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『ハーレムはイヤッ!!』/水鏡希人 [アスキー・メディアワークス]

今日は,ライトノベルの感想です。

 

ハーレムはイヤッ!! (電撃文庫 み 13-3)

ハーレムはイヤッ!! (電撃文庫 み 13-3)

  • 作者: 水鏡 希人
    イラストピロ水
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2010/10
  • メディア: 文庫

 

鷹野原学園に入学した上月慧は,2年生の生徒会役員で才媛の響徳治綾乃(きょうとくじ・あやの),そして,同学年でモデルとしても活躍しており学年でも可愛いと人気の有坂美柚(ありさか・みゆ)と仲良くしていることを,学園の生徒から妬まれていた。そして,付いたあだ名が「ハーレム王」。二人と親しくしているのには,秘密の理由があるのだが,それを言うこともできない慧は,迷惑に思いつつも受け入れるしかない状況だった。
そんな慧は,一人お礼を言いたい女性がいた。それは,同じクラスの初穂詩織(はつほ・しおり)。入学試験でのお礼をしたい慧だったが,人付き合いをほとんどしていないような詩織になかなか近づくことができず。さらに,「ハーレム王」の自分の称号がさらに彼女を遠ざけることになって。果たして,彼の前途は・・・・・・。

 

ってかんじのあらすじかなぁ?読書メーターの感想は滅多滅多で笑いましたが,私はなかなか楽しむことができました。

酷評の理由も分かるんですけどね。主人公が流されやすい性格の上,秘密を抱えているので,自分の誤解を解くことができない。結局,そのために流されるまま。さらに,取り立てて特徴もないし。と,あまり良いところがないですからね。ヒロインの詩織も無愛想すぎて,魅力に欠ける,と言うか,魅力がないような気もします。もう少し,彼女の持っている不器用な優しさを引き出してやれたら,印象が変わったのかも知れませんが。入学試験とラストのあれだけではなく,もう一つ印象に残るようなところが欲しかったです。


で,ヒロインの出番を奪って出てくるのが綾乃と美柚ですね。ネタバレしちゃえば,彼女たちは慧と半分血のつながった兄弟姉妹なので,親しくしています(綾乃は母親が同じ,美柚は父親が同じ。綾乃と美柚は血のつながりがなく,綾乃は慧と美柚が兄妹であることを知らず,美柚は綾乃と慧が姉弟であることを知りません)。それも,血のつながったものとしての愛情,ともよべるものなのだと思いますが,もう少し自分たちのすることで慧に与える影響を考えて行動してあげれば,と思わないでもないですwそれぞれが,それぞれの形で慧に親愛の情を示しているのはよく分かるんですけどね。だからこそ,慧も強くは止めないんでしょうし。

内容も明るくないですしね。全体的に,慧が詩織に接触しようとする→綾乃か美柚の邪魔が入る→詩織が去っていく,と言うパターンですし。その途中に嫌がらせが入ったり,という感じかな?

さて,悪いところを挙げたらこんな感じですが(すでに致命的な気もしますがw),私が良いなぁ,と思った点は2つあります。

1つは,主人公が流されやすい性格ではあるものの,ハーレムに否定的で,自分の気持ちに自覚的である,と言う点。とはいえ,ハーレムとは言いつつ,実際は肉親ですのでハーレムじゃないので,否定するのは当たり前なんですけどね。今のライトノベル作品は,主人公が優しくしてくれたから,と主人公を好きになって主人公の気づかないうちにハーレムが形成されている,と言う事があるのですが。最近は,『生徒会の一存』みたいに意図的にハーレムを作ろうという作品もあります。ただ,主人公が明確にハーレムを否定しようとする作品って,あるのでしょうけども自分が読んでいる作品ではちょっと思い出せないなぁ,という感じで面白かったです。

あと,ライトノベルの主人公と言えば,決定的に朴念仁,と言うところがあります。下手すると人の良さから誰にも彼にも親切にして,ハーレムを築いていくけども,自分が好きな人には気づかない,というキャラもいるほど。ところが,この主人公は最初から「詩織にお礼をしたい」という想いがあり,やがて,それが彼女への恋心へと変化することを意識できているところがいいなぁ,と感じました。もっとも,ハーレム要因とされている二人は血がつながっていますし,当然と言えば当然なんですけどねw

2つ目は,主人公と友だちの掛け合いがよかったところ。とてもとても高校生とは思えないウィットに富んだ会話ですが(「ハトがサギになる」とか,二人の女性が一人の男性を取り合う展開をして,「デイズな展開」とか)。デビュー作では素晴らしい作品をリリースしながら,「ライトノベルとはなにか?」に悩み迷走してしまった2作目を経ての電撃文庫3作目の本作ですが,この会話の機転と言った楽しさが,作者の武器になるんじゃないかなぁ,と感じました。

慧と詩織が近づこうとするたびに,綾乃か美柚の邪魔が入る,とか慧が迷惑している脇で綾乃と美柚がバトルを繰り広げている展開とかにストレスを感じた人も多いようですが,まぁ,そのドタバタも楽しめたら良いんじゃないかなぁ,と思いました。個人的には楽しい作品でした。おススメはしませんけどもw


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る〜

自分も読みました。
そーですよね。主人公が自覚的に行動する部分に好感が持てるんですよね~。
最近のお話は、ただ流される主人公が多いですから。

面白かったと思います。
by る〜 (2010-10-11 20:33) 

takao

る~さん,コメントありがとうございます。
面白かった,と言ってくださる方がいるのが嬉しいですw
これで私を入れて3人。うん,マイノリティじゃないですねw
読書メーターだと,結構ぼろくそ書かれていたのでw

最近の流行というか,ラノベの伝統というか,結局流されるタイプの主人公が多いのが現状ですからね。
その中で,自分の恋心に自覚的なこの主人公にはかなり好感を持ちました。

できたら,続編も出て欲しいなぁ,と思うのですが,どうなんでしょうねw
by takao (2010-10-11 21:57) 

しんぷー

感想探してて行き着きました。 はじめまして

さっき読み終えたばかりですが、感想としては
「きまぐれオレンジロード」世代なら笑って許せそうですけど。
最近の風潮としては合わない作品だなぁと感じます。

というか男友人関係にしてもそうですが正直あそこまでウザいと感じて
しまう友人関係に縁切ったほうがいいのでは? と思うくらい。
天城の存在が多少カンフル剤にはなってますがそれでも必要最低限ですし・・・

ピロ水氏のイラストが良かっただけに残念だなぁと。

by しんぷー (2010-11-21 02:47) 

takao

しんぷーさん,コメントありがとうございます。

なるほど,「きまぐれオレンジ☆ロード」w懐かしいですねw
とはいえ,私は「きまぐれオレンジ☆ロード」は名前だけ知っていて,読んだことがないのですがorz
私がちょうどジャンプの存在を知ったときに,連載が終わっているようです。
と言う訳で,申し訳ないですがそのへんどうなのか,私は分からない感じですが。
まぁ,今の風潮に合わないのは確かにそんな気がします。

友人関係,確かに整理した方が良いんじゃない?と言う感じはします。
私はその辺の会話で楽しむことができましたが,もう少し楽しい会話を増やした方が良い,と言う気もします。

この作者に期待しているものとしては,ようやく作者の良さが現れてきた,と言う感じがして,その点で喜んでいる私がいる,と言う面は否めません。
次はどうなるのか分かりませんが,期待できると感じました。
by takao (2010-11-21 11:35) 

刹那

はじめまして

最近になってラノベにハマッたのでハーレムを初購入させていただきました。
いわゆる衝動買いってやつだったんですけど、面白かったです。

主人公が幸せなハーレムを築くよりも、主人公が不幸な方が個人的には面白いかな、と思います。

ハーレムでも慧を取り合うっていうか、慧をネタにいがみあっているっていうかwww
兎に角、慧が不幸で読んでて楽しかったです♪

by 刹那 (2011-04-10 13:28) 

takao

刹那さん,コメントありがとうございます。

初購入が水鏡希人さんの作品とは,お目が高い!
いや,ふたごを選ばなくて,心からよかったと思います(^^ゞ

なるほど,いわゆる「リア充爆発しろ!」的な感情ですかね?
よく分かりますw
この作品,ラノベの中では結構パターンから外れていると思いますが,底が良かったのかも知れませんね。
by takao (2011-04-24 20:35) 

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