『妹がスーパー戦隊に就職しました』/大橋崇行 [PHP]
『ウルトラマン妹』/小林雄次 [PHP]
『彼女を言い負かすのはたぶん無理 3』/うれま庄司 [PHP]
『彼女を言い負かすのはたぶん無理 2』/うれま庄司 [PHP]
ライトノベルとディベートの出会い。の作品だったんですけど……。
ゲリラ・ディベートのことを咎められ、アイラに停学が命じられた。彼女はもちろん家で大人しく......しているわけがない!(スマッシュ文庫ウェブページより)
1巻はディベートを題材に選択したことで非常に楽しめる作品になっていて、好評価を得てレーベル初(多分)の2巻が発売された本作。レーベル初といっても、レーベル自体まだ9冊しか出ていないんですけどね。レーベルが始まって1年4ヶ月経つのに。
私も1巻は非常に好印象で、2巻を楽しみにして待っていたのですが。2巻を読んでみてがっかり感は否めませんでした。
その最大の原因は、物語のメインが恋愛になってしまった、ということでしょう。主人公とヒロインの恋愛を描くために、前作では本作を魅力的な物としていたディベート部分が減少してしまった、という印象を受けました。それでも、ラブストーリー部分に魅力を感じる事ができればまた違った印象になったのでしょうが。小悪魔的なヒロインに翻弄されるへタレな主人公、と至って平凡なものとなっているように感じました。 微妙な心の揺れ動きが楽しめるわけでもなく。片思いの辛さを楽しめるわけでもなく。
ディベート部分はもちろんあります。最初のディベートのテーマが「高校野球の女子マネージャーにドラッカーのマネジメントは不要である。是か非か」というぶっとんだものを持ってきて楽しませてくれました。また、ラストのディベートはアクロバティックさこそないものの読ませてくれる物があり、満足できるものになっていると思います。ディベートの魅力は健在だな、と感じる次第です。それ故に、「どうしてラブストーリーを前面に押してしまったのだろう」と惜しく感じました。
続編を執筆するにあたって、ラブ展開が増えてくる面は仕方ないことだとは思います。しかし、それが前面に出すぎたために、本作の魅力が失われ、結果ありきたりなラノベ、という印象になってしまったのが非常に残念でした。2巻が出るまでに時間がかかっているだけになおさら。2巻は微妙なところで終わっていて、3巻も(ダイヤモンド社から苦情がなければ)出そうな雰囲気ですが。ディベート部分を増やしてくれるのだったら楽しみなのですが、このままの構成だと不安を感じてしまいます。次での挽回を期待したいところです。
『彼女を言い負かすのはたぶん無理』/うれま庄司 [PHP]
初のスマッシュ文庫です。あれ,第1回配本作品,2冊とも買った記憶があるのにw
交通事故で足を負傷。完治したものの,走ると不快感を感じてしまう桜井祐也は,打ち込めるような部活動を見つけることができず,平凡で退屈な毎日を感じつつ,学校生活を送っていた。しかし,高校の部活動仮入部最終日。彼はディベート部副部長九重崎アイラと運命的な出会いを果たす。放送室を占拠して行われた公開ディベート。これによってディベートに何かを感じた祐也はディベート部に参加する。
ディベートをメインに取り入れたラノベは初めてで,新鮮に感じました。読んでみると,ディベートの熱い討論は,非常にラノベと親和性が高い感じがしました。無理のない感じで熱血できるんですよね。ディベートのテーマもまじめなものから,多少変なものまで取り入れることができますし(今回は,「未来の世界のネコ型ロボットは少年にとって有害である。是か非か」というテーマがありました)。これはなかなか素晴らしい着眼だったと思います。
とはいえ,メインはディベートではなく,ラブコメなんですが。その為,紙面の多くをラブコメ部分に裂かれて,ディベートの内容まで書かれたのは2本だけ,となりました。その点には若干の物足りなさも感じました。 ただ,ラブコメ部分も結構満足。アイラが祐也に惹かれるようになる部分には,若干の疑問符を感じますが,展開としては自然だったかな?と。この辺,ディベート部での話としたことで,かなり現実的な話になったのだと思います。この辺,かなりいいなぁ,と感じました。
最後は,アイラを引き留めるためにディベート対決となるのですが。このディベートが少し気になった感じがしました。結構,ツッコミどころがある感じがしました。ディベートを行っているのが高校生なので,その点仕方ないのかなぁ,とも思いますが。個人的に一番突っ込みたかったのが
「ちょっと醤油を買いに行くのが面倒なら,ネット通販を使えばいいじゃない?」(P.241)
という台詞。「田舎をなめるんじゃねぇよ!」と思ったのですが,まぁ高校生ですからね。ただ,色々ツッコミどころを抱えているために,お互いの立論,反論だけで勝敗を判断することに不満を感じてしまいました。この辺は,ディベートはこういうものだ,と割り切るしかないのでしょうが。ただ,これは普通のテーマでディベートしたので感じたのかな,と言う面があり,どうせなら,もっと変なテーマでやったら,もう少し不満も少なくなったような気もします。
とはいえ,非常に読みやすかったですし,スイスイ読むことができました。多少のツッコミどころはあるものの,ディベート自体も楽しかったですし,面白かったです。最後の挿絵もなかなか考えられていましたし。最近は,挿絵も効果的な使い方を考えてくるなぁ,と感じました。
未来の世界のネコ型ロボットにツッコミが入らなかったら続編も出る,と言う事です。まぁ,『生徒会の一存』とか考えると大丈夫だと思うので,無事続編も出るでしょう。今後の展開としては,県大会とか全国大会とか,あるいは学校の横暴に対抗するためのディベート,と色々できますので,意外と長く続けられるのではないかな,と言う気がします。PHPがどこまでやる気があるかわかりませんが(レーベルができて8ヶ月で出たのが5冊,と言う時点でどうかと思いますが),できたら長く続いて欲しいなぁ,と感じました。おススメです。