『聖剣の刀鍛冶 ♯14.Balbanill 2』/三浦勇雄 [メディアファクトリー]
(あらすじ)
都市を捨て、炎を上げて流れる溶岩の河向こう、ブレア火山の麓で迎撃の陣を組んだセシリーたち騎士団。しかしすでに都市を蹂躙せんと侵攻した帝政列集国は シーグフリードの振るう魔剣エヴァドニの力で溶岩を越え、進撃を止めることがない。そして遂に、都市騎士団と帝政列集国戦士団は、激しい剣戟を交わす乱戦 に突入する。ルークが、ハンニバルが、ヒルダが、それぞれに己の剣のみで、魔剣を手にする敵と斬り結ぶ。そして、いまだ聖剣として覚醒しないアリアを手 に、最前線に立つセシリーは――!? 壮烈な最終決戦の火蓋が切られる最新巻!! (FM文庫J ウェブページより)
感想は追記にて。
(感想)
最終決戦に突入したのに、1冊で終わることができるわけがないよね、といった感じの14巻でした。しかし、だからといって手加減は一切なし。相変わらず主人公たちに厳しい展開が連続の巻でした。
この巻では、いよいよ最終決戦と言うことで、それにふさわしい対決が待っていたと思います。奴隷時代の過去を振り切るためのヒルダ対イライザ・イヴァ。45年前の因縁の決着をつけるためのハンニバル対オーガスタス。そして、ルーク対ホレーショー。全面対決という中で、ふさわしい舞台が待っていたという感じです。個人的には、ヒルダとイライザ・イヴァの対決は見逃せないところでした。セシリーと出会うことで、新たな自分の生き方を見つけることができたヒルダ。しかし、どうしてもそこにはイライザ・イヴァに飼われていたときの記憶が残っている。それを乗り越えるためには、彼女たちに打ち勝つしかない。強力な魔剣であるイライザ・イヴァに対して、無銘を失ったヒルダがどう立ち向かうか。興味深いところでした。
そんな戦いが繰り広げられる中、この巻ではセシリーが生まれ変わったアリアとどう立ち向かうかが重要な位置を占めていたように思います。聖剣として生まれ変わることができたが、自分の銘を認識できず、聖剣としての力を振るうことができないアリア。この戦いの中で改めて突き立てられた自分のこれまでの過ちに対して、セシリーがどう答えを出すか。そこが大きな見所だったように思います。果たして、この巻でアリアは聖剣として覚醒することができるか。突きつけられる現実の過酷さは、さすがはこのシリーズと思ってしまうほどでした。
戦場はますます混迷を深めていく14巻ですが、非常に気になるところで終わってしまいました。ある意味、必然とも言える展開ですが。戦いの中で傷を負っていくセシリーとルークに対して、敵はあまりに強大すぎるように感じます。果たして、ここからどのような逆転劇が待っているのか。最終となるであろう15巻が待ち遠しくて仕方ありません。異世界ファンタジーものとして、大変素晴らしいシリーズとして完結してくれるだろうことを期待しています。
さらに、今回特筆すべきは、屡那さんが描く素晴らしいイラストの数々でしょう。シリーズを重ねるごとに素晴らしいイラストを見せてくれていましたが、今回のものは渾身、の一言に尽きるような力作の数々。まず表紙のセシリーからしてその、迫力と美しさを感じさせる素晴らしいできですが。作品に見事にマッチして、盛り上げることに成功していたと思います。
もういきなりこのすばらしさですよ。全編、このクオ里程で描かれる挿絵。大変素晴らしかったです。挿絵が作品を盛り上げていく。ライトノベルの理想型だな、と感じる次第でした。
テンプレ作品が乱立するMF文庫Jの中で、確実に独自路線を突き進む本作。こういう風な作品がMF文庫Jの中で増えたら面白いのになぁ、と感じる次第です。
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