『蒼穹のカルマ 2』/橘公司 [富士見]
さて、1巻があまりに面白かったので、勢いに乗って読んでみた2巻です。
一言で言うと、「期待しすぎはよくない」!かなり肩すかしを食らった、残念な仕上がりでした。
内容は、駆真が愛する姪の在紗の誕生日プレゼントをゲットするために、武闘大会に出場することに、という内容でした。
表紙詐欺とか、扉絵詐欺なのは相変わらずw
1巻はシリアスに見せかけたコメディがかなりよかったのですが、この巻ではなんか中途半端な印象なのですよね。コメディ色が強いことはそうなんでしょうけども、あまり笑えないですしね。最後にシリアスな展開も待っているのですが、アクション部分の描写がいまいちだったり。どうも、この作者、アクション描写に向かないようなので、コメディに邁進した方がいいのではないか、という気がしました。まぁ、もっとも「戦闘部分が何をしているかさっぱり頭に思い浮かばない」と言われながらも大人気のアクションライトノベル・『灼眼のシャナ』のような作品があるので、一概に「アクションが苦手ならやめておけ」と言うことにはならないのでしょうけども。
で、この巻で特によくなかったのが新キャラの松永の存在。とにかく、鬱陶しい!嫌悪感を抱かせるレベルのこの鬱陶しさはある意味すごいと思いました。やはり、自分が好きだからと言って、相手のことを考えもせずに行動するのはよくないと思うのですよ。もう、とにかくダメダメ過ぎでした。最後には、ちょっと見所がある、みたいな感じになっていましたが、「それもなぁ」と思ってしまいました。とにかくどうでもいい。早く消えて欲しいと思いました。
さすがによくない点を列挙してもあれなので、よかったところも。これまた新キャラの鳶一はよかった。
意外に努力家だけども、根暗だった、という設定がよかったですね。まぁ、ちょっとやり口が陰湿すぎるような気もするのですがw今後も駆真に張り合ってがんばって貰いたいですね。
あとがきによると、この間は2週間で書いた、とのこと。いや、正直新人さんの作品を2週間で仕上げて出版、というのは無理があるのではないかなぁ、と思います。元々応募作なので、続きを考えているわけでもないでしょうし。榊一郎さんでもないのに、それは無理だろうなぁ、というのが正直な印象。そんな無理をやらせた富士見書房は駄目だと思いました。出版する異常、一定以上のクオリティが欲しかったですね。
ということで、評価は
☆☆
としたいと思います。正直、1巻だけ読めばイイシリーズなのかなぁ、という印象を受けました。3巻まで買っているのですが、そっちではマシになっていることに期待したいです。
『蒼穹のカルマ 1』/橘公司 [富士見]
久しぶりにライトノベルの感想となります。本当に久しぶりwというか、これ読んだら感想を書かずにはいられなかったというか。
さて、今回取り上げるのは、『蒼穹のカルマ 1』です。
このライトノベルがすごい2010において、見事初登場で10位を射止めた注目作です。ちなみに作者は09年の第20回ファンタジア大賞準入選受賞作で、今年デビューですので、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いと言っていいでしょう。とはいえ、私は普通に本屋で初版を買えたのですがw一昨年、文学少女の注目が高まっているときに文学少女の2巻と3巻の初版も手に入れられたし、田舎バンザイ\(^_^)/という感じでしょうか。
さて、この作品ですが、もう一言で言うと「このライトノベルはすごい!!」という言葉しか思い浮かびませんww正直、「このライトノベルはすごい」という言葉は、この作品のためにあるような言葉だと感じました。いろいろ感想を見ていると、散漫とかごったに過ぎ、とか言う感想も見られますが、それくらいカオスです。こんな表紙なのにw私は、とても面白かったですよ。これは、このライトノベルがすごい10位も納得です。というか、もっと上でもいいくらいだと思います。純粋にすごすぎてw
さて、この話の主人公鷹崎駆真は、蒼穹騎士団に所属しています。そして、彼女たちの敵は空から襲い来る魔物・空獣(エア)。空に住み、死してなお空に浮かび、大地から追放されたもの・空獣はしかしその空に浮かぶという特質において、人類の驚異でした。しかし、彼らは死してなお、空に浮かび続ける、という特徴に気づき、彼らの死体から人類はある装甲を開発します。それが、騎士団が装備する天駆機関。騎士団において、エースの活躍をするカルマの活躍を描く物語。
となると思っていたんですよね、読み始めたときはw正直、ストパンみたいな設定だなぁ、とか思ったりもしたのですが。空を飛ぶシステム自体は全然違うんですが。
ところが、このライトノベルがすごいところはその設定がまるで台無しになるような展開になること。そう、はてなキーワードによると、この作品、応募したときのタイトルは『すべては授業参観のために』というものだったらしいですw
そう、騎士団のエースにして、普段のクールな様子から鉄仮面とも呼ばれているカルマには、唯一弱点と言ってもいいような存在があったのです。それが、姪の在紗(ありさ)。彼女を溺愛するカルマは、授業参観の日、任務そっちのけで授業参観に出ようとするのですが、そこに次々と困難が待ち受けていて、という展開。
もう、ここからがこの作品の魅力と言っていいでしょうね。もう、すごいw突然異世界に召喚されて、魔王と戦う羽目になったり。
異世界から帰ってきたところがたまたま過去の遺跡で、そこで魔神(という名のアンドロイド)と出会ったり、
そこから抜け出したかと思ったら、神様の迷宮に迷い込んで、神の称号を得るために、神の迷宮に挑戦する羽目になったり
そして、なぜか最後はマジバトルに戻ったり。
もう、ごったに過ぎて笑えてきました。このライトノベルがすごい、の感想にありましたが、最近はパロディネタで笑わせる作品が多い中(同レーベルだと『生徒会の一存』とか)、純粋にネタで笑わせるところがすばらしいと感じました。
とにかく、面白かった。確かに、一つ一つのネタが薄めな印象もあるのですが、むしろこの程度で正解、という気がします。テンポがいいんですよね。一つのネタを引っ張りすぎないというか。適度に笑えて、くどくない程度で終わるというのがすばらしい。そして、この出会いすべてが、最後の一点に収束するのがまたよかったです。
とにかく、これはすばらしい!文句なしにおすすめします。もう
☆☆☆☆☆
惜しげもなく進呈します。この作品、できるだけ多くの人に読んで貰いたいですね。表紙はまじめそうな感じですが、全然そうではないのがいいですよね。はっきり言って表紙詐欺のレベルwですが、読んで絶対公開はないと思います。是非是非読んでください。 既刊3巻ですし、まだまだ追いつけますよ。私も、3巻まで年内に読みたいと思っていますw
それでは。
『氷結鏡界のエデン 楽園幻想』/細音啓 [富士見]
昨日、大相撲が千秋楽を迎えましたね。特に、朝青龍と白鳳の2番はとても面白かったですね。本割りでの白鳳、改心の立ち会い。決定戦での朝青龍らしい、考えて責める取り組み。本当に素晴らしい相撲を見せてもらいました。まぁ、案の定、土俵の外が騒がしいようですが、あんな素晴らしいモノを見せてくれた力士に対してがたがた抜かすな!と思ってしまいました。ガッツポーズだって、あんな改心の相撲で優勝したら、そりゃ普通に出るだろう、と思います。それだけ気合いが入っていたんでしょう、と。よく、稽古不足、と批判しますが、その稽古不足の横綱に引導を渡すことが出来ない他の力士を責めるのが普通だと思うんですけどね。不思議な世界です。とりあえず、舞の海は顔じゃないから、とっとと解説をやめろ!と言いたい。滑舌悪いですし、口では「気にしてない」とか言いながら根に持ちすぎ何ですよね。
さて、土曜日の記事に載せようと思ったのですが、掲載するのを忘れていた写真が数枚あるので、それの紹介から。まずは先週(20日~26日くらい)買った本。と言っても、全てbk1で買ったりしています。しょっちゅう言っていますが、3日遅れがデフォの長崎だと、bk1で注文した方が早かったりするんですよね。
とりあえず、『氷結鏡界のエデン』『聖剣の刀鍛冶7』『絶対可憐チルドレン18』『ローゼンメイデン2』『サクリファイス3』は読みました。『ささめきこと』は今3巻を読んでいますw『ヴィンランド・サガ』はしばらく放置かも知れませんね。そんな気分ではないので。と言うか、帯に思いっきりネタバレを書かないで欲しい!お前は、NHKニュースのスポーツコーナーか、と。アシュラッド、好きだったんですけどね。
次、こなた&VF25コラボ写真。何故忘れたし。
さて、ここから本編。本の感想です。9月23日に読み終わっていた本です。
先月、デビュー作である『黄昏色の詠使い』を終えた細音啓さんの新シリーズが早くも始動です。『黄昏色の詠使い』が凄く良い作品だったので、すぐに新シリーズ始動、は嬉しい限りです。
と言うことで、感想は追記にて。
『黄昏色の詠使いⅩ 夜明け色の詠使い』/細音啓 [富士見]
自分が愛してきたシリーズが終わりを迎えるとき、皆様はどのような感慨を抱きますか?私は、終わって欲しくないような、でも早く見たいような。そんな感じです。ラノベで言うと、最近終わりを迎えたもの、と言うと、『“文学少女”シリーズ』(本編)と『とらドラ!』がありますが、その時も、その物語が自分にとってとても大切なモノのように愛おしく思えたりしました。だからこそ、最後の1ページまで丁寧に読まないといけない、と思ったり。
と言うことで、今回はこれを読みました。
最終巻、これからの二人の未来を祝福するかのように、とても明るい表紙が印象的です。今までのは、どちらかというと、暗めの表紙だったので。そして、竹岡美穂さんの描く美麗なイラストがまたたまりません。
ついでに、帯を着けた画像となると、
こうなります。最近の富士見って、オビまでイラストと繋がるようにしていて、凝っているなぁ、と毎回感心します。そして、今回は言葉のチョイスが良いですよね。本文一発目の言葉なんですが、シリーズ読んできたモノとしては、ここでウルッと来てしまいました。
ついでなので、シリーズ全巻そろえて、背表紙をスキャンしてみました。
7巻から、新しいデザインになったので、不揃いなのが個人的には不満ですね。既に既刊はすべて新デザインで発売されているので、それを買えばいいのですが、中々手が伸びません。うーん、終了記念に全巻買っちゃおうかなぁ?
と言うことで、続きは追記にて。
『H+P -ひめぱら- 4』/風見周 [富士見]
最近、MF文庫ばかり読んでいたいので、前回の『這いよれ!ニャル子さん』といい、なんか新鮮な気持ちになれますね。
と言うわけで、エロコメファンの方、お待たせしました。ついに読了しました。
前回、キャプしていたからラクでした。良かった良かった。
で、内容ですが。いい意味で「馬鹿だなぁw」という感じでした。エロ方面は、3巻がぶっ飛んでいた分、「・・・・・・あれ、あんまりエロくない・・・・・・?」って感じでしたが。私もエロ耐性ができてきたようですw良かった良かった。
と言うわけで、感想は追記です。
胡蝶の宮、大活躍 『SH@PPLE 6』/竹岡葉月 [富士見]
富士見文庫で好評刊行中の入れ替わり系ラブコメ作品もいよいよ6巻まで来ました。あとがきにも書いてありましたが、さすがに新規のお客さんは入りにくい巻数かも知れませんね。でも、おもしろさは相変わらずなので、新規のお客さんにも是非是非読んで欲しいところですが。
SH@PPLE(6) ―しゃっぷる― (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 竹岡 葉月
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2009/06/20
- メディア: 文庫
と言うわけで、以下追記です。
これ、年齢制限いらないの? 『H+P ひめぱら3』 [富士見]
と思ったら、今回は前の巻よりさらにエロかったです。というか、やっていることが直接的になっているというか。あとがきによると、「巻数が進むごとに、えっち度アップ」が目標とか。ああ、なるほど納得です。最近「エロコメ」代表(?)の『れでぃ×ばと!』のエロさが下がっているように感じるので、これはこれで嬉しい……かなぁ?
展開は、魅惑の聖杯によって、今度は国の人間が一大事に見舞われる、と言う話です。その前に、恭太郎が女装して、姫様達の健康診断というイベントもありましたが。こっちも内容があれでした。いや、思いっきり笑えたのですが。相変わらず、師匠は頭がおかしい。
そして、今回のメインは第4皇女のアルト。彼女の魅力大爆発といった感じでした。眼鏡っ娘の私としては、「待ってました」と言わんばかりの内容です。恭太郎が好きなモノの、イマイチ自信が持てないアルト。その彼女がこの巻では、自分の気持ちを伝える為に、いろいろ努力します。が、ドジっ娘属性の為、失敗に終わってしまって……。その姿が、凄く可愛かったです。でも、これはひいき目が入っているからだろうなぁ。好きでもない人には、「何この子」といった感じがしないでもないです。でも、私は好きだから、オールOKです。
読んでいて、「この巻でアルトの魔力が目覚めたりするのかな」と考えましたが、そんなこともなく、アルトはアルトのままでした。まぁ、そこが良いのですが。この巻を通して、自分なりに一つ吹っ切ったアルト。今後の活躍が非常に楽しみです。
そしてこの巻では、他の王女の恭太郎への確認も出来ました。順調に恋心が成長しているようで何よりです。今後、ますますのどたばたが楽しめると思うと、どうなるか不安に感じるものの、楽しみです。
また、恭太郎では、久しぶりに欲望全開状態(個人的に若本モードと呼んでいます)が登場。ああ、こりゃアニメ化されたら、この状態になったときだけ、CV:若本規夫ですね。アニメ化されるとは思わないですけど。
お約束のカリギュラ様のお仕置きコーナーですが、こちらもパワーアップしております。と言うか、3巻で雌犬の刑と雌豚の刑とは……。この後、どうなっていくんだろう。ああ、挿絵がなくてちょっと残念。そう言えば、アルトの裸エプロンの挿絵もなかったしなぁ。さすがにそれはまずかった、と言うことでしょうか。
エロさと言いアホさと言い、良い具合で非常に面白かったです。ページ捲って最初のことばが「パンツ」だったのには、久しぶりに声を上げて笑いましたし。今後もこの軽いノリで進んでいってもらいたいと思います。
富士見お得意の短編集? 『SH@PPLE 5』 [富士見]
SH@PPLE―しゃっぷる―(5) (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 竹岡 葉月
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2009/03/19
- メディア: 文庫
人力リバーフェスタでの話で一区切り着いたところで、今回は『ドラマガ』に掲載された短編を集めた短編集となりました。ライトノベル全般について明るくないのですが、人気長編シリーズの短編集を作るのは、お決まりですね。人気があるか、私は知らないのですが。『このライトノベルがすごい!2009』では48位という何とも微妙な位置ですね。
まず、いきなりだったのが毎度恒例、口絵のミニ漫画コーナー。いつも、やや暴走気味ですが、今回は一にもまして大暴走。まさかのSF風味とは。しかもオチないし。
肝心の中身の話。短編集の内訳ですが、第1、3、5章は雪国視点で、第2、4章は舞姫視点で、第6章は蜜視点で書かれており、各章の最後に、書き下ろしの「その後の話」が書かれています。具体的には、
雪国に憧れる同級生との一日限りのデートを描いた第1章。
舞姫とSECのメンバーが美少女審美眼を競う第2章。
青美女学院の生徒会長の肖像画を描く人間を決めるため、美術部の部長と部員が競う第3章。
SECで見つかった宝のありかを指定したメモを元に、宝探しをする第4章。
舞姫が催眠術で幼児返りしてのどたばたを描いた第5章。
蜜と胡蝶の宮の出会いを描いた第6章。
となっています。
今回の短編集は非常に粒ぞろいだったと思います。その中で特に気に入ったのが、第5章と第6章です。第5章では、催眠術で幼児返りしたことで、雪国と舞姫の絆が確かめられるのが良かったです。個人的に、二人の絆を描いて欲しいと思っていただけに、今回の話は非常に嬉しかったです。なんだか、心が暖かくなってくるような、いい話でした。ああ、兄弟っていいなぁ。
第6章は、今回出番が少ない蜜と、さらに出番が少ない胡蝶の宮の話。これは、純粋に面白かったです。同じ事実に対してでも、当事者の受け取り方に違いがある、というのは純粋に愉快でした。蜜の、母親が歌手で本人も歌がとてもうまい、と言う設定が久しぶりに生かされていたのも良かったです。
さてさて、第6章のその後のお話では、今後の展開を暗示するように、「そして数日後。雪国は、彼女の燃えるような『最後の願い』を聞くことになる」(P.282)と書かれています。そろそろ風呂敷をたたみ始めるのか、非常に気になるところです。舞姫と芝目に比べて、雪国と蜜の関係はあまり進展していないので(そもそも、雪国が女装していること、知らないですしね)まだまだ続きそうな気がしますが。今回は出番が不憫だった古葉会長のターンもあるはずですし。あとがきでは、2学期編の突入が明示されていますし、非常に楽しみです。
しかし、雪国と蜜のオチを想像すると、『おとぼく』の奏ルートが思い出されるのはなぜでしょうか。まあ、きっとそうはならない、……はず。
夜明けに向けて 黄昏色の詠使いⅨ ソフィア、詠と絆と涙を抱いて [富士見]
黄昏色の詠使いIX ソフィア、詠と絆と涙を抱いて (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 細音 啓
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2009/03/19
- メディア: 文庫
bk1で予約していたら、発売日未定になってキャンセルになったものの、結局予定どおりの刊行になったようで。一体何があったのだろう、と思いますが、予定どおりに発売されたことを素直に喜びたいです。まあ、今月はまだ読みたいラノベがたくさん発売されているので、来月に延びた方が私としては好都合だった気もしますが。
さて、いよいよこのシリーズも9冊目。第2楽章「微笑ムヨウニ、君泣イテ」の終了、及び最終楽章「歌うような口づけで」の開始となっています。
この巻は、主に2つのパートに分かれています。前半が、カインツ対ファウマ。後半がネイトとクルーエル(予想できるでしょうが、ネタバレを防ぐため)。前半は、シリーズの影の主人公というか、もう一人の主人公のカインツが久しぶりに登場します。カインツの大活躍は1巻以来でしょうか?キャラも良いだけに、もっと活躍して欲しかったような気がしますが。活躍の機会があっただけ良いかな。しかし、カインツの中では、今でもイブマリーがかなりのウェイトを占めているのですね。それでも、誰かのために、自分の助けを求めるもののために詠う姿は良かったです。さすがは、影の主人公。
ファウマもかなり良かったです。カインツに助けを求めたいのに、自分で決めたことのためにそれを言い出すことの出来ないもどかしさ。そのかすかな望みを打ち消すために、自分の本心と裏腹にカインツと戦うもどかしさ。カインツに救われたことで、彼女がどう変わっていくか。きっと良い方向に向かうだろうと思います。何か、カインツのストーカーみたいな感じになりそうな気がしないでもないですが。しかし、「一粒の涙が、地に跳ねた」で、「おねがい、私にあの日の夢を諦めさせて」のルビは凄いです。
そして、カインツの大活躍の割を食ってしまったのが本当の主人公・ネイトとクルーエル。お互いの気持ちを伝え愛、二人の気持ちが通じ合う、かなり良い場面だったのですが、盛り上げ不足のため、あまりぐっと来なかったのが残念。唐突に入った「風の砕けた日(ゲシュタルロア)まで、あと十三分」とかの描写のせいもあるでしょうが。それでも良い場面には変わりないのですが。でも、序盤から徐々に盛り上げていけば、もっと良い場面に出来ただろうになぁと思います。作者の構想どおり進めているのでしょうが、できたら2巻に分けて欲しかったなぁ。
この巻で一番の驚きだったのが、あの人の再登場。まさかの再登場。まさか、今回の序奏のあのシーンのためだけの再登場ではないだろうと思います。一体彼がどのような役割を担うのか、注目です。
いよいよ次が最終刊。世界を救うためにその身を犠牲にしたクルーエル。クルーエルを救う決心をするネイト。ネイトが紡ぐ夜明け色の詠が、世界に何をもたらすのか。そして、ネイトとクルーエルの道行きの果てに何が待つのか。また、疑問を抱えたまま、最後の場に向かうエイダとレフィス。この二人はそれぞれどのようか答えを見つけるのか。そして、カインツはイブマリーと再び逢うことが出来るのか。見所たくさんで非常に楽しみです。
H+P2/風見周 [富士見]
うん、相変わらずのエロコメ路線を貫いていますね。表紙捲ってすぐのカラー扉はもう何とも言えません。
お話的には、子作りに励むため主人公と姫達がリゾート地を訪れ、エロコメ展開を迎える展開でした。前の巻のメインがユフィナとすれば、今回のメインはレイシアとエリス.特に、エリスが一人踏ん張って一人から周りする姿は、今後の話の展開の一つだろうなぁ、という感じがしました。
しかし、敵も大概あほだなぁ。子作りされたら困るのに、その状況を目前にすると、黙って見守ってしまうのはどうなんだろうなぁ。こんなあほ小説にこんなツッコミする方が野暮というものですが。
今回の巻では、レイシアとエリスが主人公に惚れたのが進展でしょうか。今後ますますのどたばたが望めそうです。
しかし、プロローグの文章をそのままもう一回使うことで2ページ浮かせたり、今回登場した誘惑の聖杯を次の巻でも再利用しようとしたり、なかなかリユースとリサイクルだなぁ、と感心しました。それと、エリスが第2王女と表記されているのはどうなんでしょうか。ちゃんと第3王女と書かれているところもあったのですが。ここら辺はちゃんと作者も覚えておかないと、と感じました。締め切りまでぎりぎりで書き上げたようなのですが、ここら辺はなぁ。編集さんもちゃんとチェックしていないのか、と感じてしまいました。私ですら、第2王女はレイシアだと覚えていたのに。
まあ、一番萎えたのが
レイシアはとんでもなく大きな爆乳の持ち主なのだ。(P.7)
ですが。いや、そこは「レイシアはとんでもない爆乳の持ち主なのだ」でいいだろう、と。
今回はレイシアの出番が多かったのは良かったのですが、アルトの出番が少なかったのがちょっと不満でした。まあ、次の巻ではアルトが大活躍しそうなので、期待して待ちたい……のかなぁ。正直、切っていいかもなぁ。