お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ12 (MF文庫J)
お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ 12 (MF文庫J)
聞こえない君の歌声を、僕だけが知っている。 (メディアワークス文庫)
もう続きは書かないかもしれない。合作小説の続編に挑んでいた売れない高校生作家の一也は、共作相手の小余綾が漏らした言葉の真意を測りかねていた。彼女が求める続刊の意義とは…。その頃、文芸部の後輩成瀬は、物語を綴るきっかけとなった友人と苦い再会を果たす。二人を結びつけた本の力は失われたのか。物語に価値はあるのか?本を愛するあなたのための青春小説。
この空の上で、いつまでも君を待っている (メディアワークス文庫)
この空の上で、いつまでも君を待っている (メディアワークス文庫)
……なんでそんな、ばかなこと聞くの? ……なんでそんなばかなこと聞くの (角川文庫)
マツリカ・マトリョシカ 「マツリカ」シリーズ (角川書店単行本)
「ラノベの挿絵は1冊30万円。税金も家賃もPC代もここから支払うんだ」フェチズムの最前線を走るプロ・イラストレーター京橋悠斗はラノベ挿絵――とくにおヘソに心血を注いでいる。類は友を呼ぶのか、周りも曲者ぞろいで……巨乳と酒が大好きなチャラ系ベテランレーター倉山錦。気●い作家たちに日々心労を重ね、たまに罵声と黒血を吐く編集の永井敬吾。いつも笑顔のほがらか美人レーター佐伯愛澄は「ストーカーほいほい」の異名に悩む。そして、14歳のコスプレイヤー乃木乃ノ香、イベント後に悠斗の部屋まで来て、とんでもないものをぶっかけられてしまい――!? 理想と現実、そして欲望に振り回される。イラストレーターのガチな日常を大公開!
文庫版
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14歳とイラストレーター【電子特典付き】<14歳とイラストレーター> (MF文庫J)
感想は追記にて。
新年明けましておめでとうございます。昨年度はあまり本を読めていないことが大きく影響し、ブログの更新が後半滞ってしまいました。
本年は、感想の長さを短くして、定期的に更新しようと考えております。よろしくお願いします。
さて、本年一発目の感想は、こちらの作品になります。
作者は、むらさきゆきやさん。私自身、何冊か読んだことがあるくらいの作者であります。一番印象に残っているのは、『小悪魔どもが俺の部屋を溜まり場にしている』(一迅社文庫)ですが、軽くて楽しい作品を書く人だな、という印象です。かと思えば、『覇剣の皇姫アルティーナ』シリーズなんてのも書いているのですが。
さて、ではこの作品と言えば、タイトルの通り、イラストレーターと年の離れた14歳の女子中学生の恋を描く物語になるのかなぁ、という印象です。
なぜそんな書き方になっているかというと、この作品、巻数表記はないのですが明らかに次巻に続く内容になっています。売り上げ次第で次が出るか決まる、といったところでしょうか。こういうのは、MF文庫Jではやらないイメージがあるので意外です。
タイトルからは『29とJK』(作:裕時悠示)さんを思い出してしまいます。あちらが29歳と15歳の年の差の恋愛を描くのに対して、こちらは22歳と14歳。年の差8歳となっております。この辺、もう思い切ってもう少し振り切ってもよかったのかな、と言う気がします。コ○ロリ思い出すし(こちらは根も葉もない噂のようですが)
内容自体は、文章自体軽く、あっという間に読めます。気分転換に読むにはちょうどいいくらいのペースで、私は読めました。内容自体に毒がないのも、あっさり読めた要因かもしれません。いくつか気になる点(ヒロインの主人公に対する謎の好感度の高さなど)もあるのですが、その辺も気にせず、ただただノンストレスで読むのが本作の正しい楽しみ方なのかもしれません。
気をつけないといけないのは、表紙にもなっている女子中学生とのイチャイチャを期待して読むと、肩すかしを食らう、というところでしょう。今回のメインとなっているヒロインの方も可愛いかったので(いかにもおたくが好きそうな感じがして、自分のおたくさ加減を思い知らされるわけですが)、私は問題ないのですが。これから読もうとする場合、この点を注意してもらえるといいのではないでしょうか。
果たして2巻が出るのかはよく分からないですが、続きが出るなら読みたいです。まぁ、ただただ楽しい作品を読みたい方にいいのではないかな?
]]>物語を紡ぐ意味を見失った僕の前に現れた、同い年の人気作家・小余綾詩凪。二人で小説を合作するうち、僕は彼女の秘密に気がつく。彼女の言う“小説の神様”とは? そして合作の行方は? 書くことでしか進めない、不器用な僕たちの先の見えない青春!
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感想は追記にて。
〈感想〉
紙の本はまだ届いていませんが、電子書籍版が同時に出ましたので、お先にそちらで楽しませてもらいました。何度も言っていますが、地域的不利(本の入荷が発売日の2日後)を克服できる電子書籍って本当に嬉しいものです。だからこそ、電子書籍の発売日を紙と合わせて欲しいと願うばかりです。
閑話休題。当ブログが応援しております、相沢沙呼さんの新刊になります。その内容は、小説家が主人公で、作品を生み出すことの苦悩と、それでも生み出さずにはいられない作家としての業が強く描かれた作品でした。読んでいて、胸が痛むような、こちらが苦しくなるような場面もありましたが、それでも読まずにはいられない。そんな作品でした。私はTwitterで相沢沙呼さんのアカウントをフォローして、TLに流れてくる呟きを時折拝見していました。その悩み、苦しみ、叫び。そんなものが昇華された、相沢沙呼さんだからこそ書けた作品ではないでしょうか。
キャラクター造形は、これまでの相沢沙呼さんの作品で見られたような主人公とヒロイン、といった印象で、太ももの描写を忘れずに入れてくるところをみると、なんか安心してしまうような気すらしてきます。キャラ自体も、主人公は3年間の作家生活の苦悩から生まれるものから、ヒロインは生来の性質から?、ちょっと口が悪いところがあります。でも、それでもその内面自体は優しさに溢れているので、読んでいて好感が持てました。ここについては、後ほどまた述べます。
しかし、書かれている内容自体は、結構シビアでした。出版不況といわれて久しいですが、ここまで中を描いてくるか、ここまで赤裸々に売れ線について書いてくるのか、とびっくりしました。作家の置かれた状況の厳しさが、売れない作家の苦悩の赤裸々さが、胸を締め付けてくるようでした。
そんな出版業界にあって、苦悩している主人公が、それでも物語を生み出していく姿がこの作品では描かれていましたが、共感するところあり、考えさせられるところありでした。作家、ということがテーマの作品だからこそです。
共感するところについては、主人公の優しさ。
僕は駄目な人間だ。やはり屑だ。小説の中の登場人物たち。彼ら彼女たちの、心弾むような、胸を切なく締め付けるような、それでも、前へ前へと進んでいくための物語は、もう途切れてしまった。僕のせいで、彼ら彼女たちの人生は、失われてしまった。
物語は、断絶したのだ。
この部分を読んでしまったとき、主人公の果てしない優しさと愛情が感じられました。そして、だからこそ彼が売れる作品にこだわる理由が感じられました。もう、それがわかってしまうと、主人公が何をいっても、何を叫んでも、嫌いにはなれないですね。だって、やっぱり物語が好きな人間としては、物語の登場人物といえど、人生があると信じたいですし、物語を彩ってきたキャラクターには、幸せになって欲しいと願いますから。
自分自身、物語として楽しんでいる世界は、実は実際に自分たちと違うところにあるのではないか、と中二病的なことを考えることがあります。だからこそ、この主人公の考えは、ちょっと傲慢に感じられる部分はあるかもしれませんけど、共感できるところです。
考えさせられるところ。主人公は、自分が屑だから、小説の主人公にはなり得ないような人間だからこそ、小説を書くにはふさわしくない、と信じ続けている部分です。
私は基本ライトノベル読みです。だから、主人公がたびたび口に出す売れ線の設定には、非常に納得させられるものがあります。確かに、殊ライトノベルという世界においては、スカッとする物語が好まれているように感じます。最近シリーズを読み進められていなかった『この恋と、その未来』の打ち切り、という情報を知ってしまった後だから、特に強くそう感じたのかもしれません。
しかし、果たしてすべての人がそのような物語を求めているのだろうか、という気がします。逆に、自分のことを屑だと考えているから、小説の主人公にはなり得ないような人間だと信じているからこそ、書ける物語があるのではないか、と。そして、物語中では主人公が否定していますが、そんな人間が描く物語を待ってくれている一人がいるのなら、物語を紡ぐ理由になるのではないでしょうか。
そこで、思い出したのが、阿川せんりさんの『厭世マニュアル』です。第6回野生時代フロンティア文学賞を受賞し出版された『厭世マニュアル』の講評で辻村美月さんが「“誰か”に必要とされる作品を」ということばがあります。『厭世マニュアル』は、そのテーマからして、確かに現在の社会において必要な物語だと感じさせてくれました。このテーマを求める人間は必ずいるはずです。ニッチを狙う、というといい方は悪いですが、誰かが求めてくれるなら、作品を描いて欲しいと願うのは、きっとただの読者である私のわがままですね。売れない物語では、出版社が成り立たないわけですし。
売れる作品か、誰かが求める作品か、と考え出すと、難しい問題ですね。結局どちらに重きを置くかで結論が変わってくる話しですし。
そんな感じで、自分が大切にしたい価値観と、現実問題とのギャップを考えさせられ、読んでいて本当に苦しい話しでした。でも、その中でも、抗いながらも、打ちのめされながらも、血反吐を吐いてでも立ち向かっていく主人公たちの姿が、本当にまぶしかったです。
自分自身、苦しい立場におかれることが多々あります。でも、それでも自分が目指したものだから立ち向かっていこう。そんな勇気がもらえるような作品でした。苦しさに満ちた世界を抜けて見えた世界は、爽快なものでした。とはいえ、きっと主人公たちにはこれからもこれまでと同じか、それ以上の苦しみが待っているでしょう。でも、自分の中の理由を忘れなければ、きっと何度でも立ち上がって、そして越えていけると信じさせてくれる作品でした。
「すべての小説を愛する人たちへ」。これは、講談社タイガの創刊時のキャッチフレーズでしたが、まさに、小説を愛する人たちにこそ読んで欲しい作品ではないかな、と感じました。そしてそれだけでなく、そのものが好きだからこそ悩んでいる人、苦しんでいる人にも、読んで欲しい作品です。立ち上がる勇気がもらえるかもしれません。
]]>死んだのは、二人。その死は、何を残すのか。大学受験を間近に控えた濱田清澄は、ある日、全校集会で一年生の女子生徒がいじめに遭っているのを目撃する。割って入る清澄。だが、彼を待っていたのは、助けたはずの後輩、蔵本玻璃からの「あああああああ!」という絶叫だった。その拒絶の意味は何か。“死んだ二人”とは、誰か。やがて玻璃の素顔とともに、清澄は事件の本質を知る……。小説の新たな煌めきを示す、記念碑的傑作。
感想は追記にて
〈感想〉
『知らない映画のサントラを聴く』から約2年。正確には1年9ヶ月。待ちに待った竹宮ゆゆこの新作の登場です。しかも、発売日はたまたま私の誕生日を一緒。これはもう竹宮ゆゆこさんからのプレゼントと考えざるをえませんwまぁ、九州なので発売日には買えなかったわけですが。
そんな本作は、竹宮ゆゆこらしさに溢れながら、作者の新しい一面を見せてくれた一作になりました。作品紹介には、「記念碑的作品」という文字。帯には市川沙耶さんと伊坂幸太郎さんのコメントが載り、ポップでは他の方々からのコメントが載っていて力の入りようがうかがえます。読み終えてみると、その力の入れようも納得の、素晴らしい作品でした。これは本屋大賞ノミネート不可避かもw
本作の魅力は、前述しましたが、「竹宮ゆゆこらしい展開+これまでの作者に見られなかったしかけ」ではないでしょうか。作品の基本的な部分は、ヒーローに憧れる主人公・濱田清澄と、UFOに攻撃を受けているヒロイン・蔵本玻璃のラブストーリー。二人の出会いや、ヒロインの置かれた部分では暗い部分を持っていますが、二人が出会ってから、二人が接近する過程はいつものゆゆこ節で、非常に楽しいです。伊坂幸太郎さんは苦手、と言っているように、苦手な方がいることも否めませんが。主人公がヒロインに出会ってしまって、ヒロインに惹かれていく過程の描写は、さすがというべきうまさでした。
それ+しかけ。このしかけは、新潮文庫nexという、ライトノベルより少し高めの年齢層を対象にしたレーベルだからこそ仕掛けられたことなのかもしれません。伊坂幸太郎さんのことばを借りると「小説の持つ喜びの深いところ」ですが、まさに小説だからこそできる叙述トリックです。こういう作品を読むと、小説を読むことの楽しさを改めて感じます。このしかけに気づいて、久しぶりに本を読み返してしまいました。「最期のシーンを読むと、もう一度最初から読み返したくなる」みたいな宣伝文句を見かけることがありますが、私が実際に最初から読み返したのは、本作が初めてでした。
一回目の時点でも、ある程度気づくことはできたのですが、二回目を読むとしかけがうまく仕組まれていることに感心してしまいました。本当に一カ所。序盤の序盤に誤解を誘発する描写があるのですが、それ以降に関しては違和感を感じる程度に押さえられています。だからこそ、最後の展開をスッと納得することができるのではないでしょうか。最も、最初の誤解を誘発する描写をして「卑怯だ」「納得できない」という方がいても不思議ではないです。
また、個人的に作品自体の展開自体も、計算され尽くしたようなもので、作品のおもしろさに繋がっていると感じました。ちょうどいいところで、物語が展開されるんですよね。竹宮ゆゆこのテンポの良さと相まって、どんどん先を読みたくなってしまいます。
物語自体が面白いから一気に読んでいって、最後に待っているのは作者が仕掛けた叙述トリック。作者のにやりとした顔が(作者の顔を私は知らないのですが)見えるようです。「やられた」とはなりますが、心地よい読後感です。
本当に素晴らしい作品でした。これを機に、作者がまた一歩先の世界に進んでいくことを感じさせるような作品です。個人的には、竹宮ゆゆこのライトノベルを期待している部分もあるのですが、これから作者がどのような作品を見せてくれるか、楽しみになる作品でした。おすすめです。
]]>第22回電撃小説大賞<金賞>受賞作!
俺はパンジーこと三色院菫子が大っ嫌いだ。
なのに……俺を好きなのはお前だけかよ。
ここで質問。もし、気になる子からデートに誘われたらどうする? しかもお相手は一人じゃない。クール系美人・コスモス先輩と可愛い系幼馴染み・ひまわりという二大美少女!! 意気揚々と待ち合わせ場所に向かうよね。そして告げられた『想い』とは! ……親友との『恋愛相談』かぁハハハ。
……やめだ! やめやめ! 『鈍感系無害キャラ』という偽りの姿から、つい本来の俺に戻ったね。でもここで俺は腐ったりなんかしない。なぜなら、恋愛相談に真摯に向き合い二人の信頼を勝ち取れば、俺のことを好きになってくれるかもしれないからな! ん? 誰が小物感ハンパないって?
そんな俺の哀しい孤軍奮闘っぷりを、傍で見つめる少女がいた。パンジーこと三色院菫子。三つ編みメガネな陰気なヤツ。まぁなんというか、俺はコイツが嫌いです。だって俺にだけ超毒舌で、いつも俺を困らせて楽しんでいるからね。だから、コイツとは関わりたくないってわけ。
なのに……俺を好きなのはお前だけかよ。
文庫版
Kindle版
俺を好きなのはお前だけかよ<俺を好きなのはお前だけかよ> (電撃文庫)
感想は追記にて
〈感想〉
第22回電撃小説大賞<金賞>の本作。評判もよく、気になっていたのですが、ようやく電子版が出たので読了してみました。
読み始める前に、気になっていたことは一つありました。数年間電撃大賞受賞作に触れていなかった私ですが、数年前までの傾向であれば、表紙やあらすじの雰囲気からしてこちらが「大賞」、大賞受賞作の『ただ、それだけでよかったんです』が「金賞」というイメージでした。電撃の傾向が変わった、といえばそれまでかもしれませんが、では実際どんな作品なんだろう、ということを考えながら読みました。
結論としては、ライトノベルの定番のラブコメ作品ですが、ストレートのラブコメじゃなくて若干の変化球系のラブコメ、という印象でした。なにせ、主人公がヒロインのこと、大嫌いですからね。野球でたとえるなら、カットボールというか、黒田のボールからストライクゾーンに入ってくるフロントドアというか。野球に詳しくないかた、申し訳ないです。最終的なところを考えると、主人公が嫌いなヒロインが実は……なんてお約束なところに落ち着くところなんか、ますますその印象が強くなりました。
ただそれまでの過程で、天丼的な笑いを貪欲を取りに行ったり、全ての始まりが、というところがあったりとかなり笑わせてもらいました。前半と中盤以降の物語の印象の変化や、主人公があくまでも物語の主人公ということを意識しているような台詞回しなども、いいスパイスになっていたのではないでしょうか。ネタのチョイスが90年代後半から00年代前半あたりなのも、主に作者の年齢を想像する上で興味深かったです。とはいっても、有名どころのネタをチョイスしているのは良い感じです。
コミカルでありつつ、ちゃんと押さえるところは押さえている、非常によい作品でした。評判の良さも納得です。私は電子版待ちですが、2巻も楽しみにしたいです。
]]>ヴィレムは約束を守れず〈月に嘆く最初の獣〉(シヤントル)の結界は崩壊した。正規勇者(リーガル・ブレイブ)の命と引き替えに長い眠りについていた幼い星神(ほしがみ)は、その余波で空魚紅湖伯(カーマインレイク)とはぐれ、記憶を封じられたびれむと共に仮初めの平穏な日々を過ごす。その日、〈穿ち貫く二番目の獣〉(アウローラ)が浮遊大陸に降り注ぐことになるまでは――。〈獣〉に対するのは、アイセアとラーントルク。死にゆく定めの少女妖精たちと青年教官の、終末最期の煌めき。次代に受け継ぐ第一部、幕。
文庫版
終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?#05 (角川スニーカー文庫)
Kindle版
終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?#05<終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?> (角川スニーカー文庫)
感想は追記にて。
3月末頃、Twitterで、ラノベの試読版に「本作には、ちょっと『ピンチ』になる描写が含まれます」という表記があった、というのを見かけました。出版社としては、ピンチが嫌いな人が読んで「この作品クソだ!」と拡散されないように、という次善策だったのかな、と考える次第ですが。2巻で一度打ち切りが決まっていたらしい本作の帯に、如何にネットで話題になってここまで来たか、というような情報が載せられているのを見るに付け(2015年 下半期ライトノベルTwitter杯 既存部門1位、など)、作品のヒットを考える上で、ネット対策は重要であるでしょう。
閑話休題。そんなことを見た後、この作品を読んだわけですが、所謂最近の読者の耐性っていうのも、私のようなおっさんが心配するまでもなく、意外と大丈夫じゃない?という気がしました。このシリーズで言えば、シリーズ累計15万部ということですし。他にも、私の読んでいる作品で思いつくのを挙げると、『灰と幻想のグリムガル』も『世界の終わりの世界録』も『踊る星降るレネシクル』も決してピンチにならないわけではないですし。『踊る星降るレネシクル』なんて、主人公が石化するわ、主人公が元に戻ったと思ったら、3人のヒロインが一斉に退場するわといった展開ですし。
閑話休題パート2。そんなわけで、1巻からタイトルに「救ってもらっていいですか?」とあるのに、救われない感漂っていた本作もついに5巻。第1部完です。
あらすじに、「時代に受け継ぐ第一部、幕」とあるように、一部で出てきた主人公とヒロインは幸せになれませんでした。作品の舞台的に、ハッピーエンドは無理ゲーではありましたけども。だからこそ、この巻でいったん幕を引き、幸せな結末を迎えられるように仕切り直す、というのはよい判断だったのではないでしょうか。
この巻については、この舞台の種明かしの面が強かったような気がします。黄金妖精とは何から生まれたのか。人間とは何なのか。終末の獣とは何なのか。だけど、それが全ては次の世代での幸せに繋がる可能性の提示に見えて、楽しく読むことができました。
また、もう一つ考えさせられたのが、ひとまずの平和を得た世界に起きたこと、でしょうか。私は、『宇宙のステルヴィア』を思い返していました。『宇宙のステルヴィア』では、セカンド・ウェーブ、そしてコズミックフラクチャーという危機に対して、全地球が協力して立ち向かいました。その後は、作中で迅雷先生が述べたように人類が全宇宙に散らばることで、人類の歴史が残せなくなるだろう、という結末が描かれました。しかし、世界の危機がなくなった後、もしも歴史が紡がれることになったら。
いわく、闘争は自然の摂理であり、全ての生命の宿命である。(P.84)
本編では、このように書かれていましたが、きっとこうなるだろうなぁ、というのをまざまざと見せられたようで、ちょっと暗い気分になってしまいました。
結末に関しては、1巻を読んだときに予想していた結末よりもそれなりのハッピーエンドが描かれたのではないでしょうか。1巻読んだ時点で予想された結末以上のバッドエンドを書く方が難しい気がしますが。『リセット』(北村薫)が大好きな私としては、とても満足行く終わり方でした。このラストで描かれた物語が、同時発売の『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?』に繋がるのでしょうか。まだそっちの方は読めていないのですが、俄然楽しみになりました。
次のシリーズがハッピーエンドで終わる、と期待がもてる展開です。期待が裏切られるかもしれませんが、そうならないことを祈りつつ、新シリーズを読みたいです。
2016年4月4日現在、本作の1,2巻電子版が、各電子書籍ストアでセールのようです。私が確かめたのは、Kindleと紀伊國屋だけですのであしからず。紀伊國屋では4月14日までとあるので、そこら辺までセールが続くのではないか、と予想されます。
この機会に、まだ読まれていないかたは是非とも読んで頂きたい作品です。暗い作品ですが、世界観を楽しめる作品です。
]]>灰が舞い、幻想を越えた先に何が待つのか、いまはまだ誰も知らない。
文庫版
灰と幻想のグリムガル level.8 そして僕らは明日を待つ (オーバーラップ文庫)
Kindle版
灰と幻想のグリムガル level.8 そして僕らは明日を待つ (オーバーラップ文庫)
感想は追記にて。
〈感想〉
アニメ版の方は、記事を書いている時点でまもなく最終回ですが、原作の方もアニメに合わせるようにリリースされました。アニメの方もなかなか楽しませてくれた作品ですが、原作はそれに負けないかのようにますます盛り上がっています。
この巻の個人的な印象は、「これからのパーティーとしての成長」です。今回、パーティがバラバラになりました。そのため、それぞれの内面が描かれました。これが新鮮でした。これまでは、ハルヒロがテンパリながらも、なんとかパーティをまとめようとしてきた面が強く描かれていました。しかし、今回はそれではダメだ、とハルヒロ以外のメンバーが感じていることが分かりました。シホルは、前の巻ですでにその兆候はありましたが、それ以上に深く考えていたし、他のメンバーもハルヒロの負担について考えていたんだなぁ、と。この展開を経て、もっともっといいパーティになっていきそうです。
そして、パーティの結束という点では、この巻と次の9巻が一つのターニングポイントになりそうな展開になってきたのが興味深いです。向かい合うことで改めて感じる相手の長所、というところもあるでしょうし、この巻でも描かれていましたが。「そして僕らは明日を待つ」がサブタイトルですが、迎えた明日がどうなっているか、楽しみで仕方ありません。
もう一つ注目点を挙げるとすれば、パーティの恋愛模様でしょうか。ランタの態度は薄々「そうなのかなぁ。でもランタだしなぁ」なんて考えていたのですが、文章としてその可能性を提示されたことは大きかったです。となると、次の巻のキーパーソンは、ユメなのかな、と予想しちゃうんですが。
そして、メリイです。前の巻の展開から、ハルヒロとメリイの関係が大きく変わりそうな予感がして、この巻はじらし、というところでしたが。
ハルヒロ。ーーハル。
助けて。
ーーそれだけは、口にしたらだめだ。考えてもいけない。ただでさえ弱っているのに、もっと脆くなってしまう。
もうこれだけで大満足です。 メリイの中のハルヒロの存在の大きさ、ですよね。アニメ見ていると、確かにそれこそパーティの仲間を殺した、という自己嫌悪から救ったのはハルヒロでありますし、それだけで大切な人、なんですけども。だんだん、それが表にできたのはすごくいいです。
ハルヒロの方は、ハルヒロの方でメリイを救うために交わしたあの約束。迷いもなくやっちゃうところがよかったです。あれ、ランタだったらどうしていたんだろう、なんて考えちゃダメでしょうね。
序盤こそ、前巻のあれはまるでなかったかのようにさらっと始まって、「あれ?」なんて感じでしたが。途中盛り上げ、最後にまた強烈な引きを残して、面白かったです。さて、この展開でどうなっていくのか。期待したいです。
アニメの方はもう終わってしまいますが、原作の方はまだまだ続きそうです。クセはある文章ですが、面白い作品ですので、アニメが好きだった方は是非とも原作を手にとっていただいてほしいです。
]]>伝説の英勇エルラインが遺した至宝「世界録(アンコール)」。その在り処を世界中の国や旅団が探し求める時代――冥界に突如現れた沈黙機関の手により、終焉の島へ向かうために必要な悪魔法印を奪われてしまったレンたち「再来の騎士」追い詰められた事態の中、レンは、ある秘策に望みを託して結界突破に挑む。時を同じく、終焉の島を目指して集結する王立七十二階位特務騎士団(エルメキア・ダスク)と沈黙機関。世界の終わりと始まりが交響曲(シンフォニー)を織りなすその場所で熾烈を極める世界録争奪戦。そして偽英勇は、英勇しか知らない世界の真実と出会う。「こんな世界のままで終わらせない。俺が絶対、アンタの目指した未来まで辿りつくから」――いま、最も王道を行くファンタジー、衝撃の第6弾!
文庫版
世界の終わりの世界録(アンコール) (6) 終焉の精霊 (MF文庫J)
Kindle版
世界の終わりの世界録<アンコール>6 終焉の精霊<世界の終わりの世界録<アンコール>> (MF文庫J)
感想は追記にて
〈感想〉
買ったはいいものの、なかなか読む気力が湧かなかったのですが、Twitterで「波乱の展開」みたいなものを見かけ読んでしまいました。うん、確かに波乱の展開でしたね。面白かったです。これぞ、細音啓作品、という印象と、これからどうなるんだろう、という期待感を感じさせてくれました。
この巻、振り返って見ると結構内容が詰め込まれていたような気がします。遂に姿を現した沈黙機関との戦いの後から始まり、遂に世界録の在処、終焉の島へ。終焉の島での戦い。世界録に残された真実。遂に姿を現す黒幕。そして衝撃の展開へ。これまでも結構な1つの巻で結構なイベント数がこなされることはありましたが、6巻はこれまで以上に激動の展開だったような気がします。その分、引き込まれました。
最初にも書きましたが、「これぞ細音啓作品」ということと「Ⅵだなぁ」というのが、素直な感想でしょうか。後者については、多くを語りません。読み終えた人なら分かるかな?そういえば、この巻が6巻だったのも、面白い符合かもしれません。
前者に関しては。これまで全ての細音啓作品(5シリーズ39冊と意外と多かった)を読んできたものとしては、正直激しいバトルの末の最後、というのは違和感があるんですよね。この巻でレンがエルラインから託されたものこそが、細音啓作品の本質だと、私は感じます。だからこそ、この展開になっていくことは嬉しいです。
また、『S.I.R.E.N.』とのつながりが見えそうな所なんかも、細音啓作品の特徴、といえるかもしれませんね。
欲を言えば、最後は「世界の終わりの世界録 第2章 世界の終わりの再来(アンコール)篇 開始」みたいな演出があると嬉しかったかな。とはいえ、こればっかりは出版社が違いますから、仕方ないでしょうね。
こんな感じのやつ(画像は、『黄昏色の詠使い』のもの)
なにはともあれ、ここからいよいよ本当の物語の始まりのようです。ここまで出てきた全てのパーティーが集う展開になるのかな?と予想されます。きっと最後は、細音啓さんらしい展開になりそうだ、とも。「いま、最も王道を行くファンタジー」の謳い文句に違わない展開に期待したいところです。
それと気になるのはメディア展開でしょうか。マンガ版は来月発売で、ドラマCD、イメージCDは発売済み。次に期待したいのはアニメ化。正直、どこで切るのか難しいところかもしれませんね。1クールなら4巻の対ゼルブライトで終わるのが妥当な落としどころなのでしょうが。同レーベルの『精霊使いの剣舞』も同じようなところで終わりでしたし。とはいえ、折角なら最後まで、となると、まだまだアニメ化は先かもしれませんね。
もう一つ気になるのは、スピンオフを書くかな?ということ。『氷結鏡界のエデン』から『不完全神性機関イリス』が生まれたように、『世界の終わりの世界録』から、300年前のエルラインの冒険譚が生まれる可能性があるのではないかな、と期待しています。『不完全神性機関イリス』から受けたバトンを、『氷結鏡界のエデン』で完結させたように、エルラインの旅の果て、エルラインが最後に思ったものを受けて、『世界の終わりの世界録』最終巻、なんて展開、すごく燃えてきそうです。
何はともあれ、メディアファクトリーもこの作品に力を入れていることは見て取れますし、楽しみにして待ちたい作品です。
素晴らしい物語になっています。すでに多くのかたが手にとって読んでくださっているようですが、さらに多くの人に読んでもらいたい作品です。
]]>いつか世界を救うために (2) -クオリディア・コード- (ファンタジア文庫)
いつか世界を救うために2 クオリディア・コード<いつか世界を救うために クオリディア・コード> (富士見ファンタジア文庫)
〈感想〉
橘公司、さがら総、渡航の3人のラノベ作家による企画から生まれたシリーズの2巻が出ました。ちなみに、この企画、アニメ化も決まっています(公式ウェブページ:http://qualidea.jp/)。橘公司さんが書いたこのシリーズはアニメの前日譚(神奈川編)になるようです。
さて、この2巻ですが、あらすじにも書いてありますが、いきなりびっくり要素。1巻で男と思われていた主人公が実は女だった、というところから始まります。
あ…ありのまま 読み終わったことを話すぜ!
「おれは (変態)ボーイミーツガールのラノベを読んでいると思ったら、いつのまにか百合ラノベを読んでいた」
な…、何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった…。
頭がどうにかなりそうだった…。
催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。
読んでいるときから、こんなことを考えていました。あとがきによると、売り上げに響くのでやっちゃいけないらしい主人公が女の子のラノベ(そういえば、少ない気がします。真っ先に思い浮かんだのが『θ 11番ホームの妖精』だったのは我ながらw)な2巻。てっきり変態ストーカー少年と思っていたら、変態ストーカー少女だったわけですね。
さて、2巻。基本的に舞姫(ヒロイン)がシノ(主人公。ヒーロー改めヒロイン)にお礼をするためにストーキングしたり、デートしたりしながら、二人の過去に迫っていく、というお話でした。全体的にいうと、変態大暴れのコメディ色もありつつ、1巻から引っ張ってきた、シノと舞姫の過去がクローズアップされていました。
そこで感じたのは、やっぱり橘公司さんはお話を作るのがうまいな、ということ。バカなところがアリながら、ちょっといい話にもっていく展開は、『蒼穹のカルマ』を思い出してしまいました。ラストの展開なんて、すごく王道で、ぐっと来ました。冷静に考えると、百合なんですけどw
2冊で一つの物語で、手に取りやすいのではないでしょうか。また、この物語がアニメに続いて行く、ということで、アニメが断然楽しみになってきました。アニメの方は、橘公司、さがら総、渡航の3人が担当するようなので、脚本も心配なさそうですし。
アニメはまだ企画進行中、という表記で、先になりそうです。ですから、アニメが始まるまでの間、この物語を読んで、アニメに期待をはせるのもいいんじゃないでしょうか。物語自体もよくできていますし、おすすめです。
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