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『ヒマツリ ガール・ミーツ・火猿』/春日部タケル [角川]

第15回スニーカー大賞,初代<ザ・スニーカー賞>受賞作。

ヒマツリ  ガール・ミーツ・火猿 (角川スニーカー文庫)

ヒマツリ ガール・ミーツ・火猿 (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 春日部 タケル
  • イラスト:も
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/11/30
  • メディア: 文庫

しゃべる猿のぬいぐるみ・サンジュとクラスドジな女子高生・花村祭。ある日,友だちが寮に帰ってきていない,との連絡を受けた祭は夜の町に飛び出す。しかし,彼女が遭遇したのは,人間の環力を吸う怪異の存在に出会う。絶体絶命の危機に見舞われる祭。その彼女を助けたのは,サンジュの中に封印された五忌獣の一人「火猿」だった。
危機を乗り越えた祭。しかし,それは前触れに過ぎなかった。祭の前に現れる敵。人間界を舞台に,二つの異世界の住人の繰り広げる激しい戦いに巻き込まれて行く祭。果たして,戦いはどうなるのか。

 

作者あとがき曰く,コンセプトは「ひたすら少年漫画」だとか。なるほど。個人的にも,読んでいて今は滅多に見られないような,古き時代の少年漫画,という感じを受けました。読んだことないので分かりませんが,『とある魔術の禁書目録』が,往年のジャンプ漫画的展開で人気を博している,と聞いたことがありますし,この「少年漫画的展開」というのは,一種のTrendなのかも知れませんね。

個人的には,最初の方は若干辛かったです。個人的に「粗暴」の印象を受けるキャラは苦手なのですが,サンジュがひたすらこの特徴に当てはまってしまって。祭に対して,汚い言葉を投げるところがあまり好きになれませんでした。ところが,

「あのな,こんなんでも祭(こいつ)一応女なんだよ・・・・・・」
(中略)
「顔に傷つけてんじゃねぇっ!」(P.59)

これですべて許せました。最初から,何となく感じてはいたのですが,サンジュは口は悪いけども,祭のことを確かに思っているんだなぁ,というのがしっかり分かったので。それが分かったあたりから,祭がサンジュを大切に思う気持ちと,サンジュが祭を大切に思う気持ちがハッキリと描かれる場面が増えて,さらに楽しむことができました。良いですよね。このお互いがお互いを必要とする感じ。決して,共依存,と言う訳ではなく,しかし,お互いがお互いを欠くことができない,という感じでした。私が一番この物語で楽しめたところは,この二人の信頼関係だったりします。もう,最後の火猿の言葉,祭の言葉がかなり心にしみました。ちょっと涙ぐんだりw

バトル展開は。読書メーターの感想なんか見ると結構指摘されていましたが,気になる点も多々。500年以上生きてきて,人間界では十分に力を発揮できないと理解できていない鬼,ってのはどうなんだ,とか。戦いについても,結局より怒った方が勝ち,みたいな展開だったかなぁ,と感じました。そこはちょっと残念でした。鬼の設定は,もう少し考えておいて欲しかったなぁ,と。バトルの展開は,今後の課題かな?

ただ,バトルのボリュームとしてはなかなかよかったと思います。内容的には,よくある異能ものなのですが。火猿の能力が,奇をてらうことなく,ただの炎,と言うのがよかったですね。やはり,主人公の能力はシンプルイズベストだと思います。その中で,色々工夫がある方が楽しいと思います。

物語としては,キレイに終わっていて,このまま終わっても良いのかなぁ,と言う印象を受けました。大賞の『子ひつじは迷わない』があからさまに2巻への引きで終わっていたので,これは意外。とはいえ,気になる伏線は入れていますし,ココで終わらないでしょう。あとがきでも,2巻の準備があるみたいに書かれていますし。この辺は,売り上げ次第,と言うことでしょうね。気になる点はあるものの,面白い作品だと思いますし,是非とも続きが出て欲しいと思います。


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tokuP

はじめまして。
初めてこの作品に良い評価している記事を見たのでついコメントしてしまいました。

確かに色々と気になる点はあった作品だったとは思いますが、読み終わってみると悪い作品じゃなかったなって印象でした。
ボクもバトル面じゃ設定が少し甘かったとは感じましたが、読んでいて分かりにくい事はなかったですし「少年漫画」って言うだけあって燃える事が出来ました。
そして最後の方の彼らのやりとりにはボクも感じる物がありました…。

締めは綺麗に終わっていましたが、個人的にはまだまだ続けてくれないかな?と思ってます。
色々と深みが出せそうな設定ですし、何よりあの二人がまた笑ってバカ騒ぎしている姿を見ていたいです。

長々と失礼しました。
by tokuP (2010-12-16 22:34) 

takao

tokuPさん,はじめまして。コメントありがとうございます。

私もそんな感じです。
気になるところはある。だけども,良いところもある。そんな感じの作品だと感じました。
仰るとおり,非常にわかりやすいストーリーだったと思いますし。
変にこねくり回したりしないで,「少年漫画」を追求したのが良かったのだろう,と感じました。

二人の関係。異なる生を持つものの,心の交流,という感じで,個人的にはかなり好みでしたが。
感じるものがあった,と仰られるのは,結構嬉しいですw

ラスト,応募作のまま,という感じで綺麗に終わっていましたが。
私も,この二人の最後に辿り着くところが見てみたいなぁ,と感じています。
気になる点は,まだ新人ですし,今後補っていけばいいですし,続けて欲しいなぁ,と感じています。
結構,良い作品に化ける可能性もあると思っています。
by takao (2010-12-16 23:21) 

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