『氷結境界のエデン 6 水晶世界』/細音啓 [富士見]
時々,ルビがネタにされているのを見ますがwもう,ワクワクが止まらない展開になってきました。素晴らしいファンタジーだと思います。
統制庁との話し合いを終え,天結宮に帰ってきたシャルティスとユミィたち。時をほぼ同じくして,生態生育野(ビオトープ)の巡視を終え,天結級に帰ってくるものたちが。巫女の第3位・ ヴィオラ・ノヴァと千年獅の第3位・ホルン・ノヴァの姉妹。過去の因縁から,ユミィに対して冷たく当たるホルン。何とかして,ホルンとの軋轢を生む原因となったものを乗り越えようと,そして,強くなろうとするユミィ。そして,それを支えたいと願うシャルティス。
そんなとき,天結宮に謎の怪文書が出回る。そして,ホルンの因縁と言うべき幽幻種の出現。ホルンとユミィはその中で,自分の心と向かい合うことに。
と言う訳で,新キャラの登場です。まだまだでていない重要人物がいたんですね。巫女が5人中4人登場で,残る派は第1位のコンビのみ,という感じでしょうか。
今回は,ホルンが印象的でしたね。今までと全く毛色の違うキャラ。冷静さに欠ける理由があるとは言え,冷静さにかけ過ぎて,今まで出てきた千年獅の中では,一番千年獅っぽくなかったかもです。むしろ,イシュタルの方が冷静だったかも,と思うほど。ただ,その部分はとても人間的だと思ったのですが。また,今までシリーズに登場したキャラは,実力の差違はあれ,どのキャラも心の強さでは,みんな強い,と感じていたので,彼女のように,芯にもろいものを持っているキャラは新鮮だった,と言うか。とはいえ,自分の中を見つめ,弱さを認め,それを乗り越えることができる,と言う点では,一概に芯が弱い,とも言えないような気がしますが。それ故の千年獅,と言うことかも知れません。
そして,熱くなったのがユミィ関連。今まで秘めた力はナンバーワン,と言われていたものの,自分の力不足にうちひしがれることが多く,さらに1000年前では力の違いをまざまざと見せつけられた彼女ですが。その経験から,誰よりも強くなりたい,と言う思いを抱くようになっていたようです。この点,運命のママ自分の力を引き出していった,前作のクルーエルと対照的だなぁ,という感じがします。
そんな彼女が強い思いで訴えた時。遂にあの存在の登場。ここら辺の展開は,前作のファンとしては鳥肌が立つ,という感じで。盛り上がりました。遂に本当の第七天音律(ソフィア・コード)と,禁断水晶の力を手に入れたわけですが。第七真音律を持つシャルティスと,遂に世界の秘密に触れる鍵を手に入れた,と言うところでしょうか。そして,向かう場所は穢歌の庭(エデン)の最奥。ここで待つのはやはり?『約束の地』(ツァラベル)の言葉がまたワクワクして仕方ないですね。
この巻ではエリエが重要な意味を持っていることが,明らかになりましたが。確かに,今までは物語の本筋には絡まないものの,毎回登場。そして,サラ 皇女と出会い,知らず親交を深めていたわけですが。彼女のこの出会いも何らかの意味を持っていた,と言うことが明かされました。果たして,彼女の果たす役 割とは。第3の可能性,と言うものが一体何なのか,気になるところです。
そして,次はいよいよ一つの佳境,と言うこと。自分が第七真音律(エデン・コード)を手に入れたことに意味を見いだそうとしているシャルティスのターンとなりそうです。シャルティスとの再開を心待ちにしているイグニド。次の二人の出会いによって,物語の流れが決定的になりそうな予感がします。果たして,イグニドはシャルティスに何をもたらすのか。空白の名を持つキャラだけに,気になって仕方ないです。
巻が進む度に,謎が少しずつ明かされていく感じがすると同時に,物語がどんどん膨らんでいく感じがしています。一体,どこまで世界が広がっていくんだろう。それが楽しみで仕方ないです。次の巻では,ひとまず何らかの形が見えてきそうですし,楽しみに待ちたいと思います。
基本的なストーリーの流れはいいと思います。ただシナリオの構成というか展開がうまくないように思います。もう少し引っ張って話に厚みを持たせたほうがいいところであっさり話題を切り上げ次に言ってしまい淡白な印象を受けたり、逆に明らかに必要ない(特にギャグ とりわけお色気シーンのつもりで入れたであろう話題)イベントを延々と流すなどバランスが悪い気がします。題材としている結界やらそれを支えるものなどこの手のものとしては使い古されただけに工夫がほしかったところ。6巻まで読みましたが私的にはすでに息切れしているように思います。もう少し何とかしないと打ち切りもありうるでしょう。
by 折原浩之 (2011-06-05 10:08)