『マツリカ・マトリョシカ』/相沢沙呼 [角川]
【内容紹介】
校内の「開かずの扉」の秘密に、高校生の柴山と謎の美女マツリカが挑む!
柴山祐希、高校2年生。彼は学校の近くにある廃墟ビルに住んでいる、
謎の美女・マツリカさんに命じられて、学校の怪談を調査している。
ある日、偶然出会った一年生の女子から『開かずの扉の胡蝶さん』の怪談を耳にする。
密室状態の第一美術室で2年前に起きた、女の子が襲われるという事件。
解決されないまま時が過ぎ、柴山の目の前で開かずの扉が開くことになったが、
そこには制服を着せられたトルソーが、散らばる蝶の標本と共に転がっていた。
現場は誰も出入りできない密室という状況で再び起きた事件。柴山が犯人と疑われてしまう事態になってしまい……。
彼はクラスメイトと共に、過去の密室と現在の密室の謎に挑む!!
柴山祐希、高校2年生。彼は学校の近くにある廃墟ビルに住んでいる、
謎の美女・マツリカさんに命じられて、学校の怪談を調査している。
ある日、偶然出会った一年生の女子から『開かずの扉の胡蝶さん』の怪談を耳にする。
密室状態の第一美術室で2年前に起きた、女の子が襲われるという事件。
解決されないまま時が過ぎ、柴山の目の前で開かずの扉が開くことになったが、
そこには制服を着せられたトルソーが、散らばる蝶の標本と共に転がっていた。
現場は誰も出入りできない密室という状況で再び起きた事件。柴山が犯人と疑われてしまう事態になってしまい……。
彼はクラスメイトと共に、過去の密室と現在の密室の謎に挑む!!
マツリカ・マトリョシカ 「マツリカ」シリーズ (角川書店単行本)
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2017/08/25
- メディア: Kindle版
感想は追記にて。
『マツリカ』シリーズ(というかはわかりませんが)の第3弾。ようやく読み終わることができました。
前作である『マツリカ・マハリタ』の単行本が2013年の発売であるので、4年ぶりの新作となります。作者の新作とみても、『小説の神様』が1年2ヶ月前であるようなので、本当に久しぶりの新作、という印象です。
そんな本作ですが、もう素直に「面白かった」ということばしかありません。個人的によかったところを挙げると、
1 柴山くんのまわりに存在する友だちとの交流とそれに伴う柴山くんの成長
2 日常の謎に対して、一般の人が知恵を出し合い解決しようとする楽しさ
の2点です。
1つ目の「柴山くんのまわりに存在する友だちとの交流とそれに伴う柴山くんの成長」についてです。私自身、前作を最後に読んだのが4年前であるので、確かな記憶ではないということを言い訳として述べておきます。
柴山くんって、仲のよかった姉が自分に何もいわないで自殺したことに対して、強い傷を負っていて、あまりまわりと仲良くできていなかったような、という記憶があります。
しかし、この物語では、写真部部員にクラスメイトに美術部関係者、と様々な人びとと交流しています。その影響か、マツリカさんの出番が割を食って少なくなってしまったほどです。
マツリカさんの出番が少なかったことに対して、少なからず不満があるかもしれません。しかし、個人的にはこのことが、柴山くんの世界が広がっているように感じられて、好ましく受け取ることができました。柴山くんの容疑を晴らすために、疑惑に立ち向かっていく、なんて、素晴らしい青春の一ページですよね。
柴山くん、青春しています。
当の柴山くんも、少しずつ、姉の自殺について心の整理が少しずつついている描写が見られ、少しずつ、成長、というかどうかはわかりませんが、心が晴れようとしているようでした。
この物語は、きっと柴山くんの立ち直りと成長の物語なんだろうな、というと、読み違えているかもしれません。しかし、私にはそのように感じられました。
ちなみに、マツリカさんの出番についてですが、今回は全体的には少ないですが、最後の最後に格好いい見せ場があります。それで満足できるのではないでしょうか。
2つ目の「日常の謎に対して、一般の人が知恵を出し合い解決しようとする楽しさ」です。
今回は、ちょっとしたことから(とはいえないかもしれませんが、まぁあの展開はいかにもへたれの柴山くんっぽかったです)、柴山くんがマツリカさんを頼れなくなってしまいます。謎を鮮やかに解き明かしてくれる探偵役が不在、という状況です。
しかし、柴山くんは今回の謎に絡んで、容疑者とみられたため、疑いを晴らすためには謎を解かなくてはいけません。しかし、マツリカさんは頼れない。そのため、柴山くんと、柴山くんと関わりをもった人たちの手によって謎を解き明かそうとなります。
しかし、そこに集まったのはそれこそ「普通の」高校生であるため、謎を鮮やかに解き明かすということはできません。ひたすら、予想、検証の繰り返しです。普通のミステリなら、証拠集めのパートになるのでしょうが、それをトライアンドエラーになっていたことが、非常に楽しかったです。ある意味、理科の実験のような。そんな印象でしょうか。
読者一緒になって謎解きをしているような、そんな体験でした。なかなか興味深く、そして楽しかったです。
以上の2つの点が私の琴線を刺激してくれたので、最後まで楽しく読むことができました。なかなか時間が取れず、なかなか一気に読むことができませんでしたが、時間が取れたときに1章1章読み進めるのは楽しかったですし、最後はちょっともったいなくてためらってしまったほどでした。
たくさんの時間をかけて紡ぎ出した物語は、大満足のものでした。読書としては、「待たされた」感じですしかし、この間作者がもがき苦しんでいたのかな、なんて考えると頭が下がるような気がします。
シリーズものではありますが、きっとこの物語から読み始めてもいいのではないかな、という気がします。柴山くんのバックボーンが見えない部分もありますが、読んでいけばわかるようになっているから問題ないでしょう。気になるようなら、文庫本が発売されているのでそちらを手にとってもらえればよいでしょう。
ミステリって楽しいな、と思わせてくれる作品です。ミステリを初めて読む、という方に最適な作品ではないでしょうか。おすすめです。
KADOKAWAさん、次のアニメにこのシリーズなんてどうでしょうか?(個人的願望)
シリーズ
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