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『夏服パースペクティヴ』/長沢樹 [角川]

あらすじ

廃部寸前の都筑台高校映研の部長・遊佐渉は、映像制作に秀でた後輩の樋口真由とともに、夏休みを利用して行われる映像制作合宿に参加するが……現実と虚構の狭間で繰り広げられる惨劇に、若き探偵が挑む!(角川書店ウェブページより)

夏服パースペクティヴ (樋口真由“消失”シリーズ)

夏服パースペクティヴ (樋口真由“消失”シリーズ)

  • 作者: 長沢 樹
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/11/01
  • メディア: 単行本

 

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『メイド様の裏マニュアル トラブル1:俺より強くなった場合』/高木敦史 [角川]

(あらすじ)

役立たず御曹司と暴走メイドの主従逆転の異世界クエスト!

ある夜トージは一族繁栄のための使命を知る。それは神が創った異世界で様々なトラブルを解決すること。ところがいざ異世界に行くと、使えるはずの特殊能力がドジッ娘メイドのツギハに与えられていて!?(スニーカー文庫ウェブページより)

メイド様の裏マニュアル    トラブル1:俺より強くなった場合 (角川スニーカー文庫)

メイド様の裏マニュアル トラブル1:俺より強くなった場合 (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 高木 敦史
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/10/31
  • メディア: 文庫

 

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『あるゾンビ少女の災難Ⅰ・Ⅱ』/池端亮 [角川]

(あらすじ)

美少女だけどゾンビなので残念!なユーフロジーヌが目覚めたのは、大学の地下資料室。未だ寝ぼけ眼の彼女に、メイドのアルマは容赦なく告げる――「お嬢様、学生たちを殺して"秘石"を取り返すのです」と!(1巻)

いやいやながら学生たちを殺し始めるユーフロジーヌだが、眠っていた100年の間に人類文明は劇的に発展していた。どS美少女中学生の眞子の指揮のもと、学生たちによる決死の、そして残酷な反撃が始まる!(2巻)(どちらも、web KADOKAWAより)

あるゾンビ少女の災難 I (角川スニーカー文庫)

あるゾンビ少女の災難 I (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 池端 亮
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/06/30
  • メディア: 文庫
あるゾンビ少女の災難 II (角川スニーカー文庫)

あるゾンビ少女の災難 II (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 池端 亮
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/06/30
  • メディア: 文庫
あるゾンビ少女の災難

あるゾンビ少女の災難

  • 作者: 池端 亮
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/09
  • メディア: 単行本

 

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『子ひつじは迷わない 騒ぐひつじが5ひき』/玩具堂 [角川]

(あらすじ)

子ども扱いしないでください!
“お悩み相談祭”と化した文化祭で、メイド服姿の佐々原や“なるたま”が大変なことに!


“ひつじ”ならぬ“しつじ”喫茶で文化祭を盛り上げる「迷わない子ひつじの会」。会長の執事服姿やら佐々原のメイド服やらに浮かれる“なるたま”こと成田 真一郎(なるたまいちろう)だったが、伝説の必殺剣の正体、『々人事件』なる奇妙な小説の謎など、隣部屋の“毒舌ツンダラ名探偵”仙波を巻き込んでのお悩 み相談も相変わらず大忙し! ワケあり女子たちに翻弄されまくる“なるたま”のおせっかいぶりに、佐々原がついに覚醒する――って、何に!?  (角川書店ウェブページより)

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『マツリカ・マジョルカ』/相沢沙呼 [角川]

(あらすじ)

柴山祐希、高校1年生。冴えない学園生活が、彼女ーーマツリカと出会い一変した。「柴犬」と呼ばれパシリ扱いされる憤りと、男子的モヤモヤした感情の狭間で揺れながら、学園の謎を解明する、ビタースイートなミステリ!(新刊紹介より)

(感想)

私が個人的にとても楽しみにしている作家様の一人、相沢沙呼さんの新作登場です。前作『ロートケプシェン、こっちにおいで』が11月発売でしたから、わずか3ヶ月でのリリース。嬉しい限りです。内容も非常に満足でした。これまた、最後で完全にやられたなぁ、と言う印象でした。

本作は、日常の謎の系列に属するミステリですが、個人的にはミステリは味付けかな、と言う印象でした。どっちかというと、『“文学少女"』シリーズを彷彿とさせるような、マツリカの鮮やかな想像。それが果たして正解かどうか、最後まで明示されない構成は、個人的にはアリだと思いますが、ミステリファンから見たらどうなのかなぁ、という気がしました。

それよりも個人的に面白かったのが、主人公である柴山祐希の成長かなぁ、と思いました。始めは、なんだかうじうじしている彼。対人恐怖症の気すら感じさせる彼の心情が、たまたま廃ビルで出会ったマツリカとの出会いで変わっていく。これが非常に興味深く感じました。

人とどう話していいか分からない。相手とどんな会話をしたらいいか分からない。どう受け答えをしたらいいのか。そんな思いに縛られてがんじがらめになってしまい、人と関わることができない主人公。私も少なからずそう思うことがあるので、彼の思いに痛々しさを覚えながらも、どこか共感を覚えてしまいました。

そんな彼が、廃ビルに住んでいる、と言う、どことなく現実離れしているマツリカと出会います。彼女に指令を与えられることだけに居場所を感じていた主人公。しかし、そのうちに自分の弱さを認めていき、人と関わることができるようになる成長の過程が非常にすがすがしく、読み応えがあり、面白かったです。

そして、ミステリ部分ですが、最後の最後に大きいのが待っていましたね。それまでの3編の謎に関しては、さほど驚きは感じていませんでしたが、ラストは凄かったです。最近読んだミステリは、最後の最後に作品にひたすらふせられていた謎が一気に表面化することで、大きな驚きを与えるものが多い、と思っていましたが、この作品でもありました。『ロートケプシェン、こっちにおいで』では多少わかりにくいなぁ、と感じていたものでありますが、この作品では非常にわかりやすかったです。すっとその驚きが入ってきて、大きく心を揺さぶられると言う感じでした。

謎が分かってしまうと、主人公の病的なまでの人に接することへの恐怖感。その原因となった過去。それが「そういうことだったのか」と納得してしまう力がありました。この展開は実に鮮やか。

主人公の性格故、どことなく暗いイメージがある作品でしたが、ラストはまばゆさがあふれるようなラストで、これまた大満足。まぁ、多少の物足りなさを感じないでもないですが。ただ、展開からこれで良かったのかな、と。あの出会いはきっかけに過ぎず、これからまた新しい世界を作っていく。それもまた一つの選択だと感じました。

主人公の成長、物語に秘められていた謎と満足度が高く、非常に面白い作品でした。だからこそ、もう少しこの作品世界に触れていたかったなぁ、と贅沢なことも思ってしまいました。マツリカさんに関しては、確たることが分からないまま終わってしまいましたし。「古典部」シリーズが角川にはありますが、それと同じように続いて欲しかったなぁ、と。3部作くらいにはできたのではないかなぁ、と思ってしまいました。

ただ、非常に綺麗に終わっていたのでこれはこれで正解なのだろう、と思います。お値段もお手頃ですし、表紙も素敵ですし。何より、青春の苦しさとそれを乗り越える、と言う良さを感じられる、良質な作品でした。おススメです。

マツリカ・マジョルカ

マツリカ・マジョルカ

  • 作者: 相沢 沙呼
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/03/01
  • メディア: 単行本

 


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『子ひつじは迷わない うつるひつじが4ひき』/玩具堂 [角川]

(あらすじ)

”なるたま”こと成田真一郎と佐々原は,会長命令で一緒に泊まり込みアルバイトにやってきた。そこは”万鏡館”という名前とは裏腹に一切鏡がなく,中も外も全て白と黒で統一された不思議な世界。なぜかそこから仙波も現れーー!?館の主人である美少女が「鏡を見る」ことを禁じたワケは?そして彼女の不可解な言動に隠された一族の秘密とは!!抜け出せない館で次第に疑心暗鬼に陥る子ひつじたちを救うため,仙波が館の謎に挑む!!(裏表紙より)

 

(感想)

今回は,いつもと違い舞台は学校の外。古くから続いた名家・寄絃家の別荘・万鏡館。そこで待っていたのは,非現実的な世界。そこに秘められた謎。展開も,いつもと違い,万鏡館の名前に秘められた謎を解く,と中心を貫く大きな謎が一つと,なるたまたちを試すための小さな謎が一つと,長篇の趣でした。

何から何までいつもと違う描かれ方をしているためか,いつもと違う『子ひつじ』の世界が描かれていた,と言う印象を受けました。謎自体,いつもだったら,ちょっとズッコケてしまうものがありつつ,と言うイメージがあります。しかし今回物語を貫いていた謎は,どこか幻想的な印象を受けました。

そこにあるのは,理論的には非常に固い,概念的で抽象的な印象。それが,物語全体の幻想的な印象を生んでいたのだと思います。似たような事象を物語の芯に据えたライトノベルがありました(オチについては,違ったものでした)。その作品に比べて,こちらの作品の方がよりミステリアスな感じがしました。「ライトノベルだから,このことを堂々と取り扱えるよね」と思えるもので,「ライトノベルレーベルから出版されている」と言う事を最大限に生かしたないようだったと思います。

キャラクターでは,物語の内容に合わせてか,佐々原の気持ちに大きな変化が生まれているように見えたのが印象に残りました。いつも以上に,なるたまの言動に嫉妬をしていたように感じる展開でした。そして,さらに松宮に投げかけられた言葉から,自分となるたまの関係を改めて見返している,と言うのが,今後の展開にさらなるうねりを生みそうだ,と感じました。

さて,帯で「仙波がついに『デレ』る!?」と書かれていた仙波の方は,いつもとあまり変わらないような印象を受けました。しかし,相変わらず,なるたまの方に意識が向いているところが,いつも以上にその度合いが強くなっているような印象。

そして,なるたま。3巻で両方とも気になる!と言うところでしたが,印象としては佐々原は仲間。そして仙波が気になる女性,と言う印象を持ちましたが。この館に来たことで,やはり彼も自分のあり方を考えたようですが,彼の場合は変わることはなさそうな感じがします。二人への好意については,まだまだどちらにも転ぶようですし,一体どう転がっていくのか,が注目です。

さて,次の巻では舞台を学校に戻すようです。ただ,今回の長編の印象が良かったですし,また長編を読んでみたいな,と思いました。迷わない子ひつじたちがどの方向に向かっていくのか,次も楽しみです。


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『消失グラデーション』/長沢樹 [角川]

(あらすじ)

とある高校の男子バスケ部員椎名康は、屋上から落下した少女に出くわす。しかし、その少女は目の前から…消えた!? (角川書店ウェブページより)

(感想)

第31回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作。例によって、chokusinさんのおすすめのツイートを見て興味を引かれたのですが。ネット書店では軒並み在庫なし。私の田舎のTSUTAYAなどにも(当然のごとく)置いてありませんでした。一念発起して、紀伊國屋まで足を運んでみると、平積みしてあり、無事購入することが出来ました。やはり、1ヶ月に1回は大きな書店に行かないと駄目だなぁ、とどうでも良いことを考えた、関係ない話。

ジャンルは、青春ミステリになるのでしょうか?とはいえ、爽やか、という感じはしませんでした。冒頭の展開からは、ダーク、というか爛れた青春、という印象を受けました。先日読んだ『午前零時のサンドリヨン』が陽の作品ならば、こちらは陰、という感じがしました。

さて、この小説審査員の綾辻行人さん、北村薫さん、馳星周さんが絶賛、と言う帯がつけられていました。これを見ると、さぞ凄いトリックがあるのだろう、と言う感じがします。そして、この作品のメインをなすのが、タイトルの「消失」の部分に当たる謎だと思うのですが。ハッキリ言うと、そちらはあまりたいしたことありません。期待しすぎると、肩すかしを食らう感じがするかも知れませんし、「ご都合主義に過ぎる」と感じる人がいるかも知れません。

では、この物語の何が審査員を惹き付けたか。それは「グラデーション」の部分だと思います。あまり言い過ぎると、本編の楽しみがそがれてしまいますので多くを語ることは出来ませんが。完璧に構築された展開から明かされる衝撃の真実。その真実に驚嘆すると共に、思わず舌を巻いてしまう、という感じでした。そう、「誰もが疑うことがなかった(出来なかった)部分」。そこに密かに、そして巧妙に作者は罠を張っていたのです。作者の確かな筆の力を感じさせられる部分でした。

私の印象ですが。中盤までは、実はさほど「面白い」と思っていたわけではありません。ただ、何となく惹き付けられるものを感じる、という程度でした。ただ、後半。物語に秘められた罠に気づいたとき。私はこの作品に魅せられてしまいました。そう、この作品は確かに「面白い!」のです。この一瞬の驚愕のために、この物語はあった、といっても過言では無かったと思います。そこに気づいたとき、私はもう十分満足していました。

ここからは、個人的な意見。読書メーターを見ていると、「ライトノベルっぽい」という意見もちらほら見られました。しかし、ライトノベルどっぷりの私から見ると、あまりライトノベルっぽさを感じる事はできませんでした。キャラクターの造形にそれが感じられた、というのが多かったような印象ですが。たしかにうっすらとそれらしいものは感じられます。ただ、ライトノベルになると、もっとキャラクターはテンプレートになると思いますし、個性が強調されるような気がします。私としては、そこまではなかったと判断しました。

ただ、『午前零時のサンドリヨン』しかり、この『消失グラデーション』しかり。ライトノベルっぽい、といわれる作品が文学賞を受賞し、世に出ているのは面白いことだと感じました。二つとも、審査員に北村薫さんが入っているので、北村薫さんの趣味かな?と思ったりもしますが。

とはいえ、他を見ても、有川浩さんの活躍。ライトノベルから出発して、一般文芸で活躍してる作家さんが増えていること。また、ライトノベル内でも、一般向けのにおいを感じさせる作品の増加。これらを見るに、一般文芸とライトノベルの壁は厳然として存在はしているものの、その高さが低くなっているような印象を受けます。有川浩さんは、「大人のライトノベル」を描きたい、という気持ちがあるようですが、実際に大人に「気軽に読める文学」を求める人が増えているのかな?と思いました。

また、この作品が「横溝正史ミステリ大賞」としては疑問、という声も見られました。確かに、本編のトリックから判断すると、その声が出るのも分かるのですが。ただ、私としては受賞に賛成です。というのも、この作品は確かに「面白い」のです。この作品、埋もれてしまうにはもったいない。そして、もし受賞によってこの作品がより多くの人の目に触れる可能性が増えるのであれば、私は受賞させるべきだと思いました。このことが、出版業界の明日に繋がっていくのではないかな?と偉そうに思いました。

あまりに見事な作品。ヒカルくんをうまく使えば、シリーズものとすることも出来そうな感じがしましたが。何はともあれ、またまた新作が楽しみな作者が増えたことが喜ばしい限りです。物語の特性上、実写化は不可能でしょう。ある意味、活字でこそ楽しめる作品だと思います。活字で読む楽しさが感じられる、そんな素晴らしい本でした。

消失グラデーション

消失グラデーション

  • 作者: 長沢 樹
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/09/27
  • メディア: 単行本

 


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『子ひつじは迷わない 回るひつじが2ひき』/玩具堂 [角川]

思った以上に1巻のことを覚えてなかった(^^ゞ それはともかく,かなり楽しい作品でした。これは良いシリーズになりそうです。

子ひつじは迷わない  回るひつじが2ひき (角川スニーカー文庫)

子ひつじは迷わない 回るひつじが2ひき (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 玩具堂
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/01/29
  • メディア: 文庫

生徒からの悩みを聞き,解決へと導く「迷わない子ひつじの会」。実績が伴って,信頼度が上がっているその会に,今日も悩みが寄せられる。しかも,今度は学校の生徒ではない人や,先生からも。恋愛成就のための試練。オムライスが殺しを呼ぶ怪事件。ソフトボール部退部問題。生徒会書記・成田真一郎と同じく書記・佐々原三月は,今日も会議室隣の住人・仙波明希の助けを借りて,相談者を迷わせないために,奮闘するのだった。

 

今回は,3つの相談からなっていました。1巻が4話だった,と見て「あれ?そうだったかな?」と思ったのは秘密w3話のうちの2話がミステリテイスト,1話が三月の成長のための物語,という感じでした。ミステリの話にしては,相変わらずミステリかな?という感じでしたが。解決も,推理と言うより,推測,と言う印象。ただ,ライトノベルでそんなに本格的なのを求めているか,と言われるとそうでもないと思うので,これはこれでありかと思います。

ただ,その分ひねりがとても効いていたと思います。1話目はまさかの国語のテスト登場。その解答法がなかなか興味深かったです。ただ,この解答法のテストが出たら,生徒から非難が殺到しそうですが。ただ,一度だけ,しかもこういう状況であれば面白いなぁ,と感じました。しかし,彼女の愛情はなかなか歪んでいるようでwただ,二人とも幸せそうなので良いなぁ,と思いました。なれそめとか,二人の築いてきた関係とか,なかなかドキドキさせて貰いました。

ただ,この作品の一番の魅力は,個性的なキャラクター。そして,主人公・なるたまこと成田真一郎を巡る二人の少女の揺れる心境だと感じました。これが最高にドキドキするんですよね。特に,一筋縄ではいかない登場人物,仙波明希の心情が個人的には凄くツボでした。他の人と距離を置いている明希にとって,自分がお節介であると分かりつつ真一郎は正反対の人間。自分には受け入れられない人物なのだけれども。でも,排他的態度で接していても,それでもかまわずに自分と接しようとする真一郎のペースにいつの間にか飲み込まれているところとか,ちょっと意識してしまっているところとか,最高に可愛らしかったです。で,私が変わり者好き,と言うのもあるのですが,少し変わった性格なのも好印象。嫌いなタイプなんだけども,無視したいんだけども意識してしまう,と言うところが,私の中でストライクでした。

そして,もう一人のヒロイン・佐々原三月。こちらは,他人とどう接して良いか分からないものの,昔自分を救ってくれ,また今となって救ってくれた真一郎に憧れ,彼にようになりたいとする姿は実に応援したくなりました。他人に対して不器用なんだけども,それでも積極的に関わろうとする姿が良いんですよね。そして,真一郎を思うが故に,彼に近づく女性がいると不機嫌になるところとかがまた可愛くて。それ故に,今は良好な関係を築いている明希と,真一郎を争うライバルとして向き合った時にどうなるか,と気になります。

そして,周りの登場人物も相変わらずの素敵なキャラクターをしていて,物語を楽しくしていました。羊の皮を被った生徒会長・竹田岬。くせ者の文芸部部長・東原史絵。そして,1巻ではラストにのみ登場し,この巻から本格的に参戦した明希の妹。特に,妹のキャラは強烈で,美味しいところを持って行ってくれたなぁ,と思いました。3話の活躍はもうwww

話ごとのスタイルも完成されていますし,これはなかなか面白いですし,素敵なシリーズになりそうな予感がします。スニーカー,今はかなり落ち目ですが,着実に良い作品が出ているのはさすがは古豪,と言うところでしょうか。今後も期待したいシリーズです。

しかし,2010年デビュー組の実力の恐ろしきことw『空色パンデミック』の本田誠さん。『ココロコネクト』シリーズの庵田定夏さん。『変態王子と笑わない猫。』のさがら総さん。メディアワークス文庫で活躍する野﨑まどさん。そして,この玩具堂さん。読んでないですが『B.A.D.』の綾里けいしさんも評判が良いですし。今後の活躍次第では,花の2010年組,と呼ばれそうな予感もして,今後の活躍が非常に楽しみです。


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『ヒマツリ ガール・ミーツ・火猿』/春日部タケル [角川]

第15回スニーカー大賞,初代<ザ・スニーカー賞>受賞作。

ヒマツリ  ガール・ミーツ・火猿 (角川スニーカー文庫)

ヒマツリ ガール・ミーツ・火猿 (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 春日部 タケル
  • イラスト:も
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/11/30
  • メディア: 文庫

しゃべる猿のぬいぐるみ・サンジュとクラスドジな女子高生・花村祭。ある日,友だちが寮に帰ってきていない,との連絡を受けた祭は夜の町に飛び出す。しかし,彼女が遭遇したのは,人間の環力を吸う怪異の存在に出会う。絶体絶命の危機に見舞われる祭。その彼女を助けたのは,サンジュの中に封印された五忌獣の一人「火猿」だった。
危機を乗り越えた祭。しかし,それは前触れに過ぎなかった。祭の前に現れる敵。人間界を舞台に,二つの異世界の住人の繰り広げる激しい戦いに巻き込まれて行く祭。果たして,戦いはどうなるのか。

 

作者あとがき曰く,コンセプトは「ひたすら少年漫画」だとか。なるほど。個人的にも,読んでいて今は滅多に見られないような,古き時代の少年漫画,という感じを受けました。読んだことないので分かりませんが,『とある魔術の禁書目録』が,往年のジャンプ漫画的展開で人気を博している,と聞いたことがありますし,この「少年漫画的展開」というのは,一種のTrendなのかも知れませんね。

個人的には,最初の方は若干辛かったです。個人的に「粗暴」の印象を受けるキャラは苦手なのですが,サンジュがひたすらこの特徴に当てはまってしまって。祭に対して,汚い言葉を投げるところがあまり好きになれませんでした。ところが,

「あのな,こんなんでも祭(こいつ)一応女なんだよ・・・・・・」
(中略)
「顔に傷つけてんじゃねぇっ!」(P.59)

これですべて許せました。最初から,何となく感じてはいたのですが,サンジュは口は悪いけども,祭のことを確かに思っているんだなぁ,というのがしっかり分かったので。それが分かったあたりから,祭がサンジュを大切に思う気持ちと,サンジュが祭を大切に思う気持ちがハッキリと描かれる場面が増えて,さらに楽しむことができました。良いですよね。このお互いがお互いを必要とする感じ。決して,共依存,と言う訳ではなく,しかし,お互いがお互いを欠くことができない,という感じでした。私が一番この物語で楽しめたところは,この二人の信頼関係だったりします。もう,最後の火猿の言葉,祭の言葉がかなり心にしみました。ちょっと涙ぐんだりw

バトル展開は。読書メーターの感想なんか見ると結構指摘されていましたが,気になる点も多々。500年以上生きてきて,人間界では十分に力を発揮できないと理解できていない鬼,ってのはどうなんだ,とか。戦いについても,結局より怒った方が勝ち,みたいな展開だったかなぁ,と感じました。そこはちょっと残念でした。鬼の設定は,もう少し考えておいて欲しかったなぁ,と。バトルの展開は,今後の課題かな?

ただ,バトルのボリュームとしてはなかなかよかったと思います。内容的には,よくある異能ものなのですが。火猿の能力が,奇をてらうことなく,ただの炎,と言うのがよかったですね。やはり,主人公の能力はシンプルイズベストだと思います。その中で,色々工夫がある方が楽しいと思います。

物語としては,キレイに終わっていて,このまま終わっても良いのかなぁ,と言う印象を受けました。大賞の『子ひつじは迷わない』があからさまに2巻への引きで終わっていたので,これは意外。とはいえ,気になる伏線は入れていますし,ココで終わらないでしょう。あとがきでも,2巻の準備があるみたいに書かれていますし。この辺は,売り上げ次第,と言うことでしょうね。気になる点はあるものの,面白い作品だと思いますし,是非とも続きが出て欲しいと思います。


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『子ひつじは迷わない 走るひつじが1ぴき』/玩具堂 [角川]

第15回スニーカー大賞「大賞」受賞作。昨年は,久しぶりに大賞が出た!とやっていたのですが,もう1年経ったんですね。あの作品,買ったは良いけど読んでませんがw


子ひつじは迷わない  走るひつじが1ぴき (角川スニーカー文庫)

子ひつじは迷わない 走るひつじが1ぴき (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 玩具堂
  • イラスト:籠目
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/10/30
  • メディア: 文庫



今年の生徒会選挙で公約された,生徒の悩みを解決に導く「迷わない子ひつじの会」生徒会1年書記であり,会のメンバーである成田真一郎(なるた・まいちろう)は,会の最初の相談を解決しようとする中で,同じ一年生デセイと改質の隣の資料室を読書の隠れ家としていた仙波明希(せんば・あき)と出会う。毒舌で真一郎を攻撃する明希だったが,彼女の予想は見事的中。最初の悩みを解決することができた。
そのことが評判になり,「迷わない子ひつじの会」は盛況。困ったときは仙波に相談,で生徒たちの悩みを解決していく「迷わない子ひつじの会」の今後は?

なんと言うか,あらすじが書きにくいw

正直ですね,表紙からしてちょっとお色気もあるよ,なラノベだと思っていたのですが,全然違いましたwと言うか,表紙見ただけの時は,「大賞」受賞作品だと思ってなかったですwそして,デビュー作にもかかわらずコンプエースでコミカライズ決定。そして,仙波明希役に,今をときめく竹達彩奈さんを迎えてドラマCD決定,とものすごい勢いでメディアミックス攻勢をかけています。こりゃ,角川アニメ化までもくろんでいるな,という感じですが,それも納得の作品でした。いや,個人的にものすごく好みでした。面白かったです。

ジャンル的には,学園を舞台にした日常のミステリ。この前読んだばかりの気もしますがwとは言っても,ミステリと呼んで良いかは疑問ですが。一応,ヒントで謎は解けます。

メインキャラクターは,主人公の成田真一郎。同じく生徒会1年書記の佐々原三月。そして,幽霊文芸部員の仙波明希です。物語は,この3人の視点を入れ替えながら,一つの相談を解決していく,と言うスタイル。そして,本作では三つの相談を解決します。

まぁ,相談とその解決については,多少強引だなぁ,と思う点もありますがなかなか楽しめました。で,本作の魅力はそこではなくwとにかく,3人のトライアングルだと思いました。

主人公の成田真一郎は,とにかく人に関わろうとするお節介な奴。最初の相談では,真相が分かっていて,しかし相談者のことを考えて嘘を教えるようなお節介。正直,人間的には好きになれそうにないですが。ただ,自分の分を理解しながらも,それでも誰かが救われるなら,とあがく姿は,物語においては必要な資質ですし,この作品の中では有効に機能していたと思います。ただ,自分の周りにいたら。やっぱり迷惑だろうなぁw

仙波明希と佐々原三月は他人と少し違っていて,相手に理解してもらえないだろう,と考えているところは共通。ただ,それに対する対処の仕方のベクトルが違っています。仙波明希は,相手に迷惑をかけるから,と他人を拒絶し,佐々原三月は,他人を理解しようと距離を置きつつ関わろうとします。それ故に,親しい関係になってきているようです。

仙波明希は相手を遠ざけようとするので,毒舌だったりするのですが,この毒舌が微妙に好みだなぁ,と思いました。不快になる人もいそうですが。ただ,他人を拒絶しようとしている割には,相談にはちゃんと乗ってあげたりするところは良い奴だなぁ,と感じました。

佐々原三月は,一瞬「千愛ちゃん?」とも思いましたが。積極的になろうとしてやらかしちゃうところとかは,いかにもだなぁ,と感じました。まぁ,事が事だけあってさすがにあれを同情的に見ることはできませんでしたが。ただ,そうやって過去の自分を救ってくれた人にあこがれて,変わっていこうとする姿は良いなぁ,と思いました。

展開からして,今後はこの3人による恋の波乱が巻き起こりそうです。今のところ,真一郎の好意は拒絶され,三月の好意は気づいてもらえず,明希の好意はどこにも向いていなさそうです。さて,果たしてどの恋が結びつくのか,非常に楽しみなところです。

この3人の魅力に引き込まれ一気に読了することができました。途中で,理解のルビに「トレース」とあったり,やたら出てくる驚きの「ゑ」が気になりましたがwでも,先が気になって読めてしまった,という感じですね。

取り扱っている題材が題材だけに,派手さはありませんでしたが,読ませてくれる内容だったなぁ,と感じました。最近は,新人賞関係の作品を読むことが多かったですが,最近読んだ中でもピカイチくらい気に入りました。いかにもライトノベル,と言う読み心地だった影響が大きそうです。

応募作の受賞作であるにもかかわらず,加筆で2巻の引きがある,と言う構成になっていて,続きが出るのは確定のようですw『”菜々子さん”の戯曲』の作者が締め切り1ヶ月前倒された,と言う事なので,意外と早く出るかも知れませんね。続きで一体どう出るのか,楽しみです。
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