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テルミー2 きみをおもうきもち/滝川廉治 [集英社]

前作よりだいぶん間が空きましたが。その分完成度も高く、非常に満足できるないようだったと思います。


事故で亡くなった二十四人のクラスメイトの最期の想いを背負う少女・テルミー。
事故を免れた少年・清隆と共に、テルミーはクラスメイトたちの願いを叶えるため、その身に宿った彼らの能力を支えに、走り出す。
薔薇を育てていた少年が伝えられなかった想いを届けるために。
主演女優と脚本家の2人を失った映研部にもう一度映画を作る喜びを思いだしてもらうために。
悲しみとやさしさが奏でる物語、第二章をあなたに贈ります。(裏表紙より)


帯でベニー松山氏が「こいつら、『成長』しているっ!」とコメントを寄せていますが。作品としてもかなりの素晴らしいものとなっているように感じます。名作として、成長しているのかな?とは言い過ぎでしょうか?

2巻では、三人の想いを届けるため、二つのエピソードが描かれます。あらすじにもあるように、一つが薔薇を育てた少年の想い。もう一つが映研部に少年少女の想いです。薔薇を育てた少年の思いもよかったのですが、今回特によかったのは、映研部の話だな、と思いました。

誰かの心残りになった想いを届ける、ということになると、一番最初に思い浮かべてしまうのが、伝えられなかった好きだという気持ち。あるいは、この世に残してしまう愛する人への想いだと思います。これが、薔薇を育てた少年のパターン。ところが、この物語のいいところは、それだけで終わらず、大切だった仲間を思う気持ち、というのもあることです。これが、映研部のパターンです。

大切な仲間を失ってしまったために、全てに対して無気力になってしまった少年。それが、テルミーが伝える想いによって自分の本当の気持ちに気づいて、立ち直る、というのは読んでいて心が震える感じがしました。胸に静かにしみ入るような、それでいて心が温かくなるような。そんな感じで。そして、この立ち直りというのが、作品のもう一人の主人公である灰吹清隆の立ち直りの過程をなぞっていた、という事実が、物語をよりいっそう感動的にしていたように思います。

1巻の感想でも書きましたが、この物語は、死者の思いを届けることで、生者が立ち直るキッカケを得る、そんな前向きなものだと今回も感じました。そして、だからこそ優しい物語であり、感動できる物語であると思います。文章も、若干「臭さ」を感じる部分もありますが、それすらも優しい世界を演出する一部である、と感じさせてくれました。

サブタイトルが「きみをおもうきもち」です。そのサブタイトルどおり、大切な人を強く「おもう」気持ちが伝わって来ました。愛おしい、素敵な作品です。

ラノベの中ではひと味違った作品ではありますが、ラノベだからこそ、といえる作品でもあると思います。こんな作品が出る限り、まだまだラノベの可能性は広がるのではないか。そう感じさせてくれる作品でした。続きは未定のようですが、是非とも期待したいと思います。


テルミー 2 きみをおもうきもち (集英社スーパーダッシュ文庫 た 10-3)

テルミー 2 きみをおもうきもち (集英社スーパーダッシュ文庫 た 10-3)

  • 作者: 滝川 廉治
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2011/07/22
  • メディア: 文庫



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