『柘榴パズル』/彩坂美月 [文藝春秋]
〈作品紹介〉
“あたしは自分の家族が好きだ。こんなこと云うとイタい娘って思われるかもだし、自分でも恥ずかしいヤツとかちょっと思うけど、いかんせん事実だから仕方ない”優しい祖父と母、しっかりもののイケメンな兄、そして甘ったれの妹に囲まれ、愛情ゆたかな日々を送る19歳の美緒。東京下町、昭和テイストな「山田家」をめぐる謎は、意外な展開を見せて、ひと夏の記憶をかけがえのないものに変えてゆく――。当たり前の幸福が切ないほど愛おしくなる短編連作集。
単行本
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/08/25
- メディア: Kindle版
感想は追記にて。
当ブログは彩坂美月さんを応援しております。
前作の『少女は夏に閉ざされる』が2013年発売だったので、約2年ぶりの、彩坂美月さんの作品になります。
私はこれまでの4作は読んでいます(デビュー作の『未成年儀式』は読んでいません)。その作品の印象としては、「面白いけど、もう一歩なにか足りない感じ」というものでした。そして、2年ぶりの本作を読んだのですが、「これは間違いなく、彼女のターニングポイントの作品となる」と感じました。気になる点はありますが、文句なく面白かったです。
テーマは家族だけど
祖父と母、兄と妹の5人家族の山田家。仲がよく幸せそうに見える家族が巻き込まれる小さな日常の謎を、兄が鮮やかに解決する中で、物語は意外な展開を向かえる、というのが本作です。そして、特徴的なのは、章と章の間に挟まれる不穏な事件の記事です。
深夜の住宅地で惨殺事件−−何者かが侵入、就寝中の一家を刃物で殺傷
どうかいつまでもありふれた幸福な時間が続きますように。(帯より)
帯からして、不穏な空気が漂っています。これによって、幸せな家族の風景を眺めながら、頭の片隅では一家惨殺事件を意識してしまうという構成になっています。
果たして事件の行方は。この辺は、このお話のクライマックスになるので是非読んで欲しいところです。最後は、私は久しぶりにぞくっとさせてもらえました。
エピローグについて
個人的には大満足な本作ですが、気になるところがあるとすればエピローグ。本作の展開として、落としどころとしてはここしかない、というのは納得はできます。ただ、やはりいきなり過ぎるかなぁ、という印象も結構強かったです。ここをどう思うかで、この作品の評価が大きく変わってくるような気がします。
終わりに
もう一つ気になるところがあるとすれば、お値段でしょうか。1685円+税=1782円と結構お高い。ちょっと買ってみようかな、と手を出せる金額ではない気がします。9月25日発売予定のKindle版は、1399円と若干手が出しやすい金額になっていますが、それでも高いかなぁ。かく言う私も、作者のファンだから購入したものの、「高いなぁ」と思ってしまいましたし。
作品としては、いいお話となっているので、是非多くの方に読んでもらいたいところです。こんな時に、値段は大切ですよね。最近帯の宣伝文句として利用価値が高まっていると個人的に感じている読書メーターでも、この記事を書いている2015年9月17日現在で感想・レビューが7件……。難しいところです。
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