『氷結鏡界のエデン13 楽園現奏—エデン・コード—』／細音啓

あらすじ

シェルティス、ユミィ、イグニド。それぞれの選択の先には——

穢歌の庭で巫女・ユミィに異篇卿・イグニドは語る——あの日、天結宮で起きた真実を。一方、シェルティスは決意を秘めていた——最深部で第七真音律を詠うことを。二人の想いが錯綜する重層世界ファンタジー、完結！

氷結鏡界のエデン13 楽園現奏―エデン・コード― (富士見ファンタジア文庫)

• 作者: 細音 啓
• 出版社/メーカー: KADOKAWA/富士見書房
• 発売日: 2014/03/20
• メディア: 文庫

 

感想は追記にて。

 

感想

遂に完結してしまった。そんな思いがまず浮かんでしまいました。細音啓さんが送るファンタジー作品、『氷結鏡界のエデン』シリーズが13巻で無事、完結を迎えました。

初めて読んだライトノベルが『フォーチュンクエスト』であった私としては、細音啓さんが紡ぎ出すファンタジーワールドに見せられ、氏の作品を知ってから追いかけ続けてきました。デビュー作である『黄昏色の詠使い』が、作り込まれた世界で綴られる優しい物語に見せられて、そのまま追い続けてきた本シリーズですが、期待を裏切らない、出来であったように思います。

この巻の見所としては、イグニドとは一体何なのか、シャルティスの選択とシャルティスとユミィがどうなるか、そして『不完全神性機関イリス』で持ち越しとなっていた凪とイリスの再会だったかと思います。それと共に、個人的なところとして、『黄昏色の詠使い』と『氷結鏡界のエデン』の世界の関係でした。

その全てがはっきりしたか、と言われると、消化不良であった部分もあったと、私は思います。『不完全神性機関イリス』のラストシーンと、この巻で描かれた凪とイリスの再会の場面が別のものになっているじゃない、とか。仕方ないこととは思うのですが。

ただ、それ以上に満足感が高いエンディングであったように思います。

私が一番嬉しく思ったのが、シリーズのキャラクター総登場、といえるような展開です。シリーズというのは、『氷結鏡界のエデン』シリーズはもちろん、『不完全神性機関イリス』のキャラクターも、です。特に、ミカエルが登場した時は思わず涙が出てしまいました。

また、あの人が少し出てくる、と言うのはファンサービスとして嬉しいところでした。あの日の約束を叶えるために彷徨い続けた彼。愛する人の幸せのために自らが身を引いた彼女。重なる部分があるからこその出番でしょう。そして、彼の結末を知っているからこそ、彼女も幸せを手に入れるのではないか、と言うことが暗示されているようでした。

ラストに関しては、やっぱりこうなるよね、というハッピーエンド。『氷結鏡界のエデン　楽園幻想』（1巻）では、お互いを思いながらもふれあうことが出来なかった二人が、手を取り合って歩んでいける未来を手に入れられた。これ以上に幸せな結末があるのだろうか、という気がしてきます。1巻の帯に「約束した。必ず、君の隣に行く、と。」と書かれていますが、それが実現したことを思うと、感無量です。

ハッピーエンドという点では、死んだと思っていたあの人も幸せをつかんだ、というのは、かなり嬉しいことでした。私としては、シャルトスとユミィが幸せな未来を手に入れた事も嬉しいですが、それと同じくらい嬉しいかも知れません。私が、ゼアドールが好きすぎるだけかも知れませんが。彼主役の番外編が読みたかったな、と言うのが、シリーズの心残りの一つかも知れません。

個人的に興味深いと思ったのが、『黄昏色の詠使い』と『氷結鏡界のエデン』の世界のつながりです。そこから、作者がこれから描いて行くであろう物語が見えてきたように思います。その根本的な部分が変わらなければ、この作者はこれからも素晴らしい物語を提供して行ってくれるのではないか、と感じました。

あとがきによると4年。実質は4年半続いたシリーズが終わってしまうのは大変寂しいです。しかし、シリーズを追いかけて来て良かった、と思えるだけの内容であったと思います。『黄昏色の詠使い』の名詠式、この『氷結鏡界のエデン』の黄金のマハと変なところでネタになっている作者のシリーズですが、内容は非常に良質な物語となっているので是非とももっと多くの人に読んで欲しいなぁ、と思うばかりです。

そして、作者ファンとしては嬉しいことに2014年4月、来月から早速新シリーズ『S.I.R.E.N　—次世代新生物研究特区—』が始まります。少年と天使の出会いから生まれる物語のようですが、一体どんな物語を見せてくれるか。これまで二つの素晴らしい物語を送ってくれた作者なので、期待しています。

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