緒になる少女に惹かれる主人公。その子に話しかけようとしたとき、親友から彼女ができたと紹介される。その親友の彼女は、自分が惹かれていた少女。中学時代の苦い思い出から、少女をあきらめようとするものの、どうしても惹かれていってしまって。何とも王道です。だがそれがいい。

この1冊でキレイに完結している、と言うのもポイントが高いですね。260ページ程度の作品なのでさらっと読めます。読ませてくれます。そのページ数故に、物足りなさを感じてしまうのも事実ですが、それ以上に青春を感じさせてくれるラブストーリーを堪能できました。

ラストの展開なんか、あまりに王道すぎて、思わず苦笑いしてしまいそうになりました。でも、やっぱりこう言う展開が好きな自分は、昭和の人間なんだろうなぁ、なんて気がします。頭の中のイメージは、完全に「テイルズオブリバース」。

もしこの作品のイラストが、河下水希さんではなく、竹岡美穂さんだったら、と思わず考えてしまったのは、贅沢というものでしょうね。河下水希さんのイラストは素敵なんですが、やっぱり野村美月さんの儚い作品の雰囲気には、竹岡美穂さんのイラストが合っているように感じてしまいました。

一つだけ気になるのは、誤字。最後の最後、非常に盛り上がった場面で出てきた時は、思わず脱力してしまいました。こんなに脱力したのは、『KAGEROU』(最後の最後で名前間違っていて、上からシール貼ってたやつ)以来かも知れません。ただ、これは重版かかったらすぐ訂正されるでしょうし、問題ないと思います。

何はともあれ、おすすめ作品です。今のところ、ダッシュエックス文庫作品はこれ意外に『放課後アポカリプス』(杉井光)と『文句の付けようがないラブコメ』(鈴木大輔)を読みましたが、これを一番おすすめしたいところです。シリーズもの前提のラノベの中、単巻完結の良作、と言うだけでポイントが高いと思います。面白いものを読みたいな、という人は、手に取ってみてはいかがでしょうか。 


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