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『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか? ♯05』/枯野瑛 [角川]

(あらすじ)

ヴィレムは約束を守れず〈月に嘆く最初の獣〉(シヤントル)の結界は崩壊した。正規勇者(リーガル・ブレイブ)の命と引き替えに長い眠りについていた幼い星神(ほしがみ)は、その余波で空魚紅湖伯(カーマインレイク)とはぐれ、記憶を封じられたびれむと共に仮初めの平穏な日々を過ごす。その日、〈穿ち貫く二番目の獣〉(アウローラ)が浮遊大陸に降り注ぐことになるまでは――。〈獣〉に対するのは、アイセアとラーントルク。死にゆく定めの少女妖精たちと青年教官の、終末最期の煌めき。次代に受け継ぐ第一部、幕。

 

文庫版


終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?#05 (角川スニーカー文庫)

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?#05 (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 枯野 瑛
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/03/31
  • メディア: 文庫

 

Kindle版



 

 

感想は追記にて。

3月末頃、Twitterで、ラノベの試読版に「本作には、ちょっと『ピンチ』になる描写が含まれます」という表記があった、というのを見かけました。出版社としては、ピンチが嫌いな人が読んで「この作品クソだ!」と拡散されないように、という次善策だったのかな、と考える次第ですが。2巻で一度打ち切りが決まっていたらしい本作の帯に、如何にネットで話題になってここまで来たか、というような情報が載せられているのを見るに付け(2015年 下半期ライトノベルTwitter杯 既存部門1位、など)、作品のヒットを考える上で、ネット対策は重要であるでしょう。

閑話休題。そんなことを見た後、この作品を読んだわけですが、所謂最近の読者の耐性っていうのも、私のようなおっさんが心配するまでもなく、意外と大丈夫じゃない?という気がしました。このシリーズで言えば、シリーズ累計15万部ということですし。他にも、私の読んでいる作品で思いつくのを挙げると、『灰と幻想のグリムガル』も『世界の終わりの世界録』も『踊る星降るレネシクル』も決してピンチにならないわけではないですし。『踊る星降るレネシクル』なんて、主人公が石化するわ、主人公が元に戻ったと思ったら、3人のヒロインが一斉に退場するわといった展開ですし。

閑話休題パート2。そんなわけで、1巻からタイトルに「救ってもらっていいですか?」とあるのに、救われない感漂っていた本作もついに5巻。第1部完です。

あらすじに、「時代に受け継ぐ第一部、幕」とあるように、一部で出てきた主人公とヒロインは幸せになれませんでした。作品の舞台的に、ハッピーエンドは無理ゲーではありましたけども。だからこそ、この巻でいったん幕を引き、幸せな結末を迎えられるように仕切り直す、というのはよい判断だったのではないでしょうか。

この巻については、この舞台の種明かしの面が強かったような気がします。黄金妖精とは何から生まれたのか。人間とは何なのか。終末の獣とは何なのか。だけど、それが全ては次の世代での幸せに繋がる可能性の提示に見えて、楽しく読むことができました。

また、もう一つ考えさせられたのが、ひとまずの平和を得た世界に起きたこと、でしょうか。私は、『宇宙のステルヴィア』を思い返していました。『宇宙のステルヴィア』では、セカンド・ウェーブ、そしてコズミックフラクチャーという危機に対して、全地球が協力して立ち向かいました。その後は、作中で迅雷先生が述べたように人類が全宇宙に散らばることで、人類の歴史が残せなくなるだろう、という結末が描かれました。しかし、世界の危機がなくなった後、もしも歴史が紡がれることになったら。

いわく、闘争は自然の摂理であり、全ての生命の宿命である。(P.84)

本編では、このように書かれていましたが、きっとこうなるだろうなぁ、というのをまざまざと見せられたようで、ちょっと暗い気分になってしまいました。

結末に関しては、1巻を読んだときに予想していた結末よりもそれなりのハッピーエンドが描かれたのではないでしょうか。1巻読んだ時点で予想された結末以上のバッドエンドを書く方が難しい気がしますが。『リセット』(北村薫)が大好きな私としては、とても満足行く終わり方でした。このラストで描かれた物語が、同時発売の『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?』に繋がるのでしょうか。まだそっちの方は読めていないのですが、俄然楽しみになりました。

次のシリーズがハッピーエンドで終わる、と期待がもてる展開です。期待が裏切られるかもしれませんが、そうならないことを祈りつつ、新シリーズを読みたいです。

2016年4月4日現在、本作の1,2巻電子版が、各電子書籍ストアでセールのようです。私が確かめたのは、Kindleと紀伊國屋だけですのであしからず。紀伊國屋では4月14日までとあるので、そこら辺までセールが続くのではないか、と予想されます。

この機会に、まだ読まれていないかたは是非とも読んで頂きたい作品です。暗い作品ですが、世界観を楽しめる作品です。 


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