図書館革命/有川浩 [アスキー・メディアワークス]
番外編はあるので、厳密にはそうとは言えない気もしますが、一応シリーズ最終巻。プロローグで、「原発でのテロ発生」を読んだときは、全く別のシリーズを読み始めたのかと思いました。そして、今回はその「テロ」に関する表現を巡って、図書隊と良化委員会の戦い。今回は始めから終わりまで、一気に駆け抜けるような展開でした。
シリーズ完結編だけあって、シリーズ最高傑作のおもしろさだったと思います。先が気になり、どんどん読み進めていき、みるみる頁数が減っていきました。展開には多少の強引さを感じないわけではないですが、現実問題としてあってもおかしくない気もします。実際に起こった時を想像すると、考えさせられるものがありました。私は……やっぱり反対するでしょう。ただ、賛成する人がいてもおかしくないと思いました。ただ、最高裁の判決は、本のとおりにはならないでしょう。さすがに。
その中で動く恋模様もまた良かった。『図書館危機』では、なにかイジイジしていた郁の、思いがけない告白シーンは、今までの行動をふり返ると「あり得ないだろう」って気がしないわけではなかったですが、でも良かった。まあ、場面が緊迫していたので、思わず突っ走ってしまった、と考えると、郁らしいとも言えるのですが。そして、二人の気持ちが確認される場面。やはりいいものですよね。恋の成就の場面は。
残念だった(気になった)のが3点。1つ目が、毎回書いてきましたが良化委員会の行動の動機。あとがきに「敢えて書いていません。その理由もここでは述べません」とあったので、意図があってのことだとは分かったのですが、書いて欲しかったです。「利権」と言うことが書かれていましたが、何かありきたりすぎて納得できなかったです。というより、「利権」だけでは彼らの行動を納得させる動機付けにならない気がします。これを書かないことが「ラノベ」なのかな、と感じました。
2つ目。決着があっさりしすぎに感じたこと。まあ、これは個人の感じ方だと思います。しかし、これだけ大きなテーマを持ってきておきながら、そして、これから良化法の今後に関わるような題材でありながら、ということを考えると寂しい気がしました。
3つ目。これもいちゃもんのレベルですが、手塚と柴崎の関係が中途半端なこと。お互いの好意がはっきりと見えていただけに、「友達以上恋人未満」的な終わり方はちょっと残念です。『図書館戦争』シリーズの本質は、恋愛部分であると思うので、もう一歩踏み込んで欲しかったで。手塚が動かなかったのかな?これは、別冊の方に期待です。
と、気になる部分もあったのですが、とても面白かったです。ハードカバーで、何か一見意味深そうなテーマを取り扱っていますが、紛れもなく「ラノベ」の「ラブコメ」でした(もちろん誉めことばです)。最後のエピローグは、さすがにたまげましたが、感慨深いものがありました。
そして胸に刺さるのが、「恋愛小説はよむものじゃなくて、するものだよ」(『ぼくは落ち着きがない』P209)と言うことば。
2008-09-19 19:02
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