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『さびしがりやのロリフェラトゥ』/さがら総 [小学館]

 〈作品紹介〉 

「変猫」のさがら総が贈る、新青春エンタ! 

ぼくらの学校には、血を吸いつくす吸血姫がいる――。クラスメイトたちのあいだでまことしやかに囁かれる噂は、真実だった。理想と現実のバランスに苦悩する高校生作家、常盤桃香は深夜の旧校舎で怪異と出会い、風変わりな姫とおかしな会話を紡ぐことになる。「汝、無礼である。如何なる理由でここを訪れるか?」「おでんを作ったので」「……おでん?」「こんにゃくもあります!」「……こんにゃく?」けれど、ふたりの奇妙な友情は、死体の出現をもって終わりを告げた。常識人的いじめっ子、自爆系宇宙ロボット、そして“正義の味方の敵”のぼく。優雅なる吸血姫を取り巻く人間関係は多角的に入り組んで、表と裏が混じりあい、複雑怪奇な青春群像劇を織り成していく。「だれもが静かに平和に暮らすだけの話を書きたかった」「いいかな? だれもそんな話は読みたくないんだ」――これはぼくたちの悩みを笑い飛ばす物語だ。そして、ハッピーエンドになるべき物語だった。『変態王子と笑わない猫。』のさがら総が挑む、新機軸の黄昏ロリポップ! 誰にも先が読めない青春ミステリアスコメディ、開幕!

 

文庫版


さびしがりやのロリフェラトゥ (ガガガ文庫)

さびしがりやのロリフェラトゥ (ガガガ文庫)

  • 作者: さがら 総
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2015/04/17
  • メディア: 文庫

 

Kindle版 


ガガガ文庫 さびしがりやのロリフェラトゥ(イラスト完全版)

ガガガ文庫 さびしがりやのロリフェラトゥ(イラスト完全版)

  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2015/04/22
  • メディア: Kindle版

 

感想は追記にて。 

 〈はじめに〉 

変猫の方は最近読んでいないのですが、刊行ペースがゆったりの印象の作者。その作者が今年はダッシュエックス文庫から1冊、ガガガ文庫から1冊出しています。その1冊。私自身は、途中で変猫積んでいるので(作者の作品全部買っている)、久しぶりのさがら総になります。

という訳で、新鮮な気持ちで読んだのですが、思った以上に読み応えがあり、またシリアスな雰囲気がよかったです。こう言う雰囲気の作品も書けるんだなぁ、なんて思ってしまいました。

 

 一人称視点を生かした面白さ 

この物語は、高校の旧校舎に住み着いたノスフェラトゥと一人の少女が出会いから始まり、ノスフェラトゥに巻き起こる事件の顛末までを4人の登場人物の視点で描いた作品です。そして、6つの章で分けられていて、それぞれが4人のうちの誰かの一人称視点で書かれた物語になります。そして、この構成がこの作品のおもしろさに繋がっていました。

作者あとがきには

主観と主観のすれ違いと重ねあわせによって、大切な何かを描き出そうとしたお話です。

と書かれています。そのすれ違い、重ねあわせが生まれていくことで、物語に厚さが出てくる物語でした。プロローグに当たる「能ヶ谷風吹はかく語り気1」の印象的で、期待感を煽ります。そして、「常磐桃香と高貴なる不死者」。ここを読んでいるときは、物語を書けなくなったライトノベル作家の少女と、旧校舎に住み着いたノスフェラトゥの出会いと交流の物語が描かれます。この時点では人間と不死者の奇妙な交流、といった印象。面白かったのですが、特筆するほどのことはないかな、という感じでした。

それが「シギショアラと恐るべきケダモノ」になると一変します。ちなみに、シギショアラは表紙にもなっているノスフェラトゥの名前。

前の章では「何か変な感じだけど、一人称視点だからまぁ取り立てておかしい、というほどでもないか」と思っていた物語の書き方。それが「そんな意味があったのか!」となります。また、常盤桃香の主観で描かれていたことで見えなかったものが見えて来ます。叙述トリック、というほどでもないでしょうが、別の視点で描かれること仕組まれていたミスディレクションに気付く妙味。これが物語の面白さを引き立てていました。

 

 タイトルについて 

この作品、『さびしがりやのロリフェラトゥ』なんてタイトルが付いています。私みたいに脳みそがショッキングピンクな人間は、「なんてけしからんタイトルを付けるんだ」と考えてしまいます。が、ロリフェラトゥとは「ロンリーなノスフェラトゥ」の略で「ロリフェラトゥ」です。作者が発売直後にツイッターで呟いていましたし、作中でもそう書かれています。「なんてけしからん」と思って付けられたタイトルではあると思うのですが、タイトルにちょっと期待して読むと、肩すかしを食らうかも知れません。そして、タイトルを見て敬遠すると、ちょっともったいない物語かも知れません。 

 

 青春ミステリアス「コメディ」?  

物語紹介に「青春ミステリアスコメディ」なんて書かれていますが、読み終えてみるとコメディ成分はさほど多くありません。むしろ、私はこの記事を書くに当たり紹介文を読んで「え、コメディだったの?」と思ってしまったほどです。そのため、コメディを期待して読むと肩すかしを食らうかも知れません。物語の終わり方も、ありがちではありますが、しみじみとしてしまう終わり方でした。こう言う、ぱっと世界が開けるような、明るいラストは結構好きです。 

 

 ラノベレーベルからのライト文芸へのアプローチ 

最近私もよく使っているライト文芸ということば(結構お気に入り)。物語の前半を読んでいるときは、完全にライト文芸を読んでいる印象でした。途中、某登場人物の大活躍があってライトノベルに印象を引き戻される部分はありましたが、読後感はやはりライト文芸でした。

「ライト文芸」という言葉が創り出され、色々なアプローチがされているようです。その中で、ライトノベル的な部分を持たせながら、文芸作品的なアプローチを試みる作品だったかな、と思いました。とても面白い試みであると共に、読み応えのある作品でした。

なにより、このように別々の登場人物の視点で物語を重層的に描く作品を読んだのは久しぶりで、満足でした。 


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