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『ももとせ花火』/久光景 [学研]

本日紹介するのはこちらです。

 

ももとせ花火 (メガミ文庫)

ももとせ花火 (メガミ文庫)

  • 作者: 久光 景
  • イラスト:べっかんこう(AUGUST)
    出版社/メーカー: 学研パブリッシング
  • 発売日: 2010/05
  • メディア: 文庫

 

 

高校1年生で歴史同好会に所属する楠那央は幽霊が見える体質。そんな彼女が,友だちである本条ちとせのお見舞いに行ったとき,彼女の先祖を名乗る幽霊と出会い,衝撃的な事実を聞かされる。それは,このままだと,ちとせが8月16日に死んでしまう,と言うもの。しかし,そんな彼女の命を救う方法が一つだけあると,その幽霊・長尾栄之進は告げる。それは,彼女が8月15日までに恋人を作ること。それによって,彼女の運命が変化し,彼女は生きることができるという。
しかし,彼女は男性にあまり興味がないという。しかし,このままではちとせは死んでしまう。そして,ちとせを大切に思う那央は決心をする。ちとせと歴史同好会の部長である西江秀利をくっつけることを。しかし,部長の西江は那央の思い人。愛情と友情の間で揺れ動きつつも,ちとせの命を守るために,がんばり続ける。果たして,ちとせはどうなるのか。そして,那央の恋心は。

 

イラストがべっかんこうさん,と言う事で購入してみた本作です。この作品「第2回メガミノベル大賞」銀賞&べっかんこう賞ダブル受賞,と言う事で,べっかんこうさんがイラストを担当したようですねw

感想を一言で言うと,「惜しいっ!」この一言に尽きます。とにかく惜しい。途中までおもしろかったのに,今年読んだ中でトップ10くらいに入るかな?と思うほどに面白かったのに,最後の最後で大失速をしてしまって,「悪くないけどねぇ」くらいの感想になってしまいました。本当にもったいない。

序盤は那央の心の動きが秀逸だったんですよね。友だちであるちとせは大切だし,命を助けたい。死んで欲しくない。しかし,短い間で彼女の恋人にするには,部長の西江しかいない。西江は自分の思い人。自分の気持ちが痛むんだけども,悲しさがあふれるんだけども,でも友だちの命に代えることはできない。ただ,自分の気持ちを殺せば良いんだ。この辺の描写が秀逸で,那央の気持ちに惹き付けられて,こちらまで胸が苦しくなるような感じでした。自分の気持ちを殺せばいい,とは思うものの,そう簡単に気持ちを諦めきれずに,時折恋心があふれてしまって,自分ではどうしようもなく苦しくなってしまうところとか,特に。

ところが,西江先輩に協力を求めるようになってからがよくなかったです。と言うのも,まずこの辺から那央が苦しむことがさっぱりなくなったんですよね。「え,もう諦めちゃったの?」と思うほどに。ちとせの命を救うために,精一杯だった,と思えばいいのでしょうが,しかし,あれだけ苦しんでいた自分の気持ちとキレイさっぱり決別をしてしまうところが腑に落ちませんでした。

そして,序盤で感じていた文章の理解しにくさ。これが後半顕著になってきたのが致命的でした。幽霊が見える体質那央が,他の亡霊に襲われ,幻覚を見る場面があるのですが,その場面とか一体何が起こっているのか分からなかったんですよね。せめて,場面の切り替わりとかに一行開けるとかしてくれたらよかったんですけども,それがなかったために一体何がなにやら,という感じでした。そもそも,この幽霊に襲われて幻覚を見る場面自体が必要だったのか,と言う疑問も残るのですが。この辺がもったいないなぁ,と感じました。ラストの場面なんて,一体何を言っているのか,結局何が起こったのか3回くらい読んでもよく分かりませんでしたし。暫く時間をおくと,「あぁ,もしかしてそういうこと?」と思うものはあるのですが,それが果たして正解なのか?デビュー作,と言う面をおいてもちょっと残念でした。この辺,担当さんがもう少し手を入れてあげれば,と思わないでもなかったです。

と言う訳で,前半はもう自分の中で最高潮に盛り上がったのですが,後半一気に盛り下がってしまいました。悪くはないんですけどね。悪くはないんですけども,もっと面白いものにできたはずなのに,と言う想いが残ってしまいました。オチも,なんだか予定調和というか,「え,それで良いの?」という感じで微妙に納得できなかったりしましたし。

ただ,非常に良いものを持っている方だと感じましたので,これからの作品に期待したいです。幸い,読みにくさ,と言うものは鍛えれば改善できるものでありますし。ですので,是非とも2作目も出してほしいものです。

 


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コメント 4

あすぱい

一瞬べっかんこうでわかってしまった・・・orz、ロックさんじゃないのに。(ぇ
by あすぱい (2010-10-11 23:07) 

takao

あすぱいさん,コメントありがとうございます。

さすがはべっかんこうさん!半端ない知名度ですねw
きっとロックさんも大喜びしてくださることかと(ぉぃ
by takao (2010-10-11 23:19) 

ロック

なんだってー!こんなのがあったのですか!
よく見れば、確かに目がべっかんこうw
明日、買ってきまつw

信者より


by ロック (2010-10-13 00:09) 

takao

ロックさん,コメントありがとうございます。

私も,この前『雑魚神様』の感想を書いていて,Amazonリンクを開いたときに気づきましたw
そういえば,第2回は「べっかんこう賞」とかあったような,と今だったら思い出せるんですけどねw
イラストはたくさん入っているので,信者のロックさんは楽しめるのではないかとw
ただ,内容はちょっとあれかもですw
by takao (2010-10-13 00:39) 

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