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『ただ、それだけでよかったんです』/松村涼哉 [アスキー・メディアワークス]

〈作品紹介〉

第22回電撃小説大賞<大賞>受賞作! 

壊れてしまったこの教室で、一人ぼっちの革命がはじまる――

頂点に輝いた空前の衝撃作!!

 

ある中学校で一人の男子生徒Kが自殺した。『菅原拓は悪魔です。誰も彼の言葉を信じてはいけない』という遺書を残して――。

自殺の背景には"悪魔のような中学生"菅原拓による、Kを含めた4人の生徒への壮絶なイジメがあったという。だが、Kは人気者の天才少年で、菅原拓はスクールカースト最下層の地味な生徒。そして、イジメの目撃者が誰一人としていなかったこと。彼らの接触の証拠も一切なかったことなど、多くの謎が残された。なぜ、天才少年Kは自殺しなければならなかったのか。

「革命は進む。どうか嘲笑して見てほしい。情けなくてちっぽけな僕の革命の物語を――」

悪魔と呼ばれた少年・菅原拓がその物語を語り始めるとき、そこには誰も予想できなかった、驚愕の真実が浮かび上がる――。

圧倒的な衝撃、逃れられない感動。読む人全てを震わせ4,580作品の頂点に輝いた衝撃作。 


ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)

ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)

  • 作者: 松村涼哉
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2016/02/10
  • メディア: 文庫

 

感想は追記にて。 

実は、電撃文庫を読むのはかなり久しぶりになります。電撃文庫の電子書籍のラインナップも整ってきていたのですが、そもそも昨年は読む量が激減して、追っているシリーズしか手を付けていない状況でした。それでも読むのが追いつかなくて、積ん読にしているシリーズまで出てきています。アニメで面白かったものも原作に触れておこうとしながら、そのまま。

そんな調子で来ていたら、気づいたら電撃文庫に触れる機会がなくなっていました。しかし、いくらレーベルの勢いがなくなっているとはいえ(個人の印象)、電撃文庫作品を全く読まない、というわけにもいかんだろう、ということで、手に取ったのが、今回感想を書く『ただ、それだけでよかったんです』です。電撃文庫大賞〈大賞〉作品。そして、イラストが竹岡美穂さんと来れば、買わないわけにはいきません。ただ、竹岡美穂さんのイラストが好きなだけなのですが(^^ゞ

 

帯で鎌池氏が「油断はできない。」なんて書いているとおり、読者のミスリードを誘っておいて、真実で思い込みをひっくり返すところに妙味がある作品でした。ただ、帯のせいで読者も構えちゃうんで、それがもったいないかなとも考えるのですが。異世界でもないですし、異能ものないですし、俺Tueeeeもないですし、ハーレムもないですし、転生もないです。そういう意味では、地味な作品かもしれません。ただ、読ませるだけのものはあったかな。

これまでの電撃大賞受賞作品でいうと、『君のための物語』や『パララバ』系統かな、と。正直に言うと、これって電撃文庫というより、メディアワークス文庫に向いた作品ではないでしょうか。だから、もしかしたら、作者はこの後すぐにメディアワークス文庫の方で作品を出すかもしれません。

ただ、この作品のように「面白いけど、あまりライトノベルっぽい感じがしない作品」というのは、金賞をとって、よりライトノベルっぽい作品が大賞を取る、というイメージが私にはあります。実際、先に挙げた『君のための物語』『パララバ』は金賞だったわけですし。

これは電撃文庫が変わっていこうという意気込みの現れなのかなぁ、と感じました。「ここ数年電撃文庫大賞受賞作を読んでいないお前が言うな」という話ですが。

 

作品全体を見ると、拙いところはありました。自分が一番気になったのは、イジメで食べさせられたものが、ある場面では蝉の死骸、ある場面では蜂の死骸、そしてある場面では蝉の抜け殻だったことでしょうか。実際は、鉛筆を食べさせられたみたいですが。まぁ、この辺は、ネットの噂であったり、人の証言であったりするので、多少の相違はあるのかな、と納得できるのでしょうが。それを聞いている主人公の一人(イジメの真相を追っている)が、その違いに全く無頓着であるのはいただけないかな。

ただ、やはり作品の雰囲気は評価すべきポイントであります。そして、自分が一番いいと感じたのは、この作品のタイトルです。

『ただ、それだけでよかったんです』読者としては、「それだけというのは、なんだろうか?」という疑問を持ちながら読み進めるはずです。そして、最後にそれが提示されることで、すっと腑に落ちる感じ。同系統のタイトルの付け方がされたものとして、最近プッシュされているのが『君の膵臓がたべたい』です。あちらのタイトルにこめられた思いの強さに比べたら、さすがにこちらは落ちてしまうのですが、これはなかなか心地良いものです。 

思えば、少し前は文章系のタイトルライトノベル業界で猛威を振るっていました。そして今、このように読者を惹き付け、最後に納得させてくれるような、センスのあるタイトルの付け方をしてくる作品が出てきたことが面白いです。この後どうなっていくのかな、という楽しみもありますが、このようなタイトルの付け方って、1巻完結ものでしかできないですし、増えないかな。

何はともあれ、読んでよかった作品でありました。この作者がこのあと、どのように進むのかも楽しみである気がします。続けられないわけではないでしょうけども、これを続けてどうする?というところがあるので、次は新作になるでしょう。ここで、所謂ライトノベルっぽいのをもってくるのか。それとも、今回のような系統の作品で行くのか。メディアワークス文庫に行っちゃうのか。早川文庫JAという線もあり得ない話ではないかもしれませんね。

 

しかし、電撃文庫大賞の応募作、4580作品だったんですね。一時期に比べると少なくなってしまいました。これが栄枯盛衰ということでしょうか。確かに、今はネット小説からの出版、というのも活発ですし、賞レースに参加しなくてもいい、という所なのかもしれませんね。時代が変わっているのを感じるおっさんでした。 


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