どろぼうの名人/中里十 [小学館]
どろぼうの名人 (ガガガ文庫 な 4-1) (ガガガ文庫 な 4-1)
- 作者: 中里 十
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/10/18
- メディア: 文庫
いい雰囲気の小説だったのだけれど、最後の後書きで台無しになった感じが……。ここまで痛々しい後書きは久しぶりに見た感じがしました。
ここ2回の直木賞をとった『私の男』と『切羽へ』は、文体で取ったのかな、と感じたのですが、この作品からも似たような雰囲気を感じました。非常に抑えめの表現で、でも丁寧に描いている感じ。百合ものなのですが、所謂百合臭くない。主人公・佐藤初雪とヒロイン・川井愛の奇妙な同棲生活を描いているのですが、日常を淡々と描いているので、人によっては退屈に感じるかも知れません。ただ好きな人はたまらなく好きだろうという感じです。
というより、これをライトノベルで出す必要性が感じられませんでした。ライトノベル特有の強烈なキャラクターもなく、くどい言い回しもなく、知らないと楽しめないギャグもなく。敢えていうなら、後書きがライトノベルですが。……すごく落ち着いた作品なのに、後書きで「1万と2千年後」はないです。
とにかく、雰囲気を楽しむ小説だと思います。百合百合したものを期待すると肩すかしを食らいますのでご注意を。所謂、ライトノベルが好きな人にはおすすめできません。逆に、純文学にも通じるような雰囲気(といったら語弊がありそうですが)の、百合ものを読みたい人にはおすすめ。立ち読みして、文章が気に入ったら買って損はないと思います。個人的には、対象年齢20代後半以降な気がします。
しかし、タイトルは『どろぼうの名人』より『ラプンツェル』な気がする。物語での登場回数的に。
chokusinさん、nice!ありがとうございます。
by takao (2009-05-04 21:48)