光の帝国 常野物語/恩田陸 [集英社]
奥付を見ると、「この作品は一九九七年十月、集英社より刊行されました。」とのこと。かれこれ11年くらい前の作品なのですね。このようなちょっと前の作品を読む度に思うことが、「私は一体どれくらい面白い本を読まないできたのだろう」と言うこと。それを考えると、ちょっと残念な気分になります。考えてみると、年間100冊の本を読むとして、20歳から80歳までで6000冊。今まで生まれてきた物語、そしてこれから生まれてくる物語を考えると、何と少ないことか。すごく損をしているような気がしてなりません。
ふと、そんなことを考えるくらい面白かったです。「遠見」、「遠聞」、「つむじ足」など、普通の人間と違った能力を持った常野の一族。その、常野の一族の、一人一人の物語が描かれていき、最後に大きな一つの流れとして集まっていきます。
初めは、「常野の一族」を題材とした独立した話かと思っていましたが、それがだんだん絡み合っていく様は見事でした。こういう、一見関係なさそうだけど、実はどこか繋がっていく、と言う構成は好きです。個人的に好きな話は、『二つの茶碗』と『達磨山への道』と『国道を降りて…』。幸せな結末にせよ、悲恋にせよ、私は恋の話が好きなんだな、と改めて実感。
表題作である『光の帝国』は、くらいはなしが苦手な人にはきついかも知れない、ちょっと悲しい話になっていますが、最後にはちゃんと救いがあるのは、いいですね。
欲を言えば、長編で書けそうな短編があるので、長編にしたものを読んでみたいですね。『大きな引き出し』の光紀の物語や、『オセロ・ゲーム』の続き。そして、亜希子の物語。『蒲公英草紙』は積んでいるので、時間を作って読んでみようと思います。でも、読みたい本がたくさんあるのが……。いつになることやら……。
2008-08-22 20:48
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