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『この空の上で、いつまでも君を待っている』/こがらし輪音 [アスキー・メディアワークス]

〈作品紹介〉


応募総数5088作品の頂点に輝いた第24回電撃小説大賞《大賞》受賞作!

“将来の夢”なんてバカらしい。現実を生きる高校生の美鈴は、ある夏の日、叶うはずのない夢を追い続ける少年と出会う。
東屋智弘。自分とは正反対に、夢へ向かって一心不乱な彼に、呆れながらも惹かれていく美鈴。しかし、生き急ぐような彼の懸命さの裏には、ある秘密があって――。
「死んででも見たい何かって、あるんじゃないかと思うんだ」
少年が守り抜いた約束と、奇跡の結末に触れたとき、再びページをめくりたくなる。
夏の日を鮮やかに駆け抜けた、一つの命の物語。


この空の上で、いつまでも君を待っている (メディアワークス文庫)

この空の上で、いつまでも君を待っている (メディアワークス文庫)

  • 作者: こがらし 輪音
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/02/24
  • メディア: 文庫
この空の上で、いつまでも君を待っている (メディアワークス文庫)

この空の上で、いつまでも君を待っている (メディアワークス文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2018/02/24
  • メディア: Kindle版

感想は追記にて。
おすすめ度 1/5点


お久しぶりのブログ更新になります。日々の仕事と、仕事終わりのネットサーフィンにかまけて、あまり本を読めていませんが、ぼちぼち読んでいこうと考えていますので、ブログの更新も頑張りたいと考えています。


本日紹介するのは、『この空の上で、いつまでも君を待っている』。第24回電撃小説大賞大賞受賞作になります。それがメディアワークス文庫から出る、というのは、メディアワークスが会社として、電撃文庫とメディアワークス文庫に力を入れていくことを表しているのかな、なんて考えます。


本作は「誰だって最初は、こんな幸せな物語を求めていたんじゃないか」という三秋縋さんの推薦文が帯に掲載されています。それに釣られてついつい買ってしまいました。結論として、まんまと騙されてしまいました。


この物語、すべての失敗は結末部分にあるような気がします。前半部分は周りの人間をバカにしていて、自分のバカさに気づいていないヒロインが、夢に向かってひたむきに努力する少年に出会うことによって変わっていく物語として見れば、主人公に対する共感できなさを差し引くとしても、なかなか読める物語ではないでしょうか。文庫本にしては若干大きめのフォントが目に優しく、どんどん読み進めることができますし、読書に不慣れな中高生が読むのにもいいのではないでしょうか。


そして、物語の転換点。正直予想どおりの展開ですが、それが悪いと言うこともないでしょう。携帯小説のフォーマットで書かれている印象を強く感じますが、まぁよく言えば王道の展開で安心して読めます。エピローグの展開は、まさに王道ですよね。色々突っ込みたくなる部分がありますが、あくまでフィクションです。突っ込むのは野暮というものでしょう。フィクションを楽しみましょう。


しかし、この色々突っ込みたくなるようなエピローグ序盤が、この物語の良さを失っていく序章にしか過ぎなかったのとは、私も想像しませんでした。


エピローグ中盤。いきなり始まるSF展開。これまでそんな気配が全くなかったのに。これまでの展開はよくも悪くも青春小説といった趣だったのに、いきなりSF。


ただ、この展開は、アニメやゲームに慣れ親しんでいる人にとっては受け入れやすい展開ではないでしょうか。全く予想できない展開、というわけではありませんし。私は予想できませんでしたけど。ここで終わっておけば、「ああ、素敵な物語であった」と私も終えることができました。


ここからの展開がいけません。最後の最後の展開、これはハッピーエンドのための茶番。ご都合主義の塊です。この物語のこれまでの展開をすべてぶちこわしてあまりある、最悪の展開です。それは、こういうのに感動できる人もいると思います。展開だけ見れば、ハッピーエンドでありますし。ただ、そこに至るまでの過程が、作者の力業というのは、読者としては冷めてしまいます。


ここまで読んでしまうと、突然のSF展開は、このエンディングを導くために都合良く使われただけにしかみえません。別に私、SFの熱心なファン、という訳ではありませんが、こんな真摯さにかける態度でSFを使われては、不快感さえ感じます。作者は、SF考証に応えるつもりはあるのだろうか、そう感じてしまいました。少なくとも、時間を取り扱う以上として、作者はどのように解釈したのか、タイムパラドックスはどう考えているのか、疑問に感じます。


対象の読者層ではない、といわれたらそれまでではありますが、普通の大人が読むと、あまりにも都合のよすぎる展開に、ライトノベルというもののレベルの低さを認識してしまうものになってしまいかねないでしょうか。これ、応募総数約5000作品の頂点なんですから。


確かに、電撃大賞の大賞受賞作品は、一般的に受けそうな作品を選ぶ傾向にある、とは聞いたことがあります。何年も前(10年以上前かも)の知識なので、今はどうかわかりませんが。その作品としてこれを選んだ出版社の、そして、審査委員のセンスを疑ってしまうます。


もっとも、この最後の展開、もしかしたら出版社側の要請に応えて変更した、と言う可能性もあります。その場合、出版社のセンスのなさを疑ってしまいますし、昨今の電撃文庫の凋落ぶりにも納得できます。もしも、これが作者が描いたとおりの展開なら、作者はもう少し物語について考えるべきであると、担当編集が言わなければならないでしょう。「感動させるため」の安易な展開では、読者は感動させられません。


帯には「一読目は切ない涙 二読目は温かい涙があふれだす」なんて書かれていますが、こんな物語、一読で十分です。そして、泣けません。これで泣けると信じているならば、出版社は読者を見くびりすぎです。


期待して読んでいただけに、最後の展開の酷さ故、辛口になってしまった側面は否めません。ただ、私はこの作者の次回作を手に取るか、といわれると、ノーです。返す返すも、最後のご都合主義がなければ、と考えてしまいます。作者はもう少し、読者を信じるべきですし、100%のハッピーエンド以外を書く覚悟を持つべきでしょう。

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