切羽へ/井上荒野 [新潮社]
静かな島で、夫と穏やかで幸福な日々を送るセイの前に、ある日、一人の男が現れる。夫を深く愛していながら、どうしようもなく惹かれてゆくセイ。やがて二人は、これ以上は進めない場所へと向かってゆく。
「切羽」とはそれ以上先へは進めない場所。宿命の出会いに揺れる女と男を、緻密な筆に描ききった哀感あふれる恋愛小説。(帯より)
第139回直木賞受賞作。舞台が私の故郷の県であり、非常に興味を持っていたのですが、今回ようやく読了しました。
全体で204ページ。それが4月から2月、そして4月の12章に分かれています。そして、それぞれの月が大体2つのエピソードで綴られています。
読み始めてすぐ気付いたのが、方言の存在。私が今まで一番慣れ親しんだものであるので、心地よいとともに、それだけで面白いと感じてしまいました。単純だな、自分。
読了後の感想としては、頁数も少なく、細かく区切られているため、文体と相まってそれぞれの話が非常に簡潔に表現されているということ。悪く言えば、不親切と言えるかも知れません。紹介文では、「どうしようもなく惹かれてゆくセイ」と書かれていましたが、あまり惹かれているように感じませんでした。ただ、某作品の言葉を借りれば「僕は恋愛に向いていない」と思うので、しょうがないかも知れません。恋愛経験も少ないですし。ついでに、なぜセイが東京から来た石和に惹かれたのかもよく理解できませんでした。これは、自分の理解できないものに惹かれたのか、と何となく推測しました。だから、最後の場面もなにか納得できない感じがしました。印象的ではありましたが。
非常に読みやすい文体で書かれており、スルスル読めました。ただ、前述のとおり、一つのエピソードに割かれているページ数が少ないので、行間をしっかり読まないと理解できない感じがしました。そして、私はスルスル読んでしまったために、あまり理解できていないかな。作品の空気は、今まで読んでいなかったのを後悔するくらい面白かったので、それなりに満足ではありますが。
しかし、一般向け小説の中で100年後に残っている作品がいくつあるのかな、とも感じました。申し訳ないですが、これは残らないだろうなぁ。
2008-09-21 01:09
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