SSブログ

『イリヤの空、UFOの夏1・2』(マンガ版) [マンガ]

買うかどうか迷ったのですが、原作が好きなので結局買ってしまったマンガ版『イリヤの空、UFOの夏』。いやぁ、やっぱりいい話でした。見事に泣いた。予想どおり。

マンガ版の欠点は絵だと思います。榎本とか中国人にしか見えなかったですし。でも、原作を丁寧になぞり、極力カットすることなくストーリーが描かれているので、原作を読んでいる人でも満足できる内容だと思います。もちろん、「原作、気になるけど、ラノベ読む時間がないなぁ」という人にも最適かと思います。

このマンガ版で気付いたのが、イリヤの新聞部への入部希望の理由。この部分、原作で1回しか読んでいないので気付いていなかったのですが、原作全部読んで、読み返してみると「浅羽がいるから」という理由が、ラストの「好きな人が、できたから」(マンガ版では「…また会いたい人がいるの」「すきな人ができたの」)と重なって、それだけで泣けました。すっかり涙もろくなったモノです。

でも、「…また会いたい人がいるの」「すきな人ができたの」という改変はちょっといただけないかなぁ。学校に行く理由を「どうして」と聞かれて、「好きな人が、できたから」と、たったの11文字(句読点含む)で答えるから泣けるのに。もっと言うと、間に読点が入っているのが良いと思うのです。そこに、間が入ってより感情がこもるというか。「好きな人ができたから」では駄目なんですよね。やっぱり「好きな人が、できたから」でないといけません。ここは残念。ついでに言うと、見開きでなかったのも残念。ここがシリーズトップ3の名場面に入ると思うだけに。

「無銭飲食列伝」が全面カットされたのはちょっと残念でしたが、絵にしたら凄く汚くなりそうなので、それは正解かも知れません。その代わりと言っては何ですが、「十八時四十七分三十二秒」が凄く丁寧に描かれていたのが好印象。私の記憶でも、この話から一気にこのシリーズが盛り上がっていったように感じました。マンガにしてみても、ここはやっぱり良いなぁ、と思います。待つ浅羽。浅羽との学園祭を楽しみにするイリヤ。そして、何とかしようと頑張る榎本。良いものです。

例のレイプのシーンは無いのかと思ったら、やっぱりあってちょっとショック。しかも、小説版だとぎりぎり未遂の線も考えられるような感じだったのに、マンガ版だとぎりぎり既遂のような感じになっているし。でも、その後は原作より良かったです。イリヤが壊れる理由になった台詞。どっちも浅羽の弱さが出た台詞なのですが、原作だと

「どうせぼくは馬鹿でスケベで口先だけの臆病者だよ!!文句があるならもっと頼りがいのある奴の後くっついて歩けばいいだろ!!ああしろこうしろって言われなきゃなんにもできないくせに、うまくいかなかったときのツケばっかりおっかぶせられたら迷惑なんだよ!!うんざりだ!もうついてくるな二度とそのツラ見せるな!!」(P.138)

ともろ浅羽の利己的なことばに感じられます。これがマンガ版となると、

「-気にするなって」「そんなの無理でしょ」「僕が伊里野を1人にしたんだし、そもそもあの日伊里野を連れ出さなければこんな目に遭わなくてすんだのにさ…、伊里野はやっぱり僕なんかと一緒にいないほうがいいんだ」(後略)

とあくまでもイリヤを思う気持ちが感じられます。まあ、最後に「これ以上惨めにさせないでくれ!」って言っちゃうんですけどね。

そこから続くラストまでの道筋はやはり良い。これは原作のおかげでしょう。浅羽がイリヤを思う気持ち、イリヤが浅羽を思う気持ち。「浅羽だけ守る」という台詞はやはり熱い。

しかし、ラストに残念なところが。原作だと最後に榎本が今までの自分の罪を清算する為に浅羽に殺されようとする場面があります。で、

「――ったくよお。最後までしまらねえ野郎だなてめえは!!」
「世界を滅ぼすんじゃなかったのかよ!!そこまでの大口を叩く野郎がおれの一人や二人ぶち殺せなくてどうすんだよ!!おれは、おれは最後にお前に殺されるんならそれでよかったんだよ!!」(P.304,305)

と言う凄く熱い台詞があるのですが、この場面が全面カット。おかげで、マンガ版の榎本の印象最悪。まさに黒幕といった感じになっているのが何とも。レイプシーンでは、マンガ版ではその場面を監視して理解しているのに、榎本の命令で待機になっていますしね。原作なら、一番好きなキャラクターは榎本と言えるのですが、マンガ版しか読んでいないと一番嫌いなキャラかも知れません。

ラストはやっぱり賛否両論分けれそうですが、私はやっぱり好きです。決してハッピーエンドではないのですが、イリヤは浅羽と出会うことで、最後に幸せを得ることができたと思います。また、浅羽にとってはこのことで一つ成長することができたはずです。ありきたりの言い方ですが、浅羽の中でイリヤは生き続けることが出来る。それは幸せなことではないかと思います。

何より、ラストの部長の「ぉおっくれってるぅぅぅーーーっ!!!」は、一つの夏の終わりを告げるようで、印象的でした。

気になった点ばっかり上げたように思いますが、これは原作が好きだから気になっただけで、決してマンガ版が悪い、と言うことではありません。改めて、『イリヤの空、UFOの夏』は名作だと実感できました。改めて読んでみると、「『最終兵器彼女』じゃん……」と思いますが。でも、ラストは『最終兵器彼女』より好み(もちろん『最終兵器彼女』も好きですが)。いろいろ否定的意見があるのは知っていますが、やっぱり多くの人に読んでもらいたいシリーズです。作者が唯一、書き上げたシリーズですし。

ところで、そろそろ前巻が出て1年経ちますけど『龍盤七朝DRAGONBUSTER』の続きは出ないのでしょうか?秋山先生?『ミナミノミナミノ』みたいにならないと良いけどなぁ。


イリヤの空、UFOの夏 1 (1) (電撃コミックス)

イリヤの空、UFOの夏 1 (1) (電撃コミックス)

  • 作者: 秋山 瑞人
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2008/06/27
  • メディア: コミック



イリヤの空、UFOの夏 2 (2) (電撃コミックス)

イリヤの空、UFOの夏 2 (2) (電撃コミックス)

  • 作者: カンノ
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2009/04/27
  • メディア: コミック



ブログパーツ
nice!(2)  コメント(1) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 1

takao

直chanさん、いつもnice!ありがとうございます。
by takao (2009-04-30 05:40) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。