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『空ろの箱と零のマリア 2』/御影瑛路 [アスキー・メディアワークス]

一部ネットでは、絵のトレースが話題になっているようですね。YAHOOのニュースになった、と言うこともあって盛り上がっているようです。私としては、別に趣味の範囲でやるならトレースしようが丸パクしようが良いんじゃないか?と言う気がしますが、それを商業でやっちゃいけないですよね、と思ってしまいます。でも、その絵師を擁護する人とかいて面白いんですよね。中には、「トレースされたと言われる元の絵より、トレースしたとされる絵の方が好きだ」とおっしゃる方もいらっしゃるようで。それって、問題のすり替えジャね?と思うのですが、そんな人に何を言っても無駄そうなので何も言いません。ま、ここら辺はただの戯言と言うことで。

と言うことで、今回紹介するのは、この本です。

空ろの箱と零のマリア2.jpg

ちなみに、今回の画像はこれ一枚ですw

前作が凄く凄く面白かったので、期待していたのですが、その期待に違わない、素晴らしい内容でした。と言うことで、詳しくは、追記にて。

 

「所有者の願いを、何でも完全な形でかなえることが出来る箱」をめぐるシリーズの第二弾。前回は、「拒絶する教室」と言う箱の所有者は誰なのか、と言う謎解き風味の強い作品でしたが、今回はがらっと感じが変わりました。謎解きの要素がない事はないのですが、それよりも今回はサスペンスというか、ホラー要素が強い感じがしました。

今回の箱は、「泥の中の一週間」。それに取り込まれた主人公・星野一輝は、一日一日、自分の体を動かせる時間を、謎の寄生主・石原雄平に奪われていく。初めは一日数時間だった時間は、やがて増えていき、一週間後には24時間石原雄平が体を支配することになる。その時、星野一輝はその意識が消滅してします。敵に奪われ、自分でいられる時間が少なくなる中で、この悪夢を破る方法は一つ。「箱の持ち主を見つけ出し、箱を破壊すること」しかない。果たして、一輝は「泥の中の一週間」を破ることは出来るのか。

というお話。もうですね。体を支配する時間を段々と奪われていき、絶望に囚われていく一輝がもう、素晴らしい表現だったと思います。敵の要求に屈していく姿、音無麻理亜によって、その絶望を振り払い、敵と退治することを決意する姿が良かったですね。私が、段々体を奪われていったとしたら、きっと一輝みたいになるだろうなぁ、と思いました。もっと早くに絶望に支配されているかも知れませんが。

そして、今回特に良かったのが、麻理亜ですね。最初は一輝とは相棒というような関係なのかなぁ、と思っていたのですが、そうでもないようで。いつの間にか、恋のつぼみが育っていたようですね。「拒絶する教室」の中で、人の一生分モノ時間を一緒に過ごしたのであれば当然、と言う気もしますけども。その気持ちがほんのちょっとした瞬間に垣間見られるところがたまらなく愛おしく思えました。

また、一見冷静で毅然とした決断を下せる麻理亜であっても、こと他人の幸せとあっては、自分を一番後回しにして他人の幸せを願ってしまうことがまた愛らしいですね。そう言えば、そう言う理由で、麻理亜は旅をしているんでしたwすっかり忘れていました。自分が箱そのものとなってしまった麻理亜。彼女にも幸せが訪れることを願ってやみません。

それと、恋愛方面では、今回はあの人は出番はあるモノの、まだまだ本格参戦は先、という感じでしたね。入院しているから仕方ないのでしょうけども。彼女が無事退院して、一輝をめぐって麻理亜と立ち向かうその時を楽しみにしたいと思いました。

全体的に暗く、絶望感が漂うような物語なのですが、最後に救いがあるのが良かったですね。それは、私たちから見て幸せと言えないモノかも知れませんが、それでも頑張って生きていってくれる、そう思わせてくれるようなエンディングでした。

そして、最後の一文。これがもう最高でした。最後の一文に時間への強烈な引きとなるようなものをもってくる、と言うと、最近だと『“文学少女”』シリーズ、特に3巻を思い出すのですが、それに負けず劣らず強烈でした。何だろう、鳥肌が立つ、というのはあんな感じだろうなぁ、と思いました。これはもう、次の巻を期待せざるを得ません!

と言うことで、評価はもちろん文句なしの

☆☆☆☆☆

です。今年読んだ本の評価を確定していない(全く手をつけていない)ので、断言は出来ませんが、評価的には今年出版されたライトノベルでトップ5に入ることは確実ではないかと思います。これに関しては、ラノベ脳wと言われるかも知れませんが、上手く取り扱えばハードカバーで一般向けでも発売できるのではないか、とも感じました。挿絵も最初のカラーページ以外は、章の始めに見開きで入っているくらいなので、難しくは無いと思うのですが。

おそらく、本家『このライトノベルがすごい!2010』でも上位に入ってくるのではないかと思われます。トップ10の牙城はかなり強固なように感じますが、一昨年1位、去年8位の『フルメタル・パニック!』が最終刊を前にして今年出版されていない、と言うこともあり、チャンスかも知れません。私としても、これは「何かラノベのオススメない?」と聞かれたとしたら、自信をもってオススメできる一品ですので、読んでみてはいかがでしょうか?


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アリア・ポコテン

トレースは背景くらいないならOKじゃないかな、と思っています。
写真家の撮影した写真をそのままトレース、はさすがにまずいですが。
by アリア・ポコテン (2009-09-23 06:30) 

takao

アリア・ポコテンさん、nice!ありがとうございます。

確かに、自分の撮った写真を背景にトレースするならありですね。でも、写真家の撮った写真とかトレースしている人もいるから困ったモノですね。それだけ、苦労している、と言うことなのでしょうけども。著作権意識の希薄さがここら辺にも出ているのかなぁ、とか思ったりしてしまいました。
by takao (2009-09-23 18:42) 

takao

xml-xslさん、nice!ありがとうございます。

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