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七歳美郁と虚構の王/陸凡鳥 [小学館]


七歳美郁と虚構の王 (ガガガ文庫 く 1-1)

七歳美郁と虚構の王 (ガガガ文庫 く 1-1)

  • 作者: 陸 凡鳥
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2008/09/19
  • メディア: 文庫



1999年末、1999人が犠牲となったテロから数年。99人の記憶を持つ今近衛久遠に、姉からはがきが届く。「世界で二番目に刺客を送ってみました」七歳美郁を護るため、久遠は世界で一番強い男を召喚する。(『ガ報』紹介文より)

よく言われる、表紙にだまされて買ってしまいました。もう、紹介文とか見ることなく。私が多く語るより、多分本文を引用した方が良さそうなので、いくつか抜き出してみます。

「立命館大学卒。松坂世代ならぬ藤川球児世代の、ロストジェネレーション。現在書店アルバイト。得意技は、ねこだましから繋げる空中殺法。超人強度66マンパワー。」(作者紹介文)

「一九九九年十二月三十一日、その事件は起こった。国連復興安全調査委員会(INRASC)が定めた正式名称は、遊戯型特級テロ、《拡大人的破壊》。俗に言う審判の刻(ジャッジメント・デイ)である。

「世界で二番目に刺客を送ってみました。存分にご堪能あれ。  最愛の姉より 愛は籠めずに」

「さあて、凄惨な事件の始まりだ。人が死んで、人が死ぬ。ただそれだけのことに必死になる。……やっぱ人間てのは面白いよな、相棒?」(以上3つカラー扉より)

「1999年12月31日、その事件は起こった。

千年紀最後の年を迎える、記念すべき一日前。
西暦の左端が1から変わる瞬間を数十秒後に控えた時刻。
誰もが新たなる時代を思い描き、幸福に浸っていたはずの一分間。
世界各地における、それぞれの標準時、午後11時59分。全人類を震撼させる、歴史上類のない一大猟奇犯罪が決行される。

政治、経済、文化活動に携わる、表世界の名士や指導者、333名。
マフィア、戦争屋など、裏社会の重鎮やその関係者、666名。
都合999人が直接的、あるいは間接的に殺害された。さらにその余波で死亡した、きっかり1000人の犠牲者を合わせること、1999人。
少ないとは言いかねる数の者たちが、この日このとき、地球上から姿を消した。

事件の特殊性はそれだけではない。
犠牲者たちが死んだ現場を繋ぎ合わせると、一本の暗殺航路(ライン)ができあがる。

それは赤道と平行方向に、19991.231キロの直線を描いていた。

国連復興安全調査委員会(INRASC)が定めた正式名称は、遊戯型特級テロ、《拡大人的破壊》。
だが世間に広まった呼び名は、より明確に被害の実態を伝え、人々の恐怖を喚起した。
俗に言う、審判の刻(ジャッジメント・デイ)である。

なぜ彼らは殺されたのか。
1999という数字には、隠された意味があったのか。
事の真相を理解できた者は誰もいない。

事件後明らかになったのは、ただふたつの名前だけ。
破壊をもたらした実行者、《外木場外郎(そときばういろー)》
敵を告発した、救済の女王、《九重白雪》
彼らの名を除くすべてが不明瞭なまま、事件は風化していくかに思われた。

そして悲劇から数年。

物語はまだ、終わらない。」(P.10、11)

「やや甲高いバリトンで、階(きざはし)は答える。」(P.36)
(注:グーグル先生で検索したら、「甲高いバリトン」で991件ヒットしました)

「何から尋ねるべきかを組み立てながら、ティーポットを傾けます。質問の順番によっては苦戦が予想されました。私は犯人から自供を引き出す刑事(プロ)ではありません。単なる女子高生未満です。(P.93)
(注:この登場人物は中学校を卒業したばかりです)

「第二世代ともいえる本機には、前作の轍を踏まえた改良が加えられることとなった。
 プログラムにインプットされた記憶データは九十九人分。前作のおよそ九倍近くにも該当する量であり、数だけを見るなら、人体への負担は増すばかりに思えるだろう。」(P.190)
(注:前作に記憶された記憶データは十二人。八倍じゃない?)

「「……階の技だ。ただの蹴打。仰々しく技に名前をつけるような男ではないからな」
 敢えて言うなら断罪牙。(P.209)

ぴんと来た人は、書店へgo!と思わずにいってしまいそうな感じです。私も、作者紹介や扉絵を読んだときに思いました。「これは、来たか?」と。実際問題、あまり来なかったのですが。

本文は、表紙にもなっている「七歳美郁」語りのパートと、もう一人の主人公「今近衛久遠」語りのパートからなっています。個人的に厄介だったのが、「美郁」パート。何で、『108年目の初恋』や『θ 11番ホームの妖精』読んだときにも思ったのですが、少女語りってのは読んでいてどうもしっくり来ないです。それに加え、この人自分のことを謙遜しないから、鼻につくような部分も見え隠れ。これは読者を選ぶだろうなぁ、と。

そして、P.209 の表現のように、少しくどい表現。どこかで既視感が、と考えてみたら、ああそうか、『灼眼のシャナ』か、と気付きました。確かに、シャナに負けないように、ルビが多かったですが。《晩餐会の十二人》で「ディナーパーティ」とか。《救世主殺し》で「オラトリオスレイ」とか。私は、シャナは大丈夫で、むしろどんと来い、くらいなのですが、ダメな人はダメだろう、と思われます。

さて、いろいろツッコミ所満載ですが、内容はそこまで酷くなかったです。初っぱなで『ガラクタパーツ』級を期待したおかげかも知れませんが。適切な譬えではないでしょうが、特大地雷を期待していたら、かんしゃく玉がまいてあっただけ、のような感じです。

とは言いつつ、私はかなり楽しませてもらいました。次の巻が出たら買って読むくらいには。ただ、壮大な前振りをした割には、何か本編が小さくまとまってしまった感じがあります。何か、小難しそうなことを書き連ねていましたが、そこが痛かったです。一番痛かったのが、世界でいちばん強い男の設定でした。あまり書き出しで(地雷を)期待しすぎるとダメだ、というパターンかな、と思います。
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