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『ペンギン・ハイウェイ』/森見登美彦 [角川]

Twitterの方では呟いたりしましたが、8月10日は私がブログを開始した日。と言う事で、このブログは3年目に入りました( ゚Д゚ノノ"☆パチパチパチパチ!(昨日の記事を書いているときは、忘れていたorz)

まぁ、今年はなんか色々あった気もしますw去年の今と考えたら、あんまり何も変わってなくない?と言う気もしますが、このままマイペースで続けて行けたらなぁ、と思っています。とりあえず、次の目標は50万PVと言う事で。年内に達成できるかどうか、って感じですがw気にせずマイペースで行きます。

さて、と言う事で、3年目突入第1弾です。

ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/05/29
  • メディア: 単行本

森見登美彦さんの最新作『ペンギン・ハイウェイ』です。記念すべき、森見登美彦10冊目の作品という事です。このブログを読んでくださるアニメ好きの方にも、「森見登美彦」といえば『四畳半神話大系』と言う事で認知度が上がっているのではないかと思います。私は、年代も近いし、何より面白い、と言う事もあって大好きな作家様の一人であります。出版された著作は、『きつねのはなし』以外は読んでいたりw

初心忘るべからずと言うか。2周年記念という事を忘れていたとはいえ、結構ぼろくそに書いたので、気分を取り戻すためにも!と言う事で、本作の紹介です。ラノベの感想書くために始めたブログ。最初の記事は『空の中』でしたしねwこんな本も読んでいるんだよ、と言う事で。

『ペンギン・ハイウェイ』は、わかりやすくいえば、郊外住宅地を舞台にして未知との遭遇を描こうとした小説です。スタニスワフ・レム『ソラリス』がたいへん好きなので、あの小説が美しく構築していたように、人間が理解できる領域と、人間に理解できない領域の境界線を描いてみようと思いました。郊外に生きる少年が全力を尽くして世界の果てに到達しようとする物語です。自分が幼かった頃に考えていた根源的な疑問や、欲望や夢を一つ残らず詰め込みました。(森見 登美彦)

http://b.hatena.ne.jp/articles/201005/1203より

と作者曰くこんな作品ですwまず、読んで驚くのが、主人公が小学生である、と言う事。そして、舞台が京都ではない、と言う事。森見登美彦というと、主人公が学生で、舞台が京都で、阿呆な物語、と言うイメージが合ったのですが、そのイメージを覆すような設定でした。

とはいえ、主人公の青山くんは、一筋縄ではいかない小学生、と言う事で、いかにも森見作品の登場人物、という感じでしたが。なにせ、

「怒りそうになったら、おっぱいのことを考えるといいよ。そうすると心がたいへん平和になるんだ」(P.48)

とか言っちゃう小学生ですので。ノートをもって、自分の不思議だと思った事を研究していて、しっかりしているなぁ、と思う反面、こんなこと言っちゃう。そんなところがもう愛おしくてたまりませんでしたw

それと、この物語の良かったところは、周りの大人達が子ども達をちゃんと見守ってくれている、と言う事でした。私、普段はライトノベルばかり読んでいますが、「大人」の存在の有無が、ライトノベルと一般文芸の違いかなぁ、何て思いました。この物語で言うと、その大人は、物語の鍵になるお姉さん。そして、青山くんのお父さん、と言う事になるでしょうか。特に青山くんのお父さんは、青山くんを優しく見守っているところが凄く良いなぁ、と思いました。

「父さん、ぼくはお姉さんがたいへん好きだったんだね」とぼくは言った。
「知っていたとも」と父は言った。(P.346)

と言う言葉の、なんと優しい事か!「ああしなさい、こうしなさい」ではなく、助言を与えていく、と言う姿勢もすごく素敵でした。

物語は、「郊外住宅地を舞台にした未知への遭遇」を描いた物語、と言う事で、実に不思議な物語でした。ペンギン、ジャバウォック、海・・・・・・。そしてそれらが示す答えに行き着くとき、という構成。少年、少女達がその謎を追っていくのは、思わず童心に返って「どうなっているんだろう」という感じで読んでしまいました。

それと、この物語のもう一つの鍵は、「初めての恋心」というところでしょうね。青山少年はお姉さんと出会った事で大きくなって。お姉さんの別れを経る事で、少年は、少年という時代の終焉を迎える。よくあるパターンと言えばよくあるパターンなんですが、それが非常に心にしみました。ちょうど、AT-X垂れ流しにしていたために、『Kanon』の10話をやっていましたが、ちょうど最後はそんな感じでしたね。

最後は、少しもの悲しいのですが、それでも青山くんはお姉さんとの再会を信じている、と言う事で、それを感じさせない素敵な終わり方になっていたと思います。切ないのだけれども、でも希望が持てるような、青山くんがそう信じているなら、きっと叶う、と信じられるような、ほんのりと心が温まるような、そんな終わり方でした。

それと、印象的だったのが、「生と死」という概念を物語にからめてきた事。森見登美彦という作者、時々死についての考えを書く事があるように感じていましたが、まさかこの物語にもからめてくるとは思いませんでした。読み終わってみると、それは「世界の果て」を描くために必要な事だったんだろうなぁ、ということは分かりますが。作者自身、もしかしたら大きなテーマとしているのかもなぁ、という感じがしました。今後、もっと作品の中で大きく取り扱う、あるいはメインテーマに描くときが来るかもなぁ、そんな感じがしました。そして、そんな物語を読んでみたい、とも思います。

作者自身、今までと違うスタイル、と言う事で、慎重に筆を進めたために面白いか自信がない、と言う事です。しかし、非常に面白い作品だったと思います。主人公を思いきって小学生にした、と言うのが良かったですね。おかげで、いつもの森見登美彦の文章の持つ軽快さに、少年期の終わりの甘酸っぱさ、と言うようなものが加わって、何ともいえない極上の物語に仕上がっていたと感じました。10冊目にしてこの新境地。作者の今後にますます期待が持てるような、そんな素晴らしい物語でした。


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chokusin

これは面白そうですね。ジュブナイルとかビルドゥングスロマンと称される作品なのかなーと。

>「大人」の存在の有無が、ライトノベルと一般文芸の違い
かつては少女マンガも(少年マンガもそう大差はないんですが)同様な指摘をされましたね、やや批判的な意味合いで。主人公たちと同年代のキャラクターしか登場せず、仮に大人が登場しても両親や担任教師という最低限の、それも類型的なキャラクターのみである、と。
by chokusin (2010-08-11 01:17) 

takao

chokusinさん、コメントありがとうございます。

ピルドゥングスロマン、というのは、恥ずかしながら知りませんでしたので、ググってみました。
ただ、そこまでは描いていない、という感じもします。
ジュブナイルも、ちゃんと定義が理解できていないので使用は避けましたが、そんな感じだとは思います。
ただ、基本的に阿呆なところも多いので、あまり期待しすぎると、とも思いますw

大人の存在については、私も批判的意味合いで使っていますね。
まぁ、現実社会についても似たようなところがあるとは思うのですが。
ライトノベルについては、最近は両親不在、と言うのが多すぎる気がします。
同居とかさせやすいから、と言う理由があるのですが、「それは嘘だろう」と言う位存在感がないですよね。
後、教師は基本的に悪wあるいは愚物って感じですよね。
典型的なのは、灼眼のシャナですが。
なんか、学生時代に相当恨みでもあるのではないか、と思ったりします。

子どもの成長には大人が必ず影響しているわけだし、そこを描くことなく成長は描けないだろう、と言う思いがあります。
タダの娯楽だから、と言われたらそれまでですが、それでも不自然だという思いを捨てる事ができないですね。
by takao (2010-08-11 01:34) 

bapio

フフ、明日からお盆休みでまだ仕事中なのに息抜きに来た私ですがいいですか?

台風大した事なくてよかったですね。
明日には九州は晴れる所も多いようです。
ニュースで見ましたが、昨日今日は九州発のフェリーはほぼ欠航になってましたねw
せっかくの休みが雨なのは損した気になりますが、ゆっくり過ごされるのもありかと(’-’*) フフ

>このブログは3年目に入りました
そう言えば私とどっちが先に始めたっけ??と最近思っておりましたが、私の方が約3ヶ月くらい先輩なのですね(’-’*) フフ
ちょっとカレーパン買ってこいや。
すいません、私の中ではいつまでもtakaoお姉さまですw

くだらない雑談をすいませんでした(’-’*) フフ
コミケに行けない悔しさを戸松っちゃん演ずるひとはに癒してもらおうと思います。

by bapio (2010-08-11 17:28) 

takao

bapioさん、ごきげんよう。コメントありがとうございます。

私はいつでも大歓迎ですよ。
お仕事、最後までお疲れ様です。
こうやって、長めの休みを頂いている私はなんだか申し訳ないような気持ちになってしまいます。
こんなブログですゆえ、息抜きになるのか。

台風は、ちょっと風が強かったのと、雨がずっと吹いていたくらいで、たいした被害はなかったですね。それが何よりです。
明日、帰る予定なので晴れて貰わないと困りますが、まぁ、たまにはこんなのも良いか、と思います。
もう、ターミナルまで荷物もって20分、頑張って歩いて行ったら「フェリーは欠航になりました」ってのを見るのは勘弁願いたいです(’-’*) フフ
ご飯をどうするか、が非常に悩ましかったですが、ゆっくりできたので良いか、と思っています。
『あそびにいくヨ!』も見られましたし。

今日から、bapio先輩、と読んだ方がよろしいでしょうか(’-’*) フフ
私は、完全に思いつきで始めましたからね。
まさかまさか、こんなにブログの知り合いが増えるとは思いませんでしたw
リア友がいない自分には、なんだか嬉しい事ですw
カレーパンには牛乳で良いですか?

いえいえ、全然雑談でもかまいませんよ。
私は、明日帰って、ういんういんと遊びまくりたいと思います。
笑顔の憂とうっとり顔のムギを戦わせるんだw
それに、どうやってりっちゃんを絡ませるかが難しいところw
ついでに、サイクロンジョーカーエクストリームも買ったので、うまく絡ませたいなぁ、と思っています。
とか言いつつ、『這いよれ!ニャル子さん』を必死で読んでいる気もしますw

それではbapioさん、ごきげんよう。
by takao (2010-08-11 18:07) 

ロック

3年目突入おめでとう!
年内50万PV?それは楽勝でしょうw
目標はその次じゃないですか?

ド素人な話なのですが・・・
ライトノベルというのは何か定義があるのでしょうか。
by ロック (2010-08-12 00:26) 

takao

ロックさん、コメントありがとうございます。

それが、考えたら年内50万はちょっと微妙ですね。
今が約37万でして、残りが4ヶ月と半分くらい。
だいたい1ヶ月3万行けば良い方のうちでは、ギリギリ行くかなぁ?と言うところです。
更新頻度が落ちたら、またPV減るでしょうしねw
と言う事で、厳しいかもです。

ラノベは、定義が難しいですねw
wikipediaを見ると、

* ライトノベルを発行しているレーベルから出ていればライトノベル
* ライトノベルは出版側のマーケティングにより創られた「ジャンル」であるため、出版社がライトノベルと宣言した作品ならばライトノベル
* マンガ・アニメ調のイラストレーションを多用していればライトノベル
* キャラクターを中心として作られていればライトノベル
* 青少年(あるいは中高生)を読者層に想定して執筆されていればライトノベル

と定義が載っています。
まぁ、私はそのレーベルから出ていれば、ライトノベルと認定しています。
ただ、最近はそれも怪しいですねw
これまたWikipediaにありますが、自分がライトノベルと思えば、ライトノベルで良いんだと思いますよw
by takao (2010-08-12 01:02) 

ミナモ

3年目おめでとうございます♪
これからも記事楽しみにしてますね^^

この本、いつものモリミーとは違ったテイストらしいのですが、
各所で評判が良かったので気になってます。
早く私も読みたいですねぇ。
by ミナモ (2010-08-12 14:20) 

mana

ブログ2周年おめでとうございます。
わりと2周年くらいの人多いですよね?そんなことないかw
ラノベのことはあまりわからない私ですが、これからも記事楽しみにしてます。特にイラストとか。イラストとか!イラストとか!!ww
by mana (2010-08-12 19:46) 

まこたま

2周年突破、3周年目突入、おめでとうございます!
いや~、3年目は凄いですね。
私はまだ2年にも満たない若輩者ゆえ、takao先輩の背中を追って、
これからも精進していこうと思います。
最近サボりまくりですけどw
by まこたま (2010-08-13 14:57) 

takao

ミナモさん、コメントありがとうございます。

まだまだミナモさんには及びませんがw
これからも、ぼちぼちやっていこうと思っています。

そうなんですよね。
主人公が小学生。そして、舞台が京都でない、と言う事で、かなり今までのモリミーと違う、という感じがします。
でも、そこらにモリミーらしさも感じさせられ、まさに新境地、という感じがしました。
ここ最近の作品、おもしろいとは思いつつ物足りなさも感じていましたが、この作品読んで、森見登美彦健在!という感じがしました。
是非是非読んで欲しい作品です!
by takao (2010-08-14 11:19) 

takao

manaさん、コメントありがとうございます。

ありがとうございます。
確か、九州トリオ、みんな今年で2周年ですしねw
全ては、私とbapioさんとまこたまさんの印象、と言う事ではないかとw

イラスト、描きたいですねw
実は、描きかけのくーちゃんがあるのですが、瞳を入れなきゃいけないので苦戦しそうですw
お盆休み、まだあるので、その間に1枚くらい仕上げたいと思っていますが。
最近、やろうとしてできてない事ばかりなので、どうなる事やらですw
by takao (2010-08-14 11:22) 

takao

まこたまさん、コメントありがとうございます。

いえいえ、適当にやって3年目ですからw
5年とかそれ以上続けていらっしゃるお方もいますのでw
そこに比べたら、まだまだ赤子同然ですw
もう、nice!の数なんて私の遥か上ですのに、ご謙遜をw
やきそばパン買ってきますw

まぁ、よく言われますけども、気楽に、気軽に、ですよw
お暇があったらブログ更新、くらいで良いのではないでしょうかw
お互い、末永く頑張りましょうw
私も、ブログの更新が途絶えたときが、息絶えたときになりそうですw
気が長いなぁw
by takao (2010-08-14 11:27) 

kun

3年目突入 おめでとうございますw!

なかなか半年もつづけるのが難しい私にとっては、すごいですぜww
尊敬しちゃいますww
ひとつの記事の内容も濃いしねww
私もtakaoさんのへそのあかをのんで、
半年連続で続けられるようがんばろうwww

by kun (2010-08-15 10:55) 

takao

kunさん、コメントありがとうございます。

いえいえ、アニメ人気ブログのトップの方は5年とかだったりするんですよw
それを考えると、私なんぞまだまだだ、と痛感する日々です。
記事の内容も、そんなに濃い、ってわけではw
ただ、思いついたことを思いついたままに書き散らしているだけなのでw
文章の整合性とか、主述の関係とかそこら辺あまり気にしてないので、日本語がおかしくないか、日々心配していますw

kunさんも、復活されて続けていらっしゃいますし、1年なんてあっという間ですよ。
それを続ければ、長く続いていくのですから。
まぁ、要は気楽に、気軽に、ですw
by takao (2010-08-15 23:14) 

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