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『空色パンデミック 3』/本田誠 [エンターブレイン]

教会物語を見せるために,あれこれと手を打ってくる作者の手腕が素晴らしかったです。

空色パンデミック3 (ファミ通文庫)

空色パンデミック3 (ファミ通文庫)

  • 作者: 本田 誠
  • イラスト:庭
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2010/08/30
  • メディア: 文庫

 

世間はクリスマス目前。結衣さんのクリスマスプレゼントを青井と一緒に購入しに行く約束をした景。その前に立ち寄った研究所で,10歳くらいの少女を激怒させる。実はその人が空想病の米国研究所長で。
そんな事を知るよしもない景は,クリスマスプレゼントを買い,着々と準備を進める。そんな景に,結衣が届けた一冊のライトノベル。タイトルは『空色パンデミック』。作者は「本田誠」。そこから始まる景の違和感。今まで,「仲西景」だと思っていた自分は,実は自己完結型空想病患者が,『空色パンデミック』という作品を読んだことで生み出した空想?

 

久しぶりに続きを読んでみました。今回は,自分の作品を,作品中に出す,と言う作戦に出ましたか。よく分かりませんが,メタを取り入れた,という感じで良いのかな?これがまた,うまいこと作用していて作者の力量にただただ脱帽するしかありませんでした。

新人の作品ながら,新人離れしたところを見せてくれるこの作品。ただ,一つだけ気になるところがあります。それは,結衣さんの空想がすべて,「教会物語(エレクシア・サーガ)に繋がっている」という点。毎回,同じ展開になってしまう恐れがあるこの設定をどうしていくか。いっそ,景と結衣の物語を完結させて,新しい空想病の物語を紡ぎ出した方が良いのではないか,と言う気がするのですが。ところが,私の素人考えを打ち砕くように,趣向を凝らして展開していく物語が素晴らしいです。

今回は,作中に『空色パンデミック』を持ち出すことで,さらに何が空想で何が現実か,と言う壁をさらに曖昧にしていたように感じます。読んでいた私としては,お恥ずかしながら,もう何が何だか,という感じでした(^^ゞ 結局,最後はいつものパターンで落ち着くのですが。それまでの展開。エピローグを読んでいて,「そんな物語だったとしても,不思議ではないな」という感じがしました。もう,「実はこの『空色パンデミック』という作品は,地球という空想病患者が見ている夢で,実は景も結衣も存在していません」と言われても驚かない気がします。

空想に巻き込まれて,何が現実で何が空想か,曖昧になっていく景。もしかして,結衣さんは空想の産物で,実際に存在しない存在なのかも知れない,と言う展開にまで至り。それでも結衣さんのために世界を敵に回そう,と言う景。これこそ,究極の純愛だなぁ,と感じさせてくれませんでした。そう考えるとこの作品,最高のラブストーリーなのかなぁ,と言う感じがしました。とはいえ,結衣さんは存在し,景は毎回結衣さんの空想に巻き込まれているだけなのですが。毎回痛い思いをしながら,それでも近くに居続ける二人がステキだと感じました。

240ページの二人の言葉。そして,241ページの挿絵。この二つが最高に幸せで,やさしくて。心がじわっと温かくなるようでした。もう,最高ににやにやできる,と言うか。

さて,気になるところはこの後の展開。最後に「空色パンデミック セカイ系編 了」となっていましたが。次は一体どんな展開を見せてくれるのか。新しいキャラによる新しい物語が紡がれるのか,それとも既存のキャラクターの新しい物語になるのか,非常に楽しみです。


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コメント 2

ask

先日のコメントでやっとブログの所在が分かりましたよw

私はこの作品を推しに推しているので、コメントせずにはいられませんでした。
空パンは記事書きにくいです。3巻の記事を書き始めてから2回ほど再読してます。
ところが、takaoさんの記事に書きたいことが大方纏まっていたので唖然としておりますw
簡潔で、その時何を感じたのかが非常に読み取り易いです。つい空パンを読んでいる最中を思いだしてニヤけていました。笑わないで下さい。

これからは私からもお邪魔しますねw
by ask (2010-12-16 00:03) 

takao

askさん,コメントありがとうございます。
いつも,あちらのブログと読書メーターでお世話になっております<(_ _)>

私,無駄に年だけは取っていますからね。その差ではないでしょうか。
あと,askさんの感想なんかも結構影響を受けているような気がします。

>つい空パンを読んでいる最中を思いだしてニヤけていました。笑わないで下さい。

いえいえ,笑いなんてしませんよ。
私の感想を読んで,そう思っていただけで大感謝です。
元々ブログを始めたのが,誰かと感想を言い合いたい,と言う事だったので。

askさんのブログと違って,ラノベの感想ばかりではありませんが(^^ゞ
よろしくお願いします。
by takao (2010-12-16 18:04) 

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