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『黄昏色の詠使いⅩ 夜明け色の詠使い』/細音啓 [富士見]

自分が愛してきたシリーズが終わりを迎えるとき、皆様はどのような感慨を抱きますか?私は、終わって欲しくないような、でも早く見たいような。そんな感じです。ラノベで言うと、最近終わりを迎えたもの、と言うと、『“文学少女”シリーズ』(本編)と『とらドラ!』がありますが、その時も、その物語が自分にとってとても大切なモノのように愛おしく思えたりしました。だからこそ、最後の1ページまで丁寧に読まないといけない、と思ったり。

と言うことで、今回はこれを読みました。

黄昏色の詠使い3.JPG

最終巻、これからの二人の未来を祝福するかのように、とても明るい表紙が印象的です。今までのは、どちらかというと、暗めの表紙だったので。そして、竹岡美穂さんの描く美麗なイラストがまたたまりません。

ついでに、帯を着けた画像となると、

黄昏色の詠使い2.JPG

こうなります。最近の富士見って、オビまでイラストと繋がるようにしていて、凝っているなぁ、と毎回感心します。そして、今回は言葉のチョイスが良いですよね。本文一発目の言葉なんですが、シリーズ読んできたモノとしては、ここでウルッと来てしまいました。

ついでなので、シリーズ全巻そろえて、背表紙をスキャンしてみました。

黄昏色の詠使い1.JPG

7巻から、新しいデザインになったので、不揃いなのが個人的には不満ですね。既に既刊はすべて新デザインで発売されているので、それを買えばいいのですが、中々手が伸びません。うーん、終了記念に全巻買っちゃおうかなぁ?

と言うことで、続きは追記にて。

最初に書いたとおり、今回は1文字1文字、慈しむように読みました。本当に面白かったです。真剣に読み過ぎたせいか、『黄昏色の詠使い』の世界にどっぷりはまりすぎて、本を読み終わった後自分の世界に違和感感じたりしましたwあまりの現実逃避ですねw

今回、まず気付いたのが、それぞれの章の副題が今までの巻のサブタイトルを少し変えて作られていることです。この辺、今まで読んできたモノとしては、にやりとさせられるとともに、作者は今までここまで考えて書いてきたのかなぁ、と感心しました。

いつの巻からかは忘れましたが、相変わらず章の開始も異様に凝っていたり。この辺、誰がデザインしているんだろう、と下世話なことを考えたりしましたが。

黄昏色の詠使い6.JPG

この巻は、8巻くらい?で予告されていたように、最終楽章、「歌うような口づけで」というシリーズでした。

とにかく、この巻は今までの登場人物総登場、という感じで賑やかな感じでした。最初は、ネイト対シャオ、エイダ対アルヴィル、レフィス対テシエラを丹念に描いて、最終的にクルーエルを救う、と言うモノかと思っていたのですが、違いましたね。あくまでも、このシリーズはこのシリーズらしく、優しさに溢れる物語でした。

とは言え、エイダ対アルヴィル、レフィス対テシエラは描かれました。この辺は、非常に良かったですね。特に、エイダ対アルヴィル。自分の気持ちを理解した上で、自分は自分としてアルヴィルに立ち向かう姿が心打たれました。そして勝負の時、あれは反則でしょう。でも、あれをやられたら、アルヴィルも負けたとは言え満足でしょうw

レフィス対テシエラは、また良かったですね。これは、レフィスだけの勝利と言うよりも、ミシュダルの叱咤とそれに応えたレフィスの勝利と言えるでしょうけども。話は少しそれますが、この巻のミシュダルの重要な位置づけを、誰が予測できただろうか、という感じでしたね。あの憎たらしいまでの悪役キャラだったミシュダルが、ちょっといい人に見えるとはw

黄の大特異点であるテシエラとレフィスが普通に戦って勝てるわけもなく。結局最後に勝敗を分けたのは、レフィスの覚悟と運、と言ったところでしょうか。戦いの読み合いも楽しめましたし、最後の最後で、「ラスティハイトキタ━━(゚∀゚)━━ッ!!」も楽しめたので、非常に満足でした。しかし、灰色名詠に必要な触媒は、本当にこれは辛いですね。それを知り、なおかつ自分でそれを代用したレフィスもたいしたものだと思いますが。レフィスの覚悟の強さを感じられるとともに、自分にできるかそれを考えました。私は、うーん、無理だ。自分が大切だからこそ、無理ですね。

そして、ネイト対シャオ、対ミクヴェクスに続くわけですが、本編でも書かれていましたが、ネイトの成長がたくましくありましたね。本当に、最初は何も出来ないような、守られているような子どもだったネイトが、クルーエルへの気持ちに気付き、クルーエルを救う為に動く姿が良かったです。イブマリーも言っていましたが、クルーエルがネイトを成長させたのですね。恋は人を成長させるとも言ったような気がしますが。そうか、だから私は成長していないのかorz

そして、見逃せなかったのがカインツとイブマリー。ようやく、ちゃんとした姿で再会できたカインツとイブマリー、本当に良かったね、という感じでした。結局、二人を隔てている壁があまりに強大であることを実感させることでしたが、想いが無くならなければ、きっと会える、といのが印象的でした。「あの」イブマリーの「じゃあ、またね-」というのも破壊力満点でしたがw二人はお互いのことをずっと想い続ける。その想いがあればこそ、二人は再び巡り会えるし、幸せなのかなぁ、と感じました。

黄昏色の詠使い9.JPG

そして、最後はネイトとクルーエルの再会。

黄昏色の詠使い8.JPG

ネイトのクルーエルへの想いが、クルーエルのネイトへの想いが交わるときに生まれる奇跡。クルーエルの語る「君のこと信じてたよ。-ずっと、ずっと最初から」(P.319)という言葉が良かったです。もう、これで泣けそうになれます。そして、二人で奏でる夜明け色の歌。この流れが非常に良かった。二人の思いによって紡がれた世界。正直、『アルトネリコ』を思い浮かべないわけではないですがwでも、優しさで紡がれる世界、というのは良い物ですね。

結局、二人の歌によって守られた世界。ミクヴェクスの「私も夢を見たくなりました」というのが、また素敵でした。ネイトとクルーエル。かたやアマデウス真言を担うはずだったイブマリーの息子、かたや自分の一部から生まれたもの。その二人が運だ奇跡を信じたくなった、と言うミクヴェクスの何と優しいことか。ミクヴェクスについての、シャオの説明を聞く限り、ミクヴェクスはもっと冷徹な存在だと思っていたのですが、そうでもなかったのですね。自分たちの愛する子たる人間へ送った名詠式。そして、その理想を見せたネイト。ネイトが「夜色名詠」を歌うのは、やはりこのためだったのだと思いました。ネイト(『夜明け』と言う意味らしい)が歌う、夜明け色の名詠。夜が過ぎた後には、必ず朝が来る。だからこそ、ネイトはネイトであり、夜明け色の歌を歌うのは、夜色名詠の使い手であったネイトであったのだ、と感じました。そして、それを信じたミクヴェクス。結局は、ミクヴェクスもアマリリスも、人間を愛し、名詠式を愛していたのだなぁ、と感じました。

そして、最後の最後のシーン。是非ともこれは読んでもらいたいので記述は避けますが、こういう約束は良いですよね。ネイトは13歳なのに、そんな約束をして良いのか?とも思ったりしますがwイブマリーとカインツがお互いの約束を交わしたのでさえ、15歳か16歳くらいの時だった思いますが。でも、こういう出会いがあればこそ、ネイトは成長できたのだし、良かったのかな、と思いました。

不満点はそんなに無いのですが、敢えてあげれば「挿絵が少ないよ」と言うくらいでしょうか。実は、本文に出てくる挿絵は、上の2枚以外に、下の一枚の計3枚という具合です。

黄昏色の詠使い7.JPG

でも、文章の世界にどっぷりはまるには、このくらいが丁度良かったかな、と思うので、あまり欠点ではありませんね。

シリーズ通して、本当に面白かったです。私は、4巻くらいからの途中参加組ですが、その世界観を存分に楽しめました。細音啓さんの奏でる美しい、優しい世界に魅せられてここまで来た、という感じでしょうか。これがデビュー作、と言うのだから、作者の今後の作品も非常に楽しみであります。正直、これで入賞したから良かったモノの、これが入賞できていなかったらどうする気だったんだろう、と思ったりするんですがw

作者の次回作も楽しみだ、と思っていたら、早速来月から新シリーズの始動。

黄昏色の詠使い10.JPG

文庫とドラマガでの短編、同時始動だと言うことだそうです。これは非常に楽しみですね。彼が今後、どんな物語を紡いでいくか、楽しみに待ちたいと思います。

それと、できたら竹岡美穂さんの、『黄昏色の詠使い』で描いた絵の画集が出たら、嬉しいですね。あと、1度で良いので、カインツとイブマリーがメインのストーリーを読んでみたいですね。まぁ、これは無理だと思うので、自分の頭の中で物語を紡ぎたいと思いましたw

とにかく、お薦めのシリーズです。既刊10巻で結構長いシリーズですが、その分楽しむこともできると思うので、多くの人に読んでもらいたいです。


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コメント 8

usako

最終巻は早く読みたいけど、やっぱり終わってほしくなくという気持ちもあり複雑ですね。
私の読んでいた「BLACK BLOOD BROTHERS」が5月に終わって悲しかったです。
レビューを書かなくちゃと思いつつ未だに書いてません(^^ゞ
by usako (2009-08-22 20:24) 

まこたま

帯と言えば、BL小説系の帯が面白いですね。
エクスカリバーはかなりの名言でしたが、
「バナナはオケツに入りますか?」は天才だと思いました。
すいません、酔ってませんけど変な事を書いてすいません。

6巻までの背表紙デザインは、昔ながらの富士見って感じですね。
7巻以降は見慣れませんw
by まこたま (2009-08-22 22:38) 

takao

usakoさん、nice!&コメントありがとうございます。

本当にそうですよね。どんな結末を迎えたのか、と気になる反面、この作品、登場人物とお別れするのが寂しくなるんですよね。

『BLACK BLOOD BROTHERS』終わっていたのですね。評判が良いので、いつかは読みたいと思いつつ、まだ手に入れておりませんが、是非とも読みたいものです。
by takao (2009-08-22 22:51) 

takao

まこたまさん、nice!&コメントありがとうございます。

私、BL系は全く読んだこと無いですし、意図的に帯などを見ないようにしているので、それは存じておりませんでした。多分、読んだら読んだで平気な気はするのですが、危険な扉は開ける必要はないのでw

何月か忘れましたが、去年にデザインを変更したので、つい最近なのですよね。一番大きな変更点は、富士見のマークの変更と、表紙の絵が、今までは刺客の枠に入っていたのが全面イラストになったところでしょうか。

で、人気作は新装丁で出したのですが、売れてなさそうなのは一気に廃盤になったっぽいです・・・・・・。私も、昔のも持っているのですが、そろそろ新装丁の分が多くなりそうです。これも時代の流れでしょうね。
by takao (2009-08-22 22:57) 

takao

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by takao (2009-08-24 18:27) 

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